2010年8月31日火曜日

シナブン山が 410年ぶりの噴火 ― インドネシア (続報)

イギリスの公共放送局 BBC のサイトが写真 7葉を掲載しています:

冒頭の写真が印象的です。黒い噴煙が 2つに分かれて山腹から立ちのぼっています。太い方の噴煙は水平に噴き出しているようです。富士山の宝永噴火(1707年)も山腹からの噴火でしたが、こんな感じだったのでしょうか。


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ミミズの大量死 ― 兵庫県西宮市、宝塚市など

大量のミミズの死骸が道路上に散らばっています:

専門家は「例年より明らかに多い」と語っています。原因は、今夏の猛暑のようです。

参考までに、『地震の前、なぜ動物は騒ぐのか 電磁気地震学の誕生』(池谷元伺、NHK ブックス、1998)には、ミミズに関して次のような記述があります:
神戸地震の前に、「ミミズがたくさん地上に出て死んでいた」「ミミズが団塊をつくっていた」とある。猪名川群発地震域に住む筆者も、地震の前に盛り上がったミミズの穴だらけの庭を見て不思議に思った。「寒中に ミミズ出る年 地震あり」との伝承や安政見聞録、ルーマニアや中国での前兆現象と合致する。地中の虫類は、地上に出てくる。

つり道具屋から買ってきたミミズ箱の両端にアルミ箔の電極を付け、乾電池で電圧をかける。ミミズは電場効果で土から現れて逃げ出す。(略)地中から出て地面から立ち上がろうとする。交流電圧をかけると、小さなミミズほど高周波で応答した。体内に大きな電流が流れる(交流の電気抵抗が小さい)周波数は、ミミズの長さに反比例する。

『天気予知ことわざ辞典』(大後美保、東京堂出版、1984)にはミミズに関して多数のことわざが収録されています。以下はそのほんの一部です:
  • 大ミミズ路上に出るは雨の兆し (福井県)
  • ミミズが地上にふんを盛る時は三日以内に雨 (長野県上田市)
  • ミミズの体にハエがついていると雨 (群馬県富岡市)
  • ミミズが出て背中が白いと雨または曇り (群馬県前橋市)
  • ミミズが深くもぐっていると雨、浅い所にいると晴れ (群馬県富岡市)
  • ミミズがころび出ると百日の天気 (長野県北安曇郡)
  • ミミズが地上に出て着物(土や砂)を着ていると晴れる (群馬県)
  • ミミズに砂(土)が着いていれば晴れ(群馬県伊勢崎市)

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コイヘルペス発生 ― 山形県

山形県山形市内にある公園の池でコイヘルペスが発生したとのことです:

山形県では 6月にも鶴岡市内でコイヘルペスが発生しています。


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播磨灘の中央部が泡立つ ― 兵庫県

播磨灘の中央部(小豆島の東約 10km)で、海面に無数の気泡が間断なく浮かび上がっています:

魚群探知機には無数の気泡とみられるものが水深 40m の海底から柱状になって浮上してくる様子が捉えられており、海面では長径約 50m の楕円形の範囲に広がっています。

専門家からは、「火山性の海底温泉は考えにくい」、「気泡以外に海水ではない液体が出ている可能性もある」、「瀬戸内海の火山活動は大昔に終わっている。仮に高温の湯が出れば、海面に明らかな変色が見られるはず」、「海底の泥炭層が何かの拍子に分解しているのでは」、「猛暑の影響で泥が発酵してメタンガスが発生することもあるが、水深 40m では考えにくい」などの意見が出されています。

昨年の夏にも同じ場所で同様の現象が見られたとのことです。


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2010年8月30日月曜日

シナブン山が 410年ぶりに噴火 ― インドネシア

インドネシア・スマトラ島北部にあるシナブン山(地図)が 410年ぶりに噴火し、4万人近くが避難、2人が死亡する事態になっています:

上掲の 『ジャカルタ・グローブ』紙によると、死亡したのは 65歳と 54歳の男性。直接の死因は心臓発作とされていますが、呼吸器系の疾患を患っていたようです。

同紙はシナブン山近傍の住民の証言を載せています ―― 「日曜日の早朝、噴火と同時に大きな揺れがあった」「地震かと思って目を覚まし外を見ると、シナブンの山頂が明るく赤色に輝いていた」「シナブン山は数日前から火山灰を吹き上げていたが、地元の行政府は何の警告も出していなかった」。

