2011年8月3日水曜日

放射能汚染の広がりと人材の海外流出


放射能汚染に関連したニュースを2つ紹介します。

ひとつ目は中国の国家海洋局が7月31日に発表した調査結果です。中国の海洋調査船が東北地方の排他的経済水域すれすれのところに出没していることは伝えられていましたので、おそらくその調査船による調査結果と思われます:

以下に記事を抄訳します:
日本の福島県の東および南東の西太平洋海域の海水は、稼働不能に陥っている福島の原子力発電所から漏れ出た放射性物質によって明らかに汚染されている。

それらの海域から採取された海水サンプルの初期テストでは、すべてのサンプルから放射性のセシウム-137とセシウム-134がストロンチウム-90とともに見つかった。

通常、セシウム-134が海水から検出されることはない。サンプルから見つかったセシウム-137とストロンチウム-90の最大量は、中国領海の海水の 300倍と 10倍である。

一方、大気中の放射性物質の量は正常であった。

7月4日に完了した18日間の航海で、25.2平方キロメートルの海域を調査し、空気、海水、生物のサンプルを採集した。

国家海洋局は、採集したサンプルのテストや評価の結果について、今後も公表していく。

上記の発表を信じるならば、沿岸から200海里(約370km)までの排他的経済水域の外側でも、確実に汚染が広がっているということになります。

ふたつ目はエジプトからのニュースです:

7月31日、エジプトの紅海沿岸の港湾を管轄する港湾局が、輸入業者(複数)のライセンスを取り消したという内容です。取り消しの理由は、日本から到着した4つのコンテナーが、エジプト政府の認める限界を超えて放射性物質に汚染されていたためです。日本からの貨物に放射能汚染が見つかったのは、過去1ヶ月間で2度目のことで、先月には 3件の積み荷で基準以上の放射能が検出されたとのことです。

この件で思い出すのは、原発事故発生の数日後、中国・上海(記憶が不確か)の空港で、2人の日本人旅行者が足止めされたという報道です。2人は、中国の国内基準で除染が必要とされるレベルまで放射能に汚染されていたため、除染の処置を受けたとのこと。2人は長野県と埼玉県の居住者で、居住地から関西空港経由で中国に向かい、原発に近づくような移動はまったくしていなかったと伝えられています。

上の報道が事実ならば、埼玉県や長野県で普通に生活していた人が除染が必要なほど放射性物質に汚染されていたことになります。私たちの身のまわりも私たちの予想以上に高いレベルで放射性物質に汚染されているのかも知れません。

先日、知人の送別会に短時間ですが出席しました。小中学生の子供を含む家族と一緒にマレーシアに移住するのだそうです。奥様のご両親もあとから合流されるとのこと。優秀な研究者で、数年前から移住の誘いを受けていたらしいのですが、奥様が反対されていたのだそうです。しかし、今回の原発事故による汚染の広がりで奥様も気持ちが変化。日本はもはや子供を安心して育てられるところではなくなった、子供が育ったとしても、将来の彼らは重税を支払いながら展望のない沈滞した社会で暮らさなければならない、そのような環境や未来を子供に与えることは親として無責任の極みと思う、というのが知人の考えです。

ここ数年、知人や間接的に知っている方々の海外移住の話が年に2~3件は耳に入ってきます。移住されるのは優秀な方々で、先方から誘いを受けたり、自ら日本に見切りをつけて移住先を探したりしているようです。移住先は米国、カナダ、シンガポール、マレーシアなどです。これまでは、予算が乏しく研究環境もあまり良くない日本の大学や企業に希望が持てなくなったというのが、移住を決断する大きな要因だったようですが、今後は上記の知人のように、放射能に汚染され将来に希望を持てない日本では安心して子供を育てていけないという理由が加わって、有能な人材の海外流出がさらに加速するかもしれません。