2013年4月16日火曜日

2014年末までに南海トラフで巨大地震発生 ― ロシアの科学者が予測 (補足)


4月14日付「2014年末までに南海トラフで巨大地震発生 ― ロシアの科学者が予測」の補足です。

紹介した2つの記事では、ロシア人科学者 “Alexei Ryubushin” 氏が、日本の F-net(広帯域地震観測網)のデータを使って低い周波数の地震ノイズ( low frequency seismic noise)を分析し、その結果にもとづいて発表をおこなった、と伝えています。

ところが、 “Alexei Ryubushin” という名前で学術検索をしても、一片の論文もヒットしません。“Ryubushin” ではなく “Lyubushin” と綴るのが正しいようです。そうすると、本人が著者になっている論文や、それを引用している他の研究者の論文がたくさん見つかります。

Lyubushin氏は東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)の予知に成功していました。

以下は、Lyubushin氏が2011年の秋に米国地球物理学連合(AGU: American Geophysical Union)の大会で発表した論文の要旨です:

以下もLyubushin氏の論文です:

今回、ヨーロッパ地球科学連合(EGU: European Geosciences Union)の大会で同氏が発表した南海地震の予知も、同様の手法に基づいていると思われます。

以下は、A. Ya. Sidorin氏の論文です。Lyubushin氏を含む複数のロシアの科学者が、東北地方太平洋沖地震のかなり前からその発生を予知しており、その中でも最も信頼度の高い予知に成功していたのがLyubushin氏である、と述べています:


Alexey Lyubushin “Synchronization of multi-fractal parameters of regional and global low-frequency microseisms” より引用 (クリックで拡大)

以下は、上記論文の本文の抜粋テキトー訳です:
Lyubushinは現代数学にもとづいて、地殻内の微小地震動の多次元時系列解析のオリジナルな手法を開発した。
(中略)
Lyubushinが開発した予知手法は、物理学的には、微小地震動の統計的特質の変動は、リソスフェアの性質の変動を反映するという仮定にもとづいている。
(中略)
(解析結果のグラフには)2つの顕著な異常があった ―― 2002年と2009年の急激な落ち込み (中略) 。最初の2002年の異常の後には、2003年9月25日に(北海道でMw=8.3)の大地震が発生したので、2つ目の急激な落ち込みも2010年後半におこるさらに激しい地震の前兆であると考えるのは論理的であった。このグラフや他のデータから、Lyubushinは、2010年中頃以降に日本でマグニチュード 8.5~9.0 の巨大地震がおこるという結論を得た。 
2008年11月下旬、この予測はアジア地震学委員会(Asian Seismological Commission)の第7回総会と日本地震学会秋期大会で発表された。Lyubushinは、関連する震動系の振る舞いとの類似性から、2003年9月25日の地震(北海道でMw=8.3)は、より深刻な地震の前震であると解釈した。2010年4月26日、Lyubushinは、早ければ2010年7月に日本で深刻な地震が発生する可能性があるとの警告をロシアの地震予知および地震危険度評価諮問委員会に送った。2010年9月初め、ヨーロッパ地震学委員会(European Seismological Commission)の第32回総会において、彼の報告書の要約では「2010年7月、日本列島は深刻な地震の待機状態に入った」との指摘がなされた。 
ロシアの科学者であり、シュミット地球物理学研究所の主導的研究者であるLyubushinの業績は、世界的なだけでなく歴史的な重要性を持っている。重大な地震を、厳密に科学的な手法で予知した世界で最初の事例として扱われるべきである。地震を予知することは可能か否かという疑問は解消されうる。しかし残念なことに、だれもLyubushinの警告に注意を払わなかった。(もし警告に耳を貸していたならば)たとえば、2011年3月11日の地震に先立つ期間に原子力発電所に防護措置を講じるなどの効果的な地震対策を取ることができたはずである

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