2016年6月18日土曜日

「炉心溶融」、「富士山噴火」、「火砕流」


東北地方太平洋沖地震にともなう福島第一原子力発電所の事故で、「炉心溶融」あるいは「メルトダウン」という言葉を使うなとの指示が出ていた問題。パニックを恐れてのことでしょうが、いったい誰が東京電力社長に指示したのでしょうか:

東北地方太平洋沖地震から4日後に発生した「静岡県東部地震」でも、専門家は「富士山噴火」によるパニックを恐れたようです。〈三月十五日深夜、富士山の直下で震度6強の地震があった。発表は「静岡県東部地震」で富士山噴火には触れていない。科学部の記者が取材したが、関連を認める火山学者はいなかった。噴火を心配したと語り始めたのは、随分、後のことだった〉:

上の記事には「エリートパニック」(一般大衆にパニックが起きることを恐れて、災害情報を伝える側の人が陥る恐慌のこと)という言葉が使われています。そして次のような文言を引用しています ――
『普通の人々』がパニックになるなんて、とんでもない…。エリートパニックがユニークなのは、それが一般の人々がパニックになると思って引き起こされている点です

1991年の雲仙普賢岳の噴火に際しても、専門家はパニックを恐れて「火砕流」という言葉を使うことをためらったようです。結局、発表文には「小規模な火砕流」という表現が末尾に添えられたのですが、気象庁は記者への説明で深刻な事態ではないと伝えたとのことです。その後、大火砕流が発生し、43名の死者・行方不明者が出る惨事となりました:

上の記事には次のように書かれています ――
パニックが起きるのではないかと恐れて情報を出さないことを、心理学では「パニック神話」という。だが、情報を出すことによってパニックが生じた例は、実際にはほとんどないのである。

余談になりますが、先日の熊本地震では報道関係者のモラルの低さが色々指摘されました。上の記事には、報道関係者の不適切な行為によって、火砕流の犠牲者が増えてしまったことも書かれています ――
避難して無人になった人家に侵入して電気や電話を使った数社のテレビ局クルーがいて住民に不安が高まっていた。このため消防団員や警察官が現地に入っていて巻き添えになった。