2011年2月28日月曜日

次は阿蘇山? (その 1)


友人と食事をしながら話していたとき、霧島山・新燃岳や桜島の噴火が話題になりました。友人曰く 「南から北に噴火が移動しているから、新燃岳の次は阿蘇山あたりが噴火するんじゃない?」 本当でしょうか。

たしかに、伊豆諸島ではベヨネーズ列岩(地図地図)付近で始まった噴火が島づたいに徐々に北上して伊豆大島・三原山の噴火につながる傾向があるという話は本で読んだことがあります。ベヨネーズ列岩から伊豆大島までの一連の噴火が一つのサイクルをなしているのだそうです。このサイクルが繰り返されているうちに、噴火の北上が伊豆大島では止まらずに伊東沖の海底火山、さらに本土に上陸して箱根山や富士山の噴火に至るということです。

九州南部の火山でも噴火の北上傾向があるのでしょうか。それを調べるために、気象庁の 「九州の活火山」 に掲載されている明治以降の噴火の記録をグラフにプロットしてみました:

(クリックすると拡大します)

グラフの縦軸は、明治以降に何らかの火山活動の記録がある以下の火山を南(1)から北(7)に並べたものです。各火山の実際の位置については、気象庁のサイトにある「九州の活火山」所載の地図を参照してください:
  1. 諏訪之瀬島
  2. 中之島
  3. 口之永良部島
  4. 薩摩硫黄島
  5. 開聞岳
  6. 桜島
  7. 霧島山

横軸は西暦です。赤丸は 「噴火」。青丸は「噴火以外」で、噴気・鳴動・地震・火口湖の変色・山体の膨張などです。

(2)の中之島から(5)の開聞岳については、時間の経過とともに火山活動を示すプロットが右上方に遷っており、火山活動が北上しているように見えます。先月から始まった霧島山・新燃岳の噴火も、グラフを見る人の受け止め方次第ですが、北上傾向の一環に見えなくもありません。しかし、頻繁に噴火を繰り返している諏訪之瀬島や桜島を加えると何とも言えなくなります。

開聞岳は完全に静まっている火山だと思っていたので、2000年に噴気が上がった記録があるのを知って少し驚きました。

阿蘇山は地図を見ると桜島や霧島山とは別のグループに属しているように見えます。次回以降で別途検討したいと思います。


(続く)


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2011年2月26日土曜日

サケガシラ漂着 ― 兵庫県香美町


2月 23日、兵庫県香美町(地図)の今子浦海岸の岩場で体長 1.5m のサケガシラが泳いでいるのが見つかりました:

香美町では、今月中旬にシャチブリも網にかかっています:

「最近、山陰海岸ではリュウグウノツカイなど珍しい魚介類が見つかることも多く、『海の中で異変が起きているのでは』と話す漁業者もいる」 とのことです。

もう一つ、書き漏らしていた深海魚系の話題。2月 13日には、静岡県沼津市の海岸でチョウチンアンコウが見つかっています:

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2011年2月25日金曜日

阿蘇中岳の湯だまり減少 ― 熊本県


阿蘇山・中岳第一火口の湯だまりの量が 2割に減少しています:

ここまで少なくなったのは 6年ぶりで、原因は記録的な雨不足。噴火につながるような兆候はまったくないとのことです。


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大地震の前兆が地震計に記録されていた


1999年にトルコで発生したイズミット地震(M7.6)の地震計記録を詳細に調べた結果、地震の 44分前から前兆が現れていたことが判明しました:
  1. Earthquake Prediction A Quake May Have Hinted That It Was on the Way
  2. Tiny energy bursts may foretell massive earthquakes
  3. Izmit earthquake (Turkey) : early warning signals detected for the first time

イズミット地震は、震源断層の直近に地震計が設置されていたため、“best-recorded large earthquakes”(もっとも良く記録された大地震)とされています。この記録をフランスとトルコの研究者が詳細に分析した結果、これまで実験や理論によって予測されていた「前兆」が記録されていたことがわかったとのことです。上記 3 の記事から主要部分を意訳します:

科学者たちはイズミット地震の震央近くで得られた地震記録を分析し、これまでに観測されたことのない非常に特徴的な地震シグナルが、断層の破壊が始まる直前に現れていることを見いだした。より具体的には、よく似た振動の繰り返しが、地震発生前の 44分間にわたって継続して記録されていることが明らかになった。この記録が示す大地の動きはほとんど連続していたが、人が感じることができないほど微かなものであった。この振動は、徐々に強度を増しながら地震の直前まで続いた。

この地震シグナルを分析した結果、この振動は地震が起きた断層のゆっくりとした不連続な滑り(スロースリップ)によって発生していることが判明した。このシグナルは、断層の破壊が始まる 44分前から深いところで断層が滑り始めていたことを示している。この滑りはその後も継続し、徐々に加速して本震に至っていた。

イズミット地震は、深さ 15km 前後で、地殻の脆弱な部分の基盤にある断層のスロースリップによって始まった。研究者たちによって見いだされたスロースリップの明瞭な形跡は、地震の予備段階の兆候である。

(このように地震直前にスロースリップが発生することは)これまでにも理論や研究室での実験によって予測されていたが、実際に立証されたのは初めてのことである。断層の近くに設けられていた GPS観測点(複数)の観測装置は、このようなスロースリップの過程をとらえられるほど鋭敏ではなかったので、当時はこのような前兆シグナルが見逃されていたと考えられる。地震波の記録の非常に詳細な分析だけが、今回の発見を可能にしたのである。さらに加えて、地震発生の予備段階を検出するのに理想的な発震メカニズムをもつ地震の、非常に良く記録された観測データを研究者たちが使うことができた点も今回の発見に寄与している。

