2010年9月30日木曜日

レアアースほしさに …… (その 2)

まず、アメリカ議会の情報を専門に伝えるラジオ局 Capitol News Connection のサイトに掲載されている 9月 26日付の記事を紹介します。ラジオ番組 “Power Breakfast” の内容を文字化したものです:

以下に抄訳します:
ワシントン発 ― 希土類金属(rare earth metals)はハイテク産業や兵器産業にとって欠くことのできない重要な物資となっていますが、アメリカ合衆国はどの希土類金属も自給することができません。中国がそのような決定的に重要な無機化合物の第一の供給源であるという事実に対する懸念が議会で広がっています。

おはようございます。Elizabeth Wynne Johnson です。Capitol News Connection がお送りする番組 “Power Breakfast” です。

[コマーシャル] この番組 “Power Breakfast” はレイセオン(Raytheon)社がお送りしています。レイセオンは戦術・戦略目標についての状況認識や情報を提供する Global ISR solutions を推進しています。レイセオン ― お客様の成功が私たちの使命です。

希土類金属はこれまであまり注目されていませんでしたが、急速に脚光を浴びるようになってきました。下院議員の Kathy Dahlkemper (以下 D 議員) さんと Mike Coffman (C 議員) さんは、以前から希土類金属に注意を払ってこられました。

D 議員 ― 今後、皆さんは希土類金属のことや、それがわれわれの将来の発展や技術にとって非常に重要であることを何度も耳にすることになるでしょう。

C 議員 ― これは氷山の一角なんです。多くの方々がこの問題の重大さを本当に理解しているとは言い難いと私は考えています。

日本と中国の間で貿易紛争(レアメタルの実質的対日禁輸)が起こったとの報道が先週末に伝わった時には、すでに今週中に議会で(希土類金属に関する)法案が審議される予定になっていました。

D 議員はペンシルバニア州選出の民主党下院議員で、希土類金属に関する最新の法案の提出者です。彼女は、産業界のロビイスト(複数)が、この問題について関心を持つよう議会に働きかけていると語っています。希土類成分は、再生エネルギーに関係する装置や携帯電話から兵器システムに至るまでハイテク製品の製造において不可欠です。アメリカ合衆国は、使用する希土類物質の 100% を輸入しています。中国は諸外国に対して、中国国内で製造を行わなければ中国から閉め出すと言い始めています。

D 議員 ― わが国の国防総省が関わる製品の多くには希土類金属を含んだ部品が使われており、それは明らかに我々にとっての非常に大きな懸念材料です。我々は、わが国の防衛兵器を中国で製造するようになることは望んでいないのです。

C 議員 ― 他の先進工業国の多くと同じようにわが国は完全に中国に依存しています。ですから、代替手段を見いだし、競争力のあるサプライ・チェーン(供給プロセス)を構築することが重要なのです。

D 議員の提出した法案は、産業界の調整と調査に焦点を当てています。一方、コロラド州選出の共和党下院議員である C 議員が提出した別の法案は、国家備蓄の推進を目指しています。

下院は今度の週末から休会する予定になっています。議員の皆さんはそれまでに法案が審議されることを望んでいます。おそらく、日本と中国の間の希土類物資をめぐる対立があからさまにした(中国の)脅威が、議員の皆さんの意向を後押ししてくれることでしょう。

Capitol News Connection のお送りした “Power Breakfast” でした。

ひるがえって日本の国会をみるとどうでしょうか。議員の「先生」たちは、今回の中国人船長の釈放をめぐって、やれ内閣の責任を追及するだの、検察の幹部を証人喚問せよだのといった内向き・後ろ向きの「内部摩擦」ばかりにエネルギーを浪費して、将来を見据えた資源戦略や外交方針などの議論はそっちのけです。今回の事件の真相を解明することも重要ですが、それよりも優先度が高く先に着手しておくべき事項が山積しています。上記の記事にあるアメリカの議員の活動が完全無欠な手本であるというわけではありませんが、日本の国会議員は見習ってほしいものです。


(続く)