2014年9月28日日曜日

神は存在せず


キリスト教が蔓延する西欧社会で「自分は無神論者である」と表明することはかなり勇気のいることのようですが、『ホーキング、宇宙を語る』などの著書で有名な英国の理論物理学者スティーヴン・ホーキング博士がスペインの大手新聞『El Mundo』のインタビューに答えて、自分は無神論者であると表明したことが話題になっています。

「この世界は超越的な存在によってではなく、科学的に説明可能な現象によって作られた」、「われわれが科学を理解する前は、神が世界を作ったと信じるのは自然なことであった。しかし、今や科学はもっと説得力のある説明を提示している」、「宗教は奇跡の存在を信じるが、それらは科学とは両立し得ない」、「私は無神論者である」:

少し気になるのは、名のある報道機関、たとえばアメリカの『Wasington Post』、『CNN』、イギリスの『The Daily Telegraph』、『BBC』などのサイトにはこの件に関する記事が見当たらないことです(私の見落としかも知れませんが)。世界最高の英知とも評される人物が無神論者であっては都合が悪いからでしょうか。無神論についての報道には読者の強い反発が予想されるため、自主規制のようなものがあるのかも知れません。

ホーキング博士は、2010年の『ABC News』のインタビューでは次のように答えています ―― 「この世界で起こる現象の背後にある科学を知る以前、人間は世界を理解するために神を作り出した」。

科学の立場から宗教を批判した書籍に、リチャード・ドーキンス博士の『神は妄想である 宗教との決別』(早川書房)があります。分厚い本ですが一読をお勧めします。以下は、同書カバーの折り返しに書かれた概要からの引用です:
人はなぜ神という、ありそうもないものを信じるのか? 物事は、宗教が絡むとフリーパスになることがままあるが、なぜ宗教だけが特別扱いをされるのか? (中略) ドーキンスは科学者の立場から、あくまで論理的に考察を重ねながら、神を信仰することについてあらゆる方向から鋭い批判を加えていく。宗教が社会へ及ぼす実害のあることを訴えるために。神の存在という「仮説」を粉砕するために。

神の存在ということで思い出すのは、ずいぶん昔に読んだフレドリック・ブラウンの短編小説です。うろ覚えですがこんな内容でした ―― 人類が銀河系の数百億の惑星に植民した遠い未来。全ての惑星のコンピューターを超光速通信で結んだネットワークが完成します。人類が蓄えてきた全ての知識にアクセスできる巨大人工頭脳の誕生です。完成を祝う式典で、人類の代表者が人工頭脳に対して最初の質問をします。それは人類誕生以来答えの得られていない問いでした。「神は存在しますか?」 それに対する人工頭脳の予想外の答えは、これからこの短編を読まれる方もおられると思いますので、ここには書かないでおきます。


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