研究者たちによれば、今回イズミット地震で見いだされた地震の予備段階は、他の地震にも存在する可能性があるが、特にイズミット地震と同じタイプ(横ずれ断層タイプ)の地震にその可能性が高いとのことである。

地震の予備段階の長い継続時間(44分間)と非常に特徴的なシグナルは(地震予知にとって)有望な要素である。新たな観測によって、今回見いだされたような地震の予備段階の存在が他の地震でも確認されれば、地震のタイプによっては、断層の破壊が始まる数十分前に予知することがついに可能になることであろう。

報道によっては、今回見いだされた地震予備段階のシグナルに対して “foreshock”(前震)という言葉を使っていますが、記事の内容を見る限り 「前震」 という言葉を使うのは適切ではないと思います。

イズミット地震は陸上の横ずれ断層(strike-slip fault)が動くことによって発生しました。日本付近で起きるプレート境界型の大地震は逆断層の運動によるものなので、今回の発見がそのまま当てはまるかははっきりしません。しかし、日本でもこのブログの 2010年 3月 6日付 「豊後水道周辺でスロースリップ (補足)」 で紹介したように、スロースリップが加速度的に拡大して大地震に至るシナリオが研究されています。もし、今回見いだされたような前兆が他の大地震にもあるのであれば、大地震に襲われる数十分前に警報を出すことも夢ではありません。


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ディスカバリーのファイナル・フライト


アメリカ東部標準時 2月 24日午後 5時前、スペース・シャトル 「ディスカバリー」 が打ち上げられ、無事に軌道にのりました:

今回の飛行はディスカバリーにとって 39回目で、これを最後に同機は退役することになっています。

同機は、1984年に処女飛行。90年にハッブル宇宙望遠鏡を軌道に投入、94年にアメリカとしては初めてのロシア人宇宙飛行士が搭乗、95年に初の女性パイロットが操縦して、アメリカの宇宙船としては初めてロシアの宇宙ステーション 「ミール」 にドッキング。これまでの 38回のフライトを通算すると、地球を 5628周、飛行距離は 2億 3000万km、宇宙滞在は 352日。延べ 246人を宇宙に運んでいます。

4月 19日には、スペース・シャトル 「エンデバー」 の最後の打ち上げが予定されています。また、「アトランティス」 の最後の打ち上げは今年の夏になる見込みです。

30年間にわたるスペース・シャトル計画は、本来はもっと早く終わるはずでした。NASA の責任者 Charles Bolden 氏はインタビューに答えて次のように語っています:
受け入れがたいのは、世界でもっとも強力な国家であるアメリカ合衆国が、最後のシャトルが地上に降り立つときまでにその後継となる宇宙機を用意する適切な計画を遂行できていない状況におかれているという事実だ。

なお、このブログの 1月 17日付記事 「宇宙飛行士が自転車事故」 で書いたティム・コプラ飛行士に替わって、スティーブ・ボーウェン飛行士が今回のシャトルに搭乗しています。同飛行士は、1つ前のミッションで打ち上げられたアトランティスにも搭乗していて、2つの連続したミッションに搭乗する初めての飛行士となります。


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2011年2月24日木曜日

ニュージーランドでクジラの集団座礁


2月 20日、ニュージーランド南島の南端部にあるスチュワート島(地図)で、107頭のゴンドウクジラが海岸に乗りあげ動けなくなっているのをハイカーが見つけました。クライストチャーチで地震が起きる 2日前のことです:

獣医が駆けつけたときには半数以上のクジラがすでに死んでおり、生き残っていた 48頭も救助隊が到着するまで生かしておくことは困難だとして安楽死の処置がとられたとのことです。

今回の集団座礁の 2日後にクライストチャーチで大きな地震があったため、地震との関連が取り沙汰されています。しかし、ゴンドウクジラの集団座礁はしばしば見られる現象なので、座礁と地震が偶然同じ時期に発生したということも大いにありえます。

ゴンドウクジラの英語名は「パイロット・ホエール」。しばしば自分から浜に乗り上げるのでこの名が付いたのだそうです。

クジラやイルカの集団座礁は珍しい現象ではなく、ニュージーランドでは 1月に 24頭が北島最北端のケープ・レインガ(地図)に、 2月の初めに南島のネルソン市(地図)の海岸に 14頭が乗り上げています。また、2009年 12月には 120頭以上がゴールデン湾や北島の東海岸で座礁しています。


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2011年2月23日水曜日

ニュージーランドの地震


日本時間 2月 22日午前 8時 51分にニュージーランドで発生した M6.3 の被害地震については、日本人が被災したこともあってすでに多くの報道がなされています。ここでは、シカゴ大学の地質学者 Chris Rowan 氏のブログに載っている詳しい解説を紹介します。同氏のブログ記事は、2009年のイタリア・ラクイラ地震や昨年のニュージーランド・カンタベリー地震のときにも紹介しています:

上記ブログ記事の主要部分を以下にテキトー訳します。文中で 「ダーフィールド地震」 とあるのは、昨年 9月 4日にクライストチャーチ近郊で発生した M7.0 の地震(2010年カンタベリー地震)を指しています。

今から数時間前、ニュージーランド・南島最大の都市クライストチャーチが大地震に再び襲われた。USGS のページは、この地震のマグニチュードが 6.3 で、クライストチャーチから南に数キロメートルのところにあるリトルトン港の地下 5km が震源であると記載している。これは、昨年 9月に起きた M7.0 の震央がクライストチャーチの西 45km であったのに比べて、(クライストチャーチの市街地に)きわめて近い。


図 1】 クライストチャーチ近傍で 2011年 2月 21日に発生した M6.3 地震の震央と発震メカニズム。2010年 9月に発生した M7.0 の地震の震央と発震メカニズムも描かれている。オレンジ色のドットは、今回の地震にともなう余震のうち、M5.5 より大きいものの震央。

