2014年10月25日土曜日

えびの高原硫黄山に噴火警報、冷泉や足湯の温度上昇 ― 宮崎県


10月9日付「えびの高原で火山性地震と火山性微動」の続報です。

すでに報道でご存じと思いますが、10月24日、えびの高原の硫黄山(地図)周辺に噴火警報が出されました。以下は「火山名  霧島山  噴火警報(火口周辺)平成26年10月24日10時00分」からの引用です:
<霧島山に火口周辺警報(火口周辺危険)を発表>
えびの高原の硫黄山から概ね1kmの範囲では小規模な噴火の可能性がありますので、警戒してください。
<噴火予報(平常)から火口周辺警報(火口周辺危険)に引上げ>

「噴火警報(火口周辺)」、「火口周辺警報(火口周辺危険)」、「噴火予報(平常)」など分かりにくい言葉は出てきますが、噴火警戒レベルの数字が出てきません。これは、霧島連山(霧島火山群)の中で、新燃岳や御鉢では噴火警戒レベルが運用されているのに対して、硫黄山では噴火警戒レベルが導入されていないからです。気象庁の「噴火警戒レベルの説明」には、次のように書かれています:
各火山の地元の都道府県等は、火山防災協議会(都道府県、市町村、気象台、砂防部局、火山専門家等で構成)を設置し、平常時から噴火時の避難について共同で検討を行っています。 火山防災協議会での共同検討の結果、火山活動の状況に応じた避難開始時期・避難対象地域が設定され、噴火警戒レベルに応じた「警戒が必要な範囲」と「とるべき防災対応」が市町村・都道府県の「地域防災計画」に定められた火山で、噴火警戒レベルは運用が開始(導入)されます。

つまり、地元の協力がないと噴火警戒レベルは設定できないということです。

硫黄山周辺の現状について詳しくは以下を参照してください。地震回数や地盤の伸びを示すグラフなどがあります:

以下は、10月23日に開かれた第130回火山噴火予知連絡会定例会で使用された霧島山に関する資料です。上の火山活動解説資料に盛り込まれていない情報がたくさん載っています:

上の資料には、地元から「七折れの滝(石氷川)の沢登りをしたところ、登り口から中間点にある冷泉が、昨年(2013 年)より温かかくなっている」、「えびの高原足湯の駅で、これまで 36~37℃だった足湯の温度が、9月11日は39℃だった」という通報があったことが記載されています。これに対して、気象台が実地調査した結果は、前者に対して「湧出口付近に白い付着物があり、水温は約23度で、弱い硫黄臭を確認した(沢の本流は17度)」、後者に対して「現地調査による測定では、38.6℃(水銀温度計による)であった」と記されています。

2011年7月からえびの高原足湯の温度測定をしている九州大学は、「2013年末から若干の温度上昇が見られる」と報告しています。一方、えびの高原周辺の地中温度(約1m)や温泉水の電気伝導度・化学分析をおこなっている京都大学は、「地中温度、温泉水ともに異常な変化は見られない」と報告しています。

霧島山で全磁力観測をおこなっている東京大学と京都大学は、硫黄山北観測点について「特段の変動は認められていない」と報告しています。マグマの上昇による熱消磁の傾向は現れていないようです。全磁力観測については以下を参照してください:

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