2011年9月30日金曜日

カナリア諸島で地震続発(続報-3)


カナリア諸島(カナリー諸島)西端のエル・イエロ島(地図)で7月中旬から始まった群発地震は、これまでに8500回を超えています。ほとんどが無感地震でしたが、9月最後の週あたりから規模の大きな地震が増え、それにともなって有感地震も増えてきたため、住民の中には親戚・知人を頼って避難する人たちがでています。同島の火山噴火警戒レベルは、「続報-2」で書いたように9月23日から〝イエロー〟(下から2番目)に上がっています:

以下は、地震回数の推移を示すグラフです。規模の大きな地震(といってもM2以上)を示す赤い棒が9月末になって急に増えていることがわかります:

注目すべきは、震源の分布が明らかに変化していることです。以下の図は、9月28日までのデータにもとづいて作成された震源の分布図です。上が震源の平面分布(震央の分布)、下が垂直分布(断面図)です:

赤い丸が最新2日間の震源で、他はそれ以前の震源です。これまでは、エル・イエロ島の北側で、過去の大地滑りの痕跡であるU字型の湾を中心として発生していた地震が、島の南側に移り、震源の深さが増していることがわかります。

この変化が何を意味しているのかは、わかりません。新しい震源が深さ14kmから18kmのあたりの上部マントルに集中していることから、カナリー(カナリア)・ホットスポットのマグマ供給源であるマントル・プリュームの動きと関連があるのかも知れません(カナリア諸島周辺の地殻とマントルの境界がどのくらいの深さにあるのかにもよります)。

例によって、フィアモンガー(fear-monger)とかドゥームセイヤー(doomsayer)と呼ばれるトンデモ屋さんたちが、エル・イエロ島で今にも巨大噴火が起きそうだと騒ぎ始めていますが、どうでしょうか。エレーニン彗星(エレニン彗星)でやらかした大失敗の失地回復はなるでしょうか(笑)。

上記の断面図でもわかるように、地震のほとんどは地下十数キロメートルの深さでおきています。震源が上昇して地下数キロメートルの浅いところで地震が多発するようになれば、噴火が切迫していると言えるのでしょうが、いまのところ、そのような状況ではないようです。以下の記事では、エル・イエロ島の地震活動を監視している National Geographic Institute の責任者が、噴火の可能性について〝slim chance〟(ほんのわずかな可能性)と語っています。また、別の記事では、近い将来に噴火が起きる可能性は「10%以下」とも述べています。ただし、二酸化炭素ガスの放出量は継続して増加傾向にあり、新しいマグマの補給は続いているようです:

報道では、観光客や地元住民が避難し始めたと伝えられています。これまでに伝えられたところでは、全島民約1000人のうち、避難したのは数十人とのことです(記事によって数字が大きく異なっています)。避難した住民をインタビューした動画などを見ていると、避難した理由は火山噴火を恐れてというよりも、地震によって誘発される大規模地滑りを恐れてのことであることがわかります。

以下は、ドイツのシュピーゲル紙のサイト(Spiegel Online)に掲載された写真ですが、島の北側にある過去の大規模地滑りの跡地の様子がわかります。この地域を中心に今回の群発地震はおきているのですが、急峻な崖の麓に集落があり、住民が地滑りを警戒するのもうなずけます。過去にはここで、地震をきっかけとした大規模な地滑りが発生し、300km³におよぶ大地が海中に滑り落ちて高さ100mを超えるメガ津波が発生、アメリカ大陸の沿岸部を襲ったと考えられています:

カナリア諸島の島々は、大西洋中央海嶺から広がる海洋底が東に向かって移動していく際に、ホットスポットの上を通過して次々に生まれたと考えられています。カナリア諸島よりも南にあるヴェルデ岬諸島も同じようにして形成されたとのことです(大西洋の海底図)。

以下はシュピーゲル紙のサイトに掲載されたエル・イエロ島の溶岩の写真です。同じようにホットスポット上に形成されたハワイ諸島で見られるような、パホエホエ(パホイホイ)溶岩です:

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