上の図は USGS による今回の地震の発震メカニズムである。これによると、今回の地震は「トランスプレッショナル(transpressional)」、すなわち、ほぼ東西方向の圧縮に幾分かの右横ずれ成分が加わった運動が、南北方向の走向を持つ断層で起きたものである。

[追記: ここで私が言いたかったのは、(昨年の大地震を起こした)ダーフィールド断層よりも南北寄りの走向だということである。上の図に対する私の解釈が正しければ、実際の断層面は北東-南西方向である。]

昨年 9月の地震が、東西方向の走向を持つ断層で右横ずれの運動を主成分として起きたのとは大きく違っている。しかし、東西方向の断層での横ずれと南北方向の断層での圧縮は、地殻変動の観点からはほとんど同じ意味を持っている ― どちらも、ほとんど同じ地殻変動の力によって生じうる。今回の地震で生じたトランスプレッショナルな地殻の変形は、ニュージーランドを二分するプレート境界に沿う動きの全体的な傾向と整合的であると言ってよい。


図 2】 ニュージーランドを貫くプレート境界に対する今回のクライストチャーチ地震の位置。

もう一つ注目すべき点は、今回の地震は、昨年 9月の地震によって大きな応力の変化が生じた場所で発生したという点である。これは偶然とは考えられない。今回の地震は、昨年 9月のダーフィールド地震の余震であるのか、それともダーフィールド地震によって誘発された新たな地震であるのか。我々は前者と後者の間のグレーなエリアを見ている。おそらく、昨年のダーフィールド地震が今回の地震を起こした断層の圧力を臨界点以上に高めたであろうが、今回の地震で解放された地殻の歪みのほとんどは、(ダーフィールド地震がおきた) 6ヶ月前よりもはるかに前から蓄積されていたものであろう。


図 3】 2010年 9月のダーフィールド地震の余震と、地殻の歪みの変化。

今後数日から数ヶ月にわたってクライストチャーチ市民が直面する地震のリスクにとって、この図はどのような意味があるのだろうか。これまで(昨年 9月の地震以降)よりも余震が増えるだろうが、それ以上のことを推測するのはためらわれる。私は、カンタベリー平野の地下にさらに大きな地震の種が潜んでいないように、そして、クライストチャーチ市民とニュージーランド国民が今回の災厄に直面しても彼らの特質である快活さと回復力を発揮するようにと祈るばかりである。


《2011年 2月 22日付更新》

以下は、北島の南部・ウェリントン近郊で記録された地震波形である:

図 4

この図から、揺れが数分間にわたって継続し、揺れが始まってから 1~2 分後に最大の震幅に達したことがわかる。


Geonet から 「報告された震度分布図」。色分けは改正メルカリ震度階による:

図 5】 2月 21日(訳注: 22日の間違い?)の地震で報告された揺れの強さ。メルカリ震度階による。震度 8-オレンジ、7-薄いオレンジ、6-黄色、5-緑色、4-青色。

最大震度が震源に近いクライストチャーチに集中している点と、そこから離れると急速に減衰している点に注目してほしい。昨年 9月の地震ではもっと広い範囲で強い揺れが感じられたのとは対照的である。これは、今回の M6.3 の地震が昨年 9月の地震に比べてはるかに少ないエネルギーしか放出しなかったものの、震源の位置が近かったためにエネルギーが市街地に集中したことを示している。


図 6】 20101年 9月 に発生した M7.0 の地震の震度分布。色分けは図 5 と同じ。


多くの写真がクライストチャーチの被害を伝えているが、ヘリコプターから撮影したこのビデオ映像は全体的な被災状況をよく伝えている。いくつかのビルディングが完全に崩壊しているのは明白だが、それよりもはるかに多くの構築物が無事に残っていることに注目すべきである(おそらく、それらの多くは大規模な補修が必要かもしれないが)。建物の中に閉じこめられたり負傷したりした人や、数百名に上る負傷者の友人や家族にとっては大した慰めにはならないかも知れないが、ニュージーランドの厳格な建築規制がまたもや多くの人命を救ったと言えるのではないだろうか。

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2011年2月22日火曜日

ハイチで火山噴火?


昨年 1月 12日に M7.0 の大地震に襲われたハイチで火山噴火パニックがおきています。現場は首都ポルトープランスから西に数キロメートル離れたカルフール(地図)という街。大地震を起こした断層に沿っており、震央にきわめて近いところです。この街の一角で地面の温度が上昇し、2月 17日から周期的に水蒸気や煙が立ちのぼる現象がおきているとのこと:

当局は現場一帯を封鎖しています。現場を調査した鉱業・エネルギー局は、火山噴火にしては地温が低く、地中に溜まった汚泥などが分解して発生したメタンガスが燃焼しているのではないか、と推測しています。

調査をおこなった専門家の一人は、現場近くでは墓地の上に調理施設が建てられていた(現存するのかは不明)、と語っています。そこから排出された廃棄物が腐敗してメタンガスが発生しているとも考えられます。ハイチは、ヴードゥー教に由来する「生ける死体」ゾンビの本場ですので、なんだか気味の悪い話です。


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2011年2月21日月曜日

3年連続 御神渡りなし ― 長野県・諏訪湖


諏訪湖が全面結氷し湖面の亀裂が盛り上がる 「御神渡(おみわた)り」 現象が、この冬も見られませんでした:

「御神渡り」現象がなかったのは、平成に入ってから 17回目ということなのでさほど珍しいことではないようです。一方、長野地方気象台によると 「1月の諏訪市の平均気温は氷点下 2.7度で、平年より 1.2度低く、過去 20 年間で 2番目に低かった」とのこと。寒い冬ではあったものの、「氷点下 10度以下の冷え込みが続か」なかったことが一因のようです。

