2016年3月25日金曜日

井戸水の濁りと味で安政江戸地震を予知した侍


安政江戸地震は旧暦・安政2年10月2日(西暦1855年11月11日)午後10時ごろに江戸を襲った直下型の大地震で、マグニチュードは6.9~7.4、震央は荒川河口付近(おおよそ現在の葛西臨海公園や東京ディズニーランドのあたり、他説あり)で、死者1万人、負傷者は数千人と推定されています。

以下は、『安政見聞誌』(著者は仮名垣魯文ほか)に載っている逸話です。概略を現代語に直してみました:
某大名家家臣の侍が本所(地図)あたりの屋敷に住んでいた。10月2日の朝、気づいたことがあって藩の重役に会い、「今朝、井戸水が濁り、塩気がありました。これはきっと大地震の前兆です。地震があれば土蔵は崩れる心配がありますので、お預けしている荷物をお返しください。どうかご用心ください」と申し出た。重役は腹の中ではおかしなことを言う奴だとあざ笑いながらも、荷物を侍に渡した。荷物を受け取って帰った侍は、同僚やその他の者にも大地震が起こることを告げた。しかし、皆、そんな事はあるわけがないと誰も取り合わなかった。その夜、大地震があり重役の土蔵は崩れ落ちた。侍の言葉が適中した。侍を笑った者たちは恥じ入った。幸いにも火災にみまわれることはなかったが、もし火災にも襲われていたら一物も残らなかったであろう。

侍の住んでいた本所は震央から約6kmです。

『安政見聞誌』の原文は、『地震前兆現象 予知のためのデータ・ベース』(力武常次、東京大学出版会、1986)を参照しました。

古代ギリシャのピタゴラスも井戸水の味で地震を予言しています:


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