2011年10月2日日曜日

深さ 10km ちょうどの地震 (その5)


別のQ&A〝Q: What is the significance of the depth of an earthquake?〟には、次のような記述があります:
Accurately determining the depth of an earthquake is typically more challenging than determining its location, unless there happens to be a seismic station close and above the epicenter. So generally, errors on depth determinations are somewhat greater than on location determinations.

震源の深さを精確に決めることは、たまたま地震観測ステーションが震源の上や近くにでもない限り、震源の場所を決めることよりも通常は困難です。そのためほとんどの場合、震源の深さの決定にともなう誤差は、震源の場所を決定する際の誤差よりも多少大きくなります。

以上 2つの Q&A をまとめると以下のようになります:
  1. 震源の深さを求めることは、震源の場所(=震央、つまり震源の真上の地点)を求めることよりも困難である。

  2. 震源の深さを精度良く決めるためには、震央から観測ステーションまでの距離(水平距離)が、震央から震源までの距離(深さ、垂直距離)より短い必要がある。

  3. 言い換えると、浅い地震ほど、震央の近くに地震計が設置されている必要がある。深さ 100km の地震であれば、震央から半径 100km 以内に地震計があればよいが、深さ 10km の地震では 半径 10km 以内となり、震央の近くに地震計が存在する可能性が低くなる。つまり、浅いところで発生した地震ほど、震源の深さを精度よく決定することが困難になりやすい。

  4. 深さを精度よく決定できた地震のデータを使って震源の深さの分布をグラフ化すると、10km前後にピークができる。

  5. ある地震について震源の深さが浅いことはわかるが、最寄りの観測ステーションが遠すぎて深さを精確に決定できないような場合には、上の「4」にもとづいて震源の深さを〝10km〟と見なしている。これを固定震度という。

つまり、震源の深さが厳密に「10.0km」と表示されるのは、実際に震源の深さが 10.0km ちょうどであった場合と、震源の深さが正確には決定できなかったため 10.0km と見なされた場合があるということです。

事例1から事例4までは、アデン湾や小笠原諸島など、地震観測ネットワークの密度が希薄な場所でおきた地震について述べているものです。このような地域では、震源に近い場所の観測データが少ないか、まったく得られなかったために、深さが「10.0km」と見なされた地震が多かったと考えられます。

アデン湾を取り囲んでいる国々はというと、ソマリア、ジブチ、イエメンです。これらの国々では、政情の不安定さや経済面の困難もあって、地震観測拠点がほとんどないと言ってよい状態です。ソマリアで地震がおきたという海外の報道を時たま見かけますが、わかるのはおおよその発生時刻だけで、震央やマグニチュードなどはまったく記載されておらず、記事の大半は揺れを感じた人たちの感想などで占められていることがしばしばです。

このような国々に囲まれたアデン湾で地震が発生しても、頼れるのはアデン湾から遠く離れた国々が設置している観測機器ということになり、震源の深さを精度良く決定することは望み薄です。そのために、10km ちょうどの「固定震度」が頻出する結果になったことは想像に難くありません。

では、日本のように地震観測ネットワークが充実している地域で、深さ 10km ちょうどの地震が多いと思う人がいるのはなぜでしょうか。それにもちゃんと理由があるのですが、それは「続き」で。


続く


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