今年の結氷・解氷のしかたは異例のものだったようです。上記各紙から引用します:
中日新聞』 神社関係者によると、今年1月の平均気温は氷点下2・7度。平年より1・2度低く、御神渡り出現の環境は整っていた。同月11日にほぼ全面結氷を確認したが、北西の岸で一方的に解氷が進むという近年にない現象が起きた。

信濃毎日新聞』 1月11日にほぼ全面結氷。諏訪市渋崎周辺では氷が御神渡りに十分な24センチ前後まで厚くなったが、岡谷市や下諏訪町側で氷の張りが悪く、「異例の凍り方」になったという。

読売新聞』 式には、同神社の宮坂清宮司や氏子総代ら約40人が参加。拝殿で宮坂宮司が「1月11日にほぼ全面結氷し南岸辺り(諏訪市豊田の舟渡川河口付近)は8寸(約24センチ)の氷厚となりそうらえども北西岸(下諏訪町赤砂地域)は氷申さぬ(結氷せず)異例にて御渡(御神渡り)ござなく候」と述べた。注進状に「異例」という文字を入れたのは江戸時代に1度あったきりだという。

神社の宮司は 「自然(の営み)は計り知れないと感じた。3季連続の明けの海には少し不安を覚え、災害のない年でありますようにとお祈りした」 と話しているとのことです。

なお、諏訪湖についてはウィキペディアに次のような記述があります:
糸魚川静岡構造線の断層運動によって、地殻が引き裂かれて生じた構造湖(断層湖)である。また糸魚川静岡構造線と中央構造線が交差する地でもある。

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2011年2月18日金曜日

キラウエア山で群発地震、マグマ上昇 ― ハワイ


ハワイ島のキラウエア山(地図)で群発地震やマグマの上昇、火口壁の崩落が観測されました:

キラウエア山は 1983年以来 28年間にわたってほとんど途切れることなく溶岩の流出を続けている火山ですので、何を今さらという気もしますが、活動レベルが上昇する兆しなのでしょうか。

群発地震は先週あたりからキラウエア山東部の地溝帯で起きています。マグマの上昇は、山頂のハレマウマウ・クレーター(写真)に開いたピット(縦坑あるいは噴気孔)の内部で観測されました。以下はそれを撮影した GIF動画です:

キラウエア山にはもう一つ プウ・オオ・クレーターと呼ばれる火口がありますが、こちらも活発です。以下の動画は同クレーター内部を写したものですが、一見の価値ありです。まるでアメーバか粘菌が這い回っているように溶岩が移動しています:

以下は米国地質調査所(USGS)傘下のハワイ火山観測所(HVO)が出している最新の状況報告書です。2月 17日付の記述によると、16日に山頂部の大きな収縮が傾斜計で観測されたが、GPS 観測網では 昨年 11月初めに始まったハレマウマウ・クレーター周辺の膨張が継続していることが捉えられている、とのことです:

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2011年2月17日木曜日

バレンタイン・デーの邂逅 (続報-2)


2月 16日付 「バレンタイン・デーの邂逅 (続報)」 のフォローアップです。NASA のサイトに追加の画像が掲載されました。

以下は 2005年にディープインパクト探査機の衝突体によって形成されたクレーターの画像です:

左側の画像は、2005年にディープインパクト探査機から分離された衝突体に搭載されたカメラが、衝突前に撮影した彗星の中心核の表面です。右側は今回、スターダスト探査機が撮影した同じ領域です。矢印で囲まれた部分が衝突体によって形成された人工クレーターです。クレーターの直径は約 150m。

クレーターの中央部は、盛り上がっています。NASA のサイトは、衝突の際に噴き上がった物質がその後降り積もったためと説明していますが、衝突の衝撃によって彗星内部の物質が隆起したという 「アイソスタティック・リバウンド」 説もあります。

以下のページには新たに公開された 11枚の画像がスライド・ショーの形で収められています:

特に注目して頂きたいのは 3枚目5枚目の画像です。各画像とも、上が 2005年、下が今回撮影されたものです。

画面左上から右に向かってクレーターのない平坦な地形が広がっています。この平坦な領域は周囲より標高が高く、右端は円弧状の崖になっています。NASA の科学者たちによると、この崖が 2005年に比べて 20~30m 後退しているとのことです。

また、5枚目の画像で黄色の長方形で囲まれたクレーター群が、今回撮影された画像ではつながってしまっています。

これらの変化は、2005年以降、テンペル第 1彗星が太陽の周りを 1周する間に、揮発性の物質が蒸発することによって生じた浸食作用であるとのことです。


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2011年2月16日水曜日

ドイツ西部で連続地震


ドイツ西部のライン・マイン地方で 2月 14日から 15日にかけて地震が連続しました:

震央(地図)はライン川の流域で、フランクフルトの西北西約 65km の地点です。以下は GFZ(GeoForschungsZentrum)の資料から抜き書きした発震時刻(UTC ― 協定世界時)、マグニチュード、深さ(km)です:
  • 2011-02-14 12:43:11 4.5 12
  • 2011-02-14 12:50:42 3.2 11
  • 2011-02-14 13:38:34 2.6 10
  • 2011-02-14 17:23:32 3.6  9
  • 2011-02-14 19:35:08 3.0 10
  • 2011-02-15 12:15:45 2.9 10

最大の M4.5 の地震のみ発震機構解が掲載されていますが、それによると伸張応力によって発生した正断層型です。

ドイツは地震が少ない国ですが、ライン・マイン地方はスイスからベネルックス諸国に向かって伸びるライン地溝帯が通っているため、比較的地震が起きやすい場所だそうです。昨年 12月 23日には今回の震源より少し南の地点で M3.6 と M2.9 の地震(深さは両者とも 5km)が発生しています:

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バレンタイン・デーの邂逅 (続報)