シナブン山が最後に噴火したのは 1600年のことだとされています。一方、スミソニアン・インスティチューションが提供している火山データベースでは、噴火の記録は 1881年の 1回のみで、それも “UNCERTAIN(不確実)” と書かれています。

シナブン山の 410年ぶりの噴火に「刺激」されて、我が日本の富士山が 「俺も」 とばかりに 300年ぶりの噴火を始めることがありませんように。シナブン山は北スマトラ州の州都メダンから約 150km の距離にありますが、富士山は都心から約 100km のところにあります。

『富士山噴火 ハザードマップで読み解く「X デー」』(鎌田浩毅、講談社ブルーバックス、2008)には「300年の不気味な沈黙」という節があり、次のように書かれています:
数字で表すと、3200年以前の噴出率は 1000年あたり約 2立方キロメートルで、それ以後は 1000年あたり約 1立方キロメートルとなっている。

(中略)

富士山は 1707年以来、300年間もマグマを噴出していない。この間も地下ではずっと 1000年あたり約 1立方キロメートルのマグマが生産されているとすると、300年間では 0.3立方キロメートルのマグマが蓄積していることになる。

0.3立方キロメートルとは、雲仙普賢岳が 1991年から 4年半かけて出したマグマの 3倍ほどの量になる。もしこのマグマが一気に噴出すると、宝永噴火のような大噴火になる。逆に少しずつ出れば、小規模な噴火が何十回にも分かれて長く続くことになる。

たとえば、過去の富士山噴火で一回に出たマグマの量を調べてみると、0.3立方キロメートルのマグマを出した噴火は、最近 3000年間に 7回ほど起こっている。

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2010年8月28日土曜日

カトラ山で地震 ― アイスランド (続報 20)

(グラフはクリックすると拡大します)

カトラ山の地震数に目立った増加や傾向の変化はありません。ほとんどの地震はカルデラの西から北西にかけての領域(エイヤフィヤトラヨークトル氷河に近い側)で発生しています。

8月 26日に、エイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)の火口付近から大量の水蒸気が立ちのぼっているのが観測されました:

この現象に対してアイスランド気象庁は次のようにコメントしています:
火山活動が復活する兆候はない。水蒸気は氷河内の水が自然に蒸発したものである。地震計はいかなる火山活動も捉えていない。氷河からは常に水が蒸発していて、視界がよいときには(蒸発活動が)いつもより活発に見える。今月初め頃には、蒸発した水蒸気の雲が 3km も立ちのぼった。

以下は、8月 17日以降にカトラ山で発生した地震のリストです:
  • 8月17日 09:59:17 深さ 1.0 km M1.4
  • 8月17日 12:26:52 深さ 1.0 km M0.3
  • 8月17日 17:06:33 深さ 1.1 km M0.5
  • 8月17日 23:08:45 深さ 1.4 km M1.4
  • 8月18日 03:57:27 深さ 0.1 km M0.6
  • 8月18日 04:28:46 深さ 0.5 km M0.1
  • 8月18日 09:33:46 深さ 0.1 km M0.2 (カルデラ内)
  • 8月19日 10:23:18 深さ 11.7 km M0.8
  • 8月20日 01:08:12 深さ 0.1 km M0.9
  • 8月20日 01:18:32 深さ 1.0 km M1.5
  • 8月20日 06:50:33 深さ 0.1 km M0.8
  • 8月20日 09:02:55 深さ 14.9 km M1.0 (カルデラ内)
  • 8月20日 22:37:46 深さ 1.0 km M2.3
  • 8月22日 02:33:22 深さ 3.7 km M0.9
  • 8月22日 03:09:00 深さ 1.0 km M0.5
  • 8月22日 03:16:21 深さ 5.2 km M0.8 (カルデラ内)
  • 8月22日 12:31:23 深さ 7.6 km M0.7
  • 8月22日 23:29:21 深さ 0.1 km M1.6
  • 8月23日 05:48:24 深さ 0.1 km M1.6
  • 8月23日 06:25:02 深さ 0.2 km M0.8
  • 8月23日 07:34:20 深さ 5.2 km M0.4
  • 8月23日 11:09:00 深さ 10.6 km M1.5
  • 8月23日 12:37:38 深さ 4.4 km M1.2 (カルデラ内)
  • 8月23日 12:37:39 深さ 1.3 km M1.2
  • 8月23日 18:07:32 深さ 0.8 km M0.1 (カルデラ内)
  • 8月23日 20:14:40 深さ 9.6 km M0.9
  • 8月24日 02:10:00 深さ 1.0 km M1.2
  • 8月24日 04:59:36 深さ 3.8 km M0.5
  • 8月24日 22:24:08 深さ 1.0 km M0.6
  • 8月25日 03:32:19 深さ 1.0 km M1.2
  • 8月25日 03:32:20 深さ 1.1 km M1.6
  • 8月25日 09:52:46 深さ 5.2 km M0.8
  • 8月25日 11:45:03 深さ 0.7 km M0.1
  • 8月25日 15:49:33 深さ 3.0 km M0.7
  • 8月25日 16:41:28 深さ 1.0 km M0.8 (カルデラ内)
  • 8月26日 16:15:47 深さ 1.0 km M1.3 (カルデラ内)
  • 8月27日 04:51:14 深さ 1.1 km M1.3

