2010年8月13日金曜日

大地震の連続発生 ― 太平洋南西部

7月 18日から 24日にかけて、太平洋南西部で 9つの大きな地震が相次いで発生しました。そのうちの 4つはマグニチュード 7クラスでした。この連続地震について、ある地質学者がブログに解説記事を載せているので紹介します:

地図 1 (上)は、9つの大地震が発生した地域のプレート境界を示したものです。マイクロプレートが複雑に分布し、相互に作用し合っています。黒い矢印はプレートの移動方向で、それにつけられた数字は 1年あたりの移動量をミリメートル単位で現したものです。

地図 2 (下)は、相次いで発生した 9つの大地震の震央を示しています。東はバヌアツから西はフィリピンのモロ湾まで、震央がほぼ直線状に並んでいることに驚かされます。図中の番号 (1~9) は地震の発生順序を示すとともに、以下の説明に出てくる震源球の番号とも一致しています。

地図 3 は、最初に 3つの大地震が発生したニューブリテン島の拡大図です。

震源球 1震源球 2震源球 3 はニューブリテン島で発生した 3つの大地震の発震メカニズムを示しています。

上記 3つの震源球についての解説を以下にテキトー訳します:
震源が非常に接近していることを考慮すると、これら 3つの地震は前震-本震-余震の関係にあるのかも知れない(その他にも多くの小さな余震が発生している)。2番目と 3番目の震源球は、沈み込み帯あるいはその近傍で圧縮する力が働いたためにこれらの地震が発生したとする見方と一致する。一方、1番目の震源球は、これらとは直交する方向の圧縮力が働いたことを示している。これはいささか奇妙である。この地震の原因となった岩盤の破断が、沈み込んでいるプレートの十分に深いところで発生し、横方向の圧縮力が作用したためかも知れない。インドネシアで発生した類似の地震についての昨年 9月のブログ記事を参照すれば、これはさほど奇妙なことではないとも考えられる。

この 3つの大地震の後、今度はインドネシアとバヌアツで大きな地震が発生します。これについては以下のように書かれています:
ニューブリテン島から東と西にそれぞれ数百キロ離れた場所で 2つの大きな地震が発生した。これらの地震についてはいつもの断り書きを記しておく ―― すでに破断の瀬戸際にある断層に対して近くで発生した大地震が影響を与える可能性はあるが、地震相互間のそのような直接的な関連を証明することはきわめて困難である。

震源球 4 はインドネシア・ハルマヘラ島の北方で発生した地震の発震メカニズムを示しています。これについてブログには次のように書かれています:
東西方向の圧縮力が働いているが、横ずれ成分も大きい。この横ずれ成分は、この地震が発生した沈み込み帯 (フィリピン海プレートが西に向かってスンダ・プレートの下に沈み込んでいる) のすぐ南でトランスフォーム断層が分岐していることに由来しているのだろう。

震源球 5 はバヌアツで発生した地震の発震メカニズムを示しています。ブログには 「東西方向の圧縮力が働いたことが示されており、(バヌアツを含む)島弧の下でオーストラリア・プレートが東向きに沈み込んでいることとの関連は明らかだ」 と書かれています。

地図 4 は、7月 23日から 24日にかけて、フィリピンのモロ湾で発生したマグニチュード 7 クラス 3つを含む 4つの深発大地震の震央を示しています。

震源球 6震源球 7震源球 8震源球 9 は、上記 4つの深発大地震の発震メカニズムを示しています。ブログには以下のように書かれています:
4つの発震メカニズムはすべて、北西-南東方向の伸張応力が働いたことを示している。ハルマヘラ島の地震(震源球 4)と同じく、これら一連の地震はフィリピン海プレートが西向きにスンダ・プレートの下に沈み込んでいることと関係しており、沈み込んだフィリピン海プレートのスラブの深いところで発生した。伸張応力は、スラブがマントルの中に沈み込んでいくことにともなう下向きの張力の結果だろう。最初の地震(震源球 6)が、それよりも浅いところと深いところで後続の地震を誘発したことは明らかだ。

以上が 「Friday(ish) Focal Mechanisms」 というブログ記事の概略です。

上記 9つの地震とはしばらく間が開きましたが、8月 10日(火)にバヌアツで M7.3 の大地震が起こり、若干の津波が発生しました。上記の震源球 5 の地震から少し南にずれた場所が震源です。深さは 35kmで、震源球 5 の地震とほぼ同じです。以下は USGS の資料です:

まだまだ「東はバヌアツから西はフィリピンのモロ湾まで」の直線状の地域から目が離せません。


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