2月13日付「バレンタイン・デーの邂逅」の続報です。バレンタイン・デーにテンペル第 1彗星から 178km のところを通過した NASA のスターダスト探査機が同彗星の画像を送ってきました:

上記の画像をつなぎ合わせて動画にしたものが YouTube に投稿されています:

以下は最接近時に撮影された画像の一つです:

NASA が開いた記者会見では、2005年にディープインパクト探査機が打ち込んだ衝突体によって形成されたクレーターや、その後約 5年半の間に起きた表面地形の変化を示す比較写真もプロジェクターで映し出されていましたが、まだネット上にはアップされていないようです。


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2011年2月15日火曜日

セント・ヘレンズ山で M4.3


2月 14日午前 10時 35分(日本時間 15日午前 3時35分)、米国北西部にあるセント・ヘレンズ山地図地図)で M4.3、震源の深さ 5.5km の地震(震央地図)が発生しました:

少なくとも 30の余震も発生しているとのことです。

セント・ヘレンズ山は、1980年に山体崩壊をともなう大噴火を起こしています。その噴火以降で最大の地震は 1981年のセント・バレンタインズ・デーに発生した M5.5 ですが、今回奇しくも同じバレンタイン・デーに発生した M4.3 はそれに次ぐ規模です。

1980年の大噴火の前には M5.2 の地震が発生、翌年も同じ規模の地震が起きた後に噴火が始まっています。しかし、専門家は今回の地震が噴火に結びつくとは考えていません。

セント・ヘレンズ山周辺では 今年 1月末にも「群発」地震が発生しています。


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2011年2月14日月曜日

福岡上空に原因不明のもや (続報)


2月7日付 「福岡上空に原因不明のもや」 のフォロー・アップです。福岡市の上空を覆った「黄砂や火山灰でない」「原因不明のもや」の正体は、どうやら中国から流れてきた大気汚染物質だったようです:

同じ時期に熊本も「もや」に覆われました:

香川、徳島、沖縄でも「もや」が報道されています:

汚染物質の正体は、九州大学の専門家の分析では 「硫酸塩や、すす」、国立環境研究所の分析では 「硫酸塩エアロゾル」となっています。「呼吸器などの疾患を持っている人は特に外出を控えた方がいい」とのことです。

GDP で中国の後塵を拝することになった日本ですが、大気汚染物質まで浴びせられるのは勘弁してほしいものです。


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イエローストーンで地面が急激に隆起? (補足)


1月 20日付「イエローストーンで地面が急激に隆起?」で「詳しいことは後日追記します」と書いたまま時間が経過してしまいました。遅ればせながら、その時に書けなかったことをまとめます。以下で、英語版、日本語版とあるのはそれぞれ次の記事を指しています:

オリジナルである英語版の記事の主旨を私なりにまとめると以下のとおりです:
  • イエローストーン地域の地殻は過去 15000年以上にわたって隆起と沈降を繰り返していることを示す地質学的な証拠がある。今後も隆起と沈降が繰り返されるだろう。
  • どの隆起のタイミングで噴火が起こるかはわからない。
  • 隆起・沈降の原因についてはマグマ溜まりの膨張・収縮以外に、より浅いところの熱水系が関与している可能性もある。

以下に日本語版の問題点を列記します:

第1に、タイトルについて。英語版のタイトルは 「イエローストーンはマグマ溜まりの膨張にともなって隆起した」 と現在完了時制で書いているのに対して、日本語版は 「米イエローストーンで地面が急激に隆起」 と書き換えています。これでは、過去数十年にわたってイエローストーン地域で隆起や沈降の繰り返しが観測されていることや、少なくともここ数年、同地域での隆起がたびたび報道されていることを知らない読者は、イエローストーンで急激な隆起がつい最近始まった、大変な事態だ、と誤解しかねません。さらに日本語版では冒頭のパラグラフに 「“超巨大火山(スーパーボルケーノ)”の活動が活発化した影響との見方もある」 と英語版にはない文を加えています。センセーショナルなタイトルや見出しで読者を増やそうとしているのでしょうか。

第2に、日本語版では、英語版にある 3つの節のうちの 1つをほぼ完全に無視しています。英語版は以下の 3つの節から構成されています。3つはほぼ同じ分量があります:
  1. タイトルなし (概説を述べている部分)
  2. Yellowstone Takes Regular Breaths (イエローストーンは定期的な呼吸を繰り返している)
  3. Yellowstone Surge Also Linked to Geysers, Quakes? (イエローストーンの隆起は間欠泉や地震にも関係しているのか?)

日本語版では第 3節にある 11段落のうち主要部分の 9段落を完全に無視しています。このため、イエローストーンのさまざまな観光名所を形づくっている熱水系の活動が、同地域の隆起・沈降に関与している可能性や、より浅いところにマグマが存在している可能性について日本語版の読者は知ることができません。マグマ溜まりの膨張 ⇒ 地面の隆起 ⇒ スーパーボルケーノの巨大噴火というセンセーショナルなストーリー展開のじゃまになるから無視したのでしょうか。

熱水系と隆起の関係など、この部分について多くを語っているアメリカ地質調査所(USGS)カスケード火山観測所のイエローストーン専門家ダン・ズリシン(Dan Dzurisin)氏の発言はほとんどすべてカットされ、「イエローストーンで起きる地盤変動の仕組みは、調査技術が進歩すればするほど、その複雑さが浮き彫りになってきた」という「まとめ」のコメントだけが記事全体の「しめ」として流用されている印象になっています。