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伊豆大島・三原山で火山性地震増加と山体膨張

8月 27日に発表された気象庁の 「週間火山概況」 によると、三原山で火山性地震が増加する傾向と山体の膨張を示す変動がみられるとのことです。以下にその部分の記述を引用します:
三原山周辺の浅いところを震源とする火山性地震が今年 7月以降、若干増加する傾向がみられ、今期間も同様に経過している。

GPS による連続観測では、地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な島全体の膨張傾向が継続している。短期的には 2009年秋頃から今年 5月にかけて収縮傾向がみられていたが、5月下旬から GPS 及び体積歪計で伸びの傾向がみられる。国土地理院の GPS 及び独立行政法人防災科学技術研究所の傾斜計においても、今年 5月頃から山体の膨張を示す変動がみられる。この様な山体の膨張は、2007年 3月から 7月にかけてもみられた。

噴気の状態等、表面現象に異常はみられない。

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吾妻山で硫黄燃焼の煙

8月 27日に発表された気象庁の 「週間火山概況」 によると、吾妻山で 23日に硫黄の燃焼とみられる煙が立ちのぼったとのことです。以下にその部分の記述を引用します:
23日 11時頃から、大穴火口の W-6 噴気孔の下方で、硫黄の燃焼と思われる煙が上がっているのを浄土平のカメラで確認した。翌 24日、福島県の防災ヘリコプターによる観測では、噴気孔下方からの煙が確認されており、硫黄の燃焼が続いていたと考えられる。同様の現象は、5月 6日及び 7月 9日にも確認されており、噴気活動はやや高い状態が続いている。

火山性地震は 8月以降少ない状況となっている。

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2010年8月27日金曜日

天然ガス田で爆発音をともなう地震

バングラデシュ北東部・シレット管区ハビガンジ県(バングラデシュの行政区画)にあるビビヤナ天然ガス田で、8月 22日(日)夕方から深夜にかけて数回の地震があり、最初の地震は爆発音をともなっていたとのことです:

同ガス田の権益の 98% を保有するシェブロン社(資料)が発表したもので、採掘施設等に被害はなかったとのことです。

上記記事を掲載している bdnews24.com の現地記者は、少なくとも 午後 4時 23分、4時 30分、9時 30分に地震があり、最初の地震では周辺住民が爆発音を聞いたと伝えています。

バングラデシュの気象庁は、同地区で地震は記録されてないとしています。しかし、同国の地震観測網はきわめて貧弱なので、観測にかからない地震があっても不思議ではありません。

爆発音の原因は調査中です。震源が浅い場合、地震にともなって爆発音が聞こえる場合があります。

1週間前の 8月 15日にはオーストラリア北東部・クイーンズランド州のヤラマン(地図)でも爆発音をともなう地震があったと報道されています:

震源近くの住民は爆発音について、「沖で石油タンカーが爆発したかと思った」「隣家でガス・オーブンが爆発したかと思った」「自動車が家の中に突っ込んできたようだった」と表現しています。

この地震についてジオサイエンス・オーストラリアは、マグニチュード 2.6、震源の深さ 0km と発表しています:

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X-37B が軌道変更

8月 9日、アメリカ空軍が開発を進めている無人スペース・プレーン X-37B が軌道を変更し、より高い軌道に移ったとのことです:

