2012年1月26日木曜日

大陸移動説発表から100年


1912年1月6日にドイツの気象学者アルフレート・ヴェーゲナー(アルフレッド・ウェゲナー)が大陸移動説を学会で発表してから、今年で100年になります:

大陸移動説の詳細についてはウィキペディアの解説を参照していただくとして、ここでは大陸移動説についてよく見受けられる誤解について、『疑似科学と科学の哲学』(伊勢田哲治、名古屋大学出版会、2003)から引用したいと思います:
ウェゲナーの説は同時代の地質学者たちに嘲笑されただけだったという誤解をよく見かけるが、これは歴史的には不正確である。ウェゲナーの説は無視されたわけではなく、地質学者の中にも支持者を持った。特に、インドネシア群島のまっただ中でウォレス線をはさんで突然生物相がかわっているという「アノマリ」ととりくんでいたオランダの地質学者たちはウェゲナーの仮説を歓迎した。半信半疑の地質学者たちの間でも盛んに議論が行われ、何度かこれをテーマとした学術会議が行われた。

ウェゲナーは大陸移動の原動力として地球の自転や潮汐力を考えていました。しかし、イギリスの数学者・地球物理学者・天文学者のハロルド・ジェフリースの計算によって「自転やその他の既知の力では大陸の移動は説明できない」とされたため、それ以降は一部の支持者を除いて大陸移動説は無視されることになりました。その後、ウェゲナーは大陸移動説の証拠を探すために訪れていたグリーンランドで、50歳の若さで不慮の死を遂げることになります。墓碑には大陸移動説についての言及はなく、「偉大な気象学者であった」とだけ記されているとのことです。

カール・セーガン博士は、疑似科学や似非科学を批判する著作をいくつも残していますが、『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』(カール・セーガン著、青木薫訳、新潮社、1997)には次のような批判に際しての戒めが記されています:
地球物理学の大御所たちはウェゲナーの説に取り合わなかった。彼らは、大陸は固定されたものであり、「漂う」ことなどありえないと決めつけたのだ。ところが今では、プレートテクトニクスは20世紀の地球物理学の重要概念になっている。 (中略) 地球物理学の大御所たちは、全員まちがっていたわけだ。この例からもわかるように、メカニズムが存在しないという似非科学への反論は当てにならないのである。(ただし問題の主張が、確立された物理法則を破っているようなら、反論には大いに重みがある。)

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