第3に、イエローストーン地域では隆起だけではなく沈降も起きているということを示す重要な観測事実を記述した以下のパラグラフ(第 2節内)も無視されています。「for example」とあるので重要ではないと翻訳者が判断したのかも知れませんが:
Surveys show, for example, that the caldera rose some 7 inches (18 centimeters) between 1976 and 1984 before dropping back about 5.5 inches (14 centimeters) over the next decade. 〔調査によればたとえば、(イエローストーン)カルデラは 1976年から 1984年にかけて 18cm 隆起したが、続く 10年間にはおおよそ 14cm 沈降した。〕

日本の読者にわかりやすくするために言葉や文を補ったり、字数や紙数の制約があって翻訳対象から外す部分があるのは致し方ないことなのかも知れません。しかし、少なくともタイトルにはもう少し配慮があってしかるべきだったと思っています。

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2011年2月13日日曜日

バレンタイン・デーの邂逅


NASA の探査機スターダストがアメリカ東部標準時 2月 14日 午後 11時 37分(日本時間 15日 午後 1時 37分)にテンペル第 1彗星に最接近します:

スターダスト探査機は 1999年に打ち上げられ、2002年に小惑星アンネフランクに 3300km まで接近、2004年にヴィルト第 2彗星の尾の中に突入して彗星の粒子を捕集しました。捕集した粒子を入れたカプセルは切り離され、2006年に地球に帰還しています。探査機本体は、延長ミッションとしてテンペル第 1彗星への接近軌道に投入されました。

テンペル第 1彗星には 2005年に NASA のディープ・インパクト探査機が接近し、重さ約 0.4トンの合金製衝突体を同彗星の中心核に衝突させて内部構造を調査しています。この衝突によって中心核の表面に形成されたクレーターがその後どのように変化しているかが、今回のスターダスト探査機の接近調査でもっとも興味をそそられる点です。テンペル第 1彗星はこのクレーターの形成以降、太陽の周りを 1回公転しています。太陽への接近などによってどのような変化が中心核の表面地形に生じているのでしょうか。一つ心配なことは、今回スターダスト探査機が接近するときに、クレーターのある面が探査機側に向いている保証はないという点です。

スターダスト探査機は打ち上げ以降 12年が経過し、総飛行距離は 60億km に達しています。14日の彗星への接近と、その後におこなわれる観測データを地球に送るための姿勢変更でわずかに残っている燃料を使い切り、12年間の使命を終えることになります。ちなみに、日本の小惑星探査機「はやぶさ」は 7年間、60億km でした。


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樽前山で発光現象 ― 北海道


北海道南西部、苫小牧市と千歳市にまたがる樽前山地図)で、1月 24日に発光現象が観測されていました:

樽前山での発光現象は 2003年 10月以来のことです。発光現象を観測したのは札幌管区気象台火山監視・情報センターですが、札幌管区気象台が 「1月 31日現在」 でまとめた下記資料には記載がありません:

なお、樽前山に関しては今年に入ってから以下のような報道がありました:

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2011年2月12日土曜日

シベルチ山の火砕流 ― ロシア


NASA の人工衛星「テラ」が赤外線で捉えたカムチャツカ半島のシベルチ山の火砕流。撮影は 1月 27日です:

霧島山新燃岳と同じように山頂火口に溶岩ドームが形成されています。溶岩ドームの部分が白く写っていますが、この赤外線映像では白がもっとも高温の領域を表しています。一方、火砕流の縁の部分が赤いのは、他の部分に比べて低温であることを示しています。

シベルチ山の現在の噴火活動は 1999年に始まり継続中です。


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エルタ・アレ山の近況 ― エチオピア


昨年 11月に溶岩流出のあったエルタ・アレ山の写真集があったので紹介します。撮影されたのは今年 1月です:

私がおもしろいと思ったのは 3行 3列目の写真です。白人の研究者はガスマスクを着けているのに、現地の人は何も着けずにそばに平然と立っています。

エルタ・アレ山については、「世界ふしぎ発見」などの TV番組で一般人は近づきにくい場所という印象を受けましたが、上記の写真集には軽装の観光客が何人も写っています。

余談ですが、上記のリンク先の国別ドメインは 「.ch」 です。チェコ共和国のドメインかと思っていましたが、意外なことにスイスのドメインでした。チェコは 「.cz」 でした。なぜスイスのドメインが 「.ch」 なのかについては、ウィキペディアの説明をお読みください。


[注] これまでの記事では火山の名前を 「エルタアレ」 と一続きで書いてきましたが、今後は英語表記の 「Erta Ale」 に準じて 「エルタ・アレ」と表記することにしました。


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2011年2月9日水曜日

フロスト・アースクエイク


遅くなってしまいましたが、1月 7日付 「アイスランド南部で地震急増」(震央分布図あり) のフォロー・アップです。「地震」急増の原因は、急激な気温低下によるフロスト・アースクエイクだったようです:

フロスト・アースクエイクとは、急激な気温低下にともなって岩石の割れ目に入り込んでいる水が凍り、体積が膨張することによって岩石が破壊される際に発生する震動のことです。当日は氷点下 20度前後まで気温が低下し、フロスト・アースクエイクが無数に発生したようです。


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カムチャツカ半島の火山が活発化? ― ロシア


以下の記事に記載されている 3つの火山は以前から噴火を含む活発な活動を続けており、周辺を飛行する航空機のエンジンに影響する恐れがあるとして注意報が出されたこともたびたびです。なぜ今頃になって唐突に以下のような記事が掲載されたのか不可解です。これらの記事を見て、桜島や霧島山(新燃岳)に続いてカムチャツカ半島でも新たに火山噴火が始まったという誤った印象を持たないようにして頂きたいと思います:
  1. “Orange” threat posed to Kamchatka Region (“Voice of Russia”)
  2. 噴火活動が活発化するカムチャッカ半島 (“Voice of Russia”)
  3. Russian volcano erupts sending ash four kilometres high (英国BBC、動画あり)