X-37B については軍事機密としてほとんど情報が公開されていませんが、今年 4月 22日の打ち上げ以降、世界中のアマチュア観測者や人工衛星追跡者によって軌道が割り出され、以下のようなビデオ映像も撮影されています:

また、X-37B が見える場所と時刻を計算するアプリケーションが iPhone やアンドロイド OS を搭載した携帯電話向けに公開されています:

以下のサイトでも 10日先までの予報をみることができます:

X-37B は、8月 9日の軌道変更後はしばらく「行方不明」となっていましたが、19日にアマチュアによって再び発見され、新しい軌道が明らかにされています。

軍事機密とはいうものの、かなりの部分がアマチュアによって解明されていると言ってよいでしょう。

今回の軌道変更によって X-37B の軌道変更能力の一端が明らかになったわけで、ロシアや中国など、X-37B への対抗手段を開発しようとしている国々にとっては貴重な情報となったと思われます。

なお、X-37B は兵器搭載を目的としたものではなく、偵察が主な任務であろうというのが、多くの専門家の一致した見方です。


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ホメオパシーを全面否定 ― 日本学術会議 (その 2)

朝日新聞は 7月 31日以降数回、ホメオパシーに関する記事を掲載しています。私は紙面で読んでいたのですが、以下に同紙のウェブサイトに掲載された記事を紹介します:

朝日新聞の 7月 31日付の記事には次のようなくだりがあります:
「本当にいいものだから、みんなに知って欲しいんですよ。(中略)病名のつかない症状やメンタルな問題まで対応できる自然療法なんです」

女優の沢尻エリカさんはホメオパシーについて、講談社のファッション誌「グラマラス」5月号のインタビューでそう語った。

これを見てすぐに思い出したのが、この女優の夫(元夫?)で “ハイパーメディア・クリエーター” の高城剛氏が執筆した  『サバイバル時代の海外旅行術』(光文社新書、2009)です。上記の新聞記事が掲載される少し前に読んでいたのですが、その中の 「旅の達人の七つ道具とパッキング術」 という章に  「 『ホメオパシー・レメディー』 で事前に準備」 という節が設けられ、3ページほどが費やされています。時差ボケ対策や旅先でのケガや病気に対する準備としてホメオパシー・レメディーを勧める内容です。以下にごく一部を引用しま す:
専門のホメオパシー薬局に行くと、トラベルキットが売られていて、いつも僕はそれを携帯しています。時差ボケ対策には、あらゆるものを試しましたが、ホメオパシーが一番僕にとっては効き目があります。

(中略)

また、ホメオパシーのトラベルキットには、風邪や怪我のためのものも入っているので、何か問題が起きたときには、まずはこれで対応するのがいいでしょう。インフルエンザから高熱、ケガまで、効果があります。

このホメオパシーに関する節に行き当たったときにはゲンナリしました。この節以外は、なにかと参考になる点が多い本なのですが …。

2人は離婚調停中(?)らしいですが、ことホメオパシーに関しては似たもの夫婦です。有名人の発言や著述は影響力が大きいので、困ったものです。


(続く)


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ホメオパシーを全面否定 ― 日本学術会議 (その 1)

8月 24日、日本学術会議ホメオパシーを全面的に否定する談話を発表しました。欧米に比べて日本の科学界は、ホメオパシーのような疑似科学的主張に対して知らぬ顔をしたり及び腰になったりしがちですが、よく言ってくれたと思います:

日本学術会議が発表した談話のオリジナルは以下にあります:

日本学術会議の談話に対して賛同の輪が広がっています。すでに日本医師会、日本医学会、日本獣医師会、日本獣医学会、日本薬理学会が記者会見を開くなどして賛同を表明しています。さらに、日本歯科医師会と日本歯科医学会も賛同を表明する予定であるとのことです:

ホメオパシーには効果がない、効果があるように見えるケースもプラシーボ効果(偽薬効果)の域を出ない ―― これが結論です。すでに科学的に決着がついていることです。


(続く)

2010年8月26日木曜日

ガレラス山が噴火 ― コロンビア

8月 25日、南米・コロンビアのガレラス山が噴火を始めました。同火山の警戒レベルは最高度の 「レッド」 に引き上げられました。今後さらに噴火が激化するとみられ、周辺住民約 7000人(報道によっては 8000人)に避難命令が出ています:

