2011年9月12日月曜日

エレーニン彗星が近日点通過


9月11日、エレーニン彗星(エレニン彗星)が近日点を通過しました。近日点とは、軌道上で太陽にいちばん近づくところで、そこを通過する際には、太陽の重力、光、熱、太陽風などの影響を最も強く受けることになります。すでに核が分解してばらばらになっているエレーニン彗星が、この近日点通過という試練を生き抜くことができるか、注目が集まっています。

もうしばらくすると、NASAのSOHO探査機(Solar and Heliospheric Observatory、太陽・太陽圏観測衛星)のカメラの視野にエレーニン彗星が入ってくるので、結果が明らかになることでしょう。SOHOのカメラにも捉えられないほど、崩壊が進んでいることも十分に考えられます。

一部のブログには、エレーニン彗星が「消滅」したとか「消失」したとの記述が見られますが、適切ではありません。核が「分解」したことは確かですが、その時点で彗星全体が消えてなくなったわけではないのですから。英語圏のニュース記事では〝disintegrate〟(分解する、崩壊する)とか〝diffuse〟(拡散する)という言葉を使っています。

9月7日、アメリカ国立電波天文台(National Radio Astronomy Observatory)は、ウェストバージニア州にある世界最大の可動式電波望遠鏡(グリーンバンク望遠鏡)を使ってエレーニン彗星の観測をおこないました。その結果、水酸化物イオンの存在を示す信号がノイズレベル以下であることが判明しました。これはエレーニン彗星に水(あるいは氷)がわずかしか残っていないことを意味しており、彗星の核の崩壊が裏付けられたとのことです:

オーストラリアの天体写真家 Michael Mattiazzo氏の〝Southern Comets Homepage〟から、エレーニン彗星の変化を示す写真をいくつか紹介します:

エレーニン彗星の核が分解し始めたのは8月20日ごろです。8月19日の写真では核がはっきりと明るく輝いてたのに、22日の写真ではぼんやりとしています。27日の写真では核が明瞭ではなくなり、最新の9月11日の写真では彗星全体が暗く見えづらくなっています。

以前の記事にも書きましたが、デマや疑似科学的主張を撒き散らして不安をあおる Doomsayer とか Fearmonger と呼ばれる類いの人たちは、エレーニン彗星の予想外の「ふがいなさ」にほとほと困り果てているようです。画像加工ソフトを使って彗星の写真に極端なソラリゼーションを施したり、コントラストや色調を操作したりして、「エレーニン彗星の核は普通の彗星とは違う形をしている(だからエーリアンの宇宙船団だ)」とか、「エレーニン彗星は正四面体のシールドに守られている」などと言い出しています。エレーニン彗星をダシにした〝ビジネス・チャンス〟を何とか延命させようと必死になっているようです(笑)。

蛇足ですが …… 『エレーニン彗星のバラード』。このメロディ、人工甘味料の甘みがいつまでも口の中に残るように、耳の中に残ります(笑):

() Elenin彗星について最初の記事を書くときに、「エレーニン」と「エレニン」のどちらを使うべきか迷いました。ネット上の大勢に従って「エレーニン」としましたが、欧米人の発音を聞いていると第1音節、つまり語頭の〝E〟にアクセントがあるようです。したがって、原音に近い表記を選ぶとすれば「エレニン」あるいは「エーレニン」の方がふさわしかったと思っています。


関連記事