上記「2」の記事は「1」を翻訳したものですが、冒頭の “3 volcanoes have started erupting …” (現在完了時制) を 「3つの火山が噴火を始めた」 と訳すなど、誤解を招きやすい内容になっています。「3」の記事は、おそらく 「1」 に触発されて書かれたものだろうと思います。

上記記事に登場する 3つの火山のうち、シベルチ山(Shiveluch、地図)とカリムスキー山(Karymsky、地図)は少なくとも過去10年間、ほとんど途切れることなく噴火を含む火山活動を続けています。キジメン山(Kizimen、地図)は昨年 11月 11日に激しいガスや蒸気の噴出が目撃されて以降、活発な状態が続き、噴煙を数千メートルの高さにまで噴き上げて航空機に対するカラー・コードが “RED” に引き上げられることが何度か起きています。

また、記事中で 1956年の大噴火が取り上げられているベズイミアニ山(Bezymianny、地図)は昨年 6月 1日に爆発的噴火をし火砕流が発生、11月下旬には溶岩の流出が確認されています。

現在、3つの火山の航空カラー・コード(Aviation Color Codes)は、すべて “ORANGE” になっています。


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新たな火山噴火の兆候 ― アイスランド


昨年噴火したエイヤフィヤトラヨークトル氷河の次はカトラ山が危ないというのが大方の推測でしたが、これまでのところカトラ山周辺に大きな変化は起きていません。

そのような中、別の火山に噴火の兆候が出てきていると一部の火山学者が指摘しています:

噴火の可能性が指摘されているのはアイスランド最大の氷河・バトナヨークトル(Vatnajökull)の下にある火山です。この氷河の下には Bárdarbunga(地図)と Grímsvötn(地図)という 2つの大きな火山がありますが、このうち、氷河の北西部にある Bárdarbunga 周辺で地震が増えており、マグマが上昇してきている恐れがあるとのことです。

以下はバトナヨークトル氷河の衛星写真と地図です。衛星写真の中でもっとも大きな白い領域がバトナヨークトルで、その左下でアイスランドの最南部にあるのがカトラ山のあるミルダルスヨークトル氷河、その左に飛び出している棒状の白い領域が昨年噴火があったエイヤフィヤトラヨークトル氷河です:

噴火の可能性を指摘しているのはアイスランド大学の地球物理学教授 Pall Einarsson 博士。博士は Bárdarbunga 周辺の観測網を充実させるよううったえています。また、アイスランド気象局に勤務する地質学者 Sigurlaugar Hjaltadóttir 博士も同様の見解で、来年には噴火が起きるだろうと予測しています。しかし、他の多くの専門家は噴火の可能性は低いとみているようです。その理由としては、地震が頻発している場所ではアイスランドで近代的な地震観測が始まって以降、非常に多くの地震が観測されており、現在の群発傾向がとりたてて特別なものと考える積極的な材料がない、ということがあるようです。

Bárdarbunga はアイスランドで第 2位の規模をもつ火山です。同山が最後に噴火したのは 1910年ですが、最大の噴火は 1477年に起きたもので、大量の軽石と火山灰を噴出。流出した溶岩流は、過去 1万年間に地球上で発生した溶岩流としては最大のものであったとのことです。


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乗用車サイズの小惑星が地球接近


日本時間 2月 10日午前 4時 26分頃、直径 3m ほどの小惑星 「2011 CA7」 が地球から約 10万km のところを通過します:

2月 5日に地球を掠めていった小惑星 「2011 CQ1」  (2月5日付 「小惑星が地球に記録的大接近」 参照) は、気象衛星や通信衛星などが使っている静止軌道よりもはるかに地球に近いところを通過していきましたが、今回の 「2011 CA7」 は地球と月との距離の 4分の 1ほどのところを通過していきます。

「2011 CA7」 は今月になってから発見されたため、まだ軌道に不確定要素があります。そのため、最接近時の地球との距離の推定値は 9万 3千 km から 11万 4千 km と幅があります。

「2011 CA7」の公転軌道の近日点は金星の軌道付近、遠日点は地球軌道と火星軌道の間にあります。そのため、過去に何度も金星や地球に近づいたことがあり、今後もそれを繰り返すことになります。今後数百万年のうちには金星か地球に衝突することは避けられないと見られています。


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2011年2月7日月曜日

福岡上空に原因不明のもや


2月 6日、福岡市の上空に原因不明の「もや」がかかりました。福岡管区気象台は「何らかの浮遊物が上空に漂ったため」と説明していますが、煙霧ではないのでしょうか。地震前兆的には、エアロゾルとか 「地気」 と呼ばれるものがありますが、どうでしょうか:

同じ日、広島では煙霧、神戸では春がすみと報じられています:

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温泉の温度が急激に変化 ― 鹿児島県霧島市


霧島山新燃岳の火口から約 2.5km のところにある温泉(鹿児島県霧島市の「国民宿舎みやま荘」、地図)で、昨年末ごろから、源泉の温度が数日おきに 10度以上、上下する現象がおきていたとのことです:

専門家は 「過去に起きた大規模な噴火でも、温泉が沸騰したり井戸水が枯れたりする現象が見られた。今回のケースもマグマの上昇に伴う変化と考えられる。こうした情報は噴火の予測に重要なので、何か変化があった際は、行政や研究機関などに連絡してほしい」 と語っています。

私はほぼ毎日、温泉の温度、湧出量、成分などに変化があったという報道がないか目を光らせていますが、この霧島市の温泉については報道がなかったと思います。こういう変化こそ、前兆掲示板に書き込んでほしいものです。ところが残念なことに、数ある前兆掲示板のほとんどは、頭痛、耳鳴り、体感、電卓の誤表示、といった愚にもつかない 「前兆」 の書きこみばかりで、病的な精神状態の人たちのたまり場と化しており、普通の人には近寄りがたいところになってしまっています。普通の人が、これはと思う地震や火山噴火の前兆を報告できる場があれば良いのですが ・・・。