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2010年8月25日水曜日

野生のサルが大暴れ ― 静岡県三島市

静岡県三島市の郊外で野生のサルが暴れ、22日から 24日にかけての 3日間で住民 23人が負傷したとのことです:

あまりの暑さにサルもイライラしているのでしょうか。どうやら 2匹 いるようです。まだ捕まっていないとのことです。


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東海3県で謎の「爆発音」 (続報)

8月 8日付 「東海3県で謎の『爆発音』」 の続報です。その後、地震観測ネットワークに記録された振動を解析した結果が、防災科学技術研究所(NIED)、続いて京都大学防災研究所(DPRI)から発表されています:

NIED の発表では 「火球が 45度以上の高角度で落下し, 琵琶湖付近の 20~30km上空で大部分が燃えつきた」、DPRI の発表では 「物体は伊勢湾から琵琶湖の方向(西北西)に向かって進行し、落下の角度は約 45度、落下時刻は 17時 2分すぎと推定されます」、「複数の衝撃が記録されており、隕石が分割したりして複数落ちてきた可能性も考えられます」 となっており、おおむね一致しています。

一方、日本流星研究会で火球を担当している司馬康生氏は日本火球ネットワークの掲示板で、DPRI の発表について次のように述べています (8月 13日 21時36分):
そのまま受け入れにくい内容です。

図は、末端爆発などの単点起源に従う同心円状の同時曲線に描かれている反面、説明は「物体が音速を超えて飛行した際に、・・・」となっています。この説明通りなら、双曲線状の同時曲線になります。何らかの誤りがあるかもしれない、と感じます。

私の現時点の推察は、伊勢湾北部上空から北西に飛行という点ではこの図に近いですが、消滅点はもっと北ではないか、と考えています。

日本火球ネットワークの管理人・下田力氏も NIED と DPRI の発表について同ネットワークの掲示板で次のように述べています (8月19日 13時52分):
それぞれ地震計に記録された振動から経路の推定を行った結果が出されていますが、衝撃波の到達を捕らえたものか、爆発の振動を捕らえたものかの解釈が不明で、十分な結果だとは思っていません。

日本火球ネットワークにはこの火球を撮影した写真が大阪、京都、三重などから寄せられ、解析が進められているそうです。それらの写真をもとにして火球の飛行コースが精度よく割り出されれば、場合によっては落下した隕石の回収も実現するかも知れません。

以下は、この火球の残した隕石雲(流星痕)の写真です。三重県志摩市で撮影されたとのことです:

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2010年8月24日火曜日

木星で発光現象

日本時間 8月 21日午前 3時 22分頃、木星で発光現象がありました。発見したのは熊本県のアマチュア天文観測者です:

木星に衝突した (というよりは木星の大気圏に突入した)天体は、直径数百メートルから 1km 未満と推定されています。

今年 6月 3日にも、今回の現象ときわめてよく似た発光現象が撮影されています:

この 6月 3日の発光現象については、ハッブル宇宙望遠鏡を使った追跡調査がおこなわれ、以下のような結論が出されています:
… the flash was caused not by an exploding asteroid or comet, but instead by a fiery meteor that didn't leave a lasting mark on Jupiter's cloud tops.

この発光現象の閃光は、小惑星や彗星の爆発によるものではなく、木星の雲頂に持続的な痕跡を残さない火球によるものであった。

今回観測された発光現象も同じ原因によるものと考えられます。発光があった地点には痕跡が残っていないことが確認されています。

国立天文台天文情報センター長である渡部潤一准教授のブログに、今回の発光現象を観測した機器類の詳細が記載されています:

1994年 7月におきたシューメーカー・レヴィ第 9彗星の木星突入は 「人類が初めて目撃した地球大気圏外での天体の衝突」とされていますが、その後、木星に何らかの天体が衝突したとみられる現象が何度も観測されています。上に紹介した今年 6月 3日の発光現象のほか、昨年 7月 19日にも何らかの天体が衝突した痕跡とみられる黒斑が木星面に見つかっています(このブログの 09年8月5日付「木星の黒斑、金星の白斑」を参照してください)。

特にこの数年、上記のような現象の発生頻度が上がってきているように私は感じています。観測機器の性能が向上したことや、価格が下がって普及したことによって発見される確率が高くなったことが主な理由だろうと思いますが、ひょっとしたら、実際に太陽系内で天体衝突が発生する率が上がってきているのではないか、との疑念もあります。

太陽系には、天体衝突の頻度が高まる時