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2011年2月6日日曜日

首都壊滅を予言 ― ニュージーランド


ニュージーランドでは、2月 6日は 「ワイタンギ・デー」 という祝日です。ワイタンギ条約の締結を記念する日で、毎年、その日の夜明け前に首相や野党党首も出席して記念式典が行われます。その式典で、最後にスピーチをおこなったマオリ族の長老が、首都ウェリントン(地図)が地震によって壊滅するという予言を口にしたため、昨年 9月にカンタベリー大地震に襲われたばかりの同国で、ちょっとした騒ぎになっています:

この長老は、ウェリントンが大地震と津波によって海中に没するビジョンを見たものの、38年間、心の中に封印して公表しなかったのだそうです。そのビジョンとは ―― 大地震で発生した津波が南はカイコウラ(Kaikoura、地図)に達する。そこから反転した津波が首都の街路になだれ込み、北はファンガヌイ(Whanganui、地図、注)に達する広い地域を破壊する。「たくさんの遺体収容袋がウェリントンの街路に置かれているのが見えた」、「国会議事堂(the Beehive)の屋根がウェリントン市街の瓦礫の中にあるのが見えた」。

首都を壊滅させる大地震が何年に起きるのかはわからないが、6月のことなのだそうです。

ウェリントンを襲った大地震としては、1855年 1月 23日の M8.2 と 1942年 6月 24日の M7.2 があり、ともに ワイララパ(Wairarapa)断層が震源であったとラジオ・ニュージーランドは伝えています。


(注) 各メディアとも “Whanganui” と伝えていますが、地図を見てもわかるとおり、かなり内陸の場所です。ひょっとしたら北島南岸沿いの “Wanganui”(地図) かも知れません。


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2011年2月5日土曜日

小惑星が地球に記録的大接近


「2011 CQ1」と名付けられた小惑星が、日本時間 2月 5日午前 4時 39分、太平洋中部の上空 5480km (地球の半径の 0.85 倍)のところを通過しました。地球に衝突しなかった小惑星としては、これまででもっとも地球に近づいた記録となります。発見されてからわずか 14時間後に地球を掠めるように通り過ぎていきました:

「2011 CQ1」の直径は 1m と推定されています。この小惑星 (というよりは岩塊) は、これまで地球の公転軌道の外側をまわるアポロ族というグループに属していましたが、質量が小さいため地球の重力によって大きく軌道が変わり、今後は地球の公転軌道の内側をまわるようになるとのことです。

「2011 CQ1」と同じ程度の大きさの小惑星は、平均して数週間に 1度の頻度で地球大気圏に突入し火球となっていますが、その破片が地表に到達することはめったにないのだそうです。


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2011年2月3日木曜日

ふたつの太陽、ふたつの富士山


2月 2日早朝、札幌市内で太陽が二重に見える現象がありました。複数の太陽が見える現象としては「幻日」(写真)がありますが、これは違うようです。気象台は 「メカニズムは不明だが、水分を含んだ雲が鏡の役割をし、太陽が反射したのではないか」 と説明していますが、反射というよりは方解石などで見られる複屈折のようなものが起きているようにも思えます:

以下は 3つの太陽が見えている写真です。ポーランドで撮影されたものですが、2重ガラスの窓越しに撮影したのでガラスの反射が写り込んでいるのではないか、との疑問が出されています。詳しくはこのブログの 2009年8月9日付記事 「昇る 3つの太陽」 を参照してください:

1月 30日夕方には、富士山が二重に見える現象が関東地方で見られました。気象庁は 「見る人の近くに比較的暖かい空気の層があり、富士山の近くに冷たい空気層がある場合に起こる」、「光が屈折し、見る人の側の空気層がスクリーンの役目を果たすため」 と説明していますが、屈折はしなくてもスクリーンの役割を果たすものがあれば起きるのではないでしょうか:

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2011年2月2日水曜日

地震で 8万人が負傷? ― 中国・雲南省


2月 1日午後、中国南西部でミャンマーとの国境に近い雲南省盈江県(地図)で M4.8 の地震が発生、被害がでています:

『新華社』 の日本語版では、「8万600人の被災、建物678棟3049戸の損壊」としていますが、ロシアの 『ボイス・オブ・ロシア』 英語版は 「8万人の負傷者、3000戸の建物に被害」 と伝えています。「負傷」 ではなく 「被災」 の方が正しいのだと思います。


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2011年2月1日火曜日

大西洋北部の火山島近海で M6.1


大西洋北部、ノルウェーとグリーンランドの中間に浮かぶノルウェー領ヤン・マイエン島の近海で、1月 29日、M6.1(震央地図) と M4.8(震央地図) が発生しました:

M6.1 の地震については USGS(米国地質調査所)が発震機構解(Centroid MomentBody-Wave Moment)を示しています。それによると、中央海嶺から派生したトランスフォーム断層が水平にずれたために発生した地震であると思われます。

ヤン・マイエン島(ウェブカメラ)は、アイスランドから北東に約 650km 離れた大西洋中央海嶺沿いの火山島です。同島にある Beerenberg  山は標高 2277m の成層火山で、1985年に 35~40時間で 700万 m³ のマグマが流出する大きな噴火をおこしています。


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セント・ヘレンズ山で群発地震


現地時間 1月 29日から 30日にかけて、米国北西部・ワシントン州にあるセント・ヘレンズ山地図)で十数回の地震が発生しました:

震源の深さは数キロメートル、最大の規模は M2.6です。

ワシントン大学地震研究所の専門家は、地震は火山性のものではなく断層の運動によって発生した構造性のものだが、火山の近くで発生した群発地震なので厳重に監視している、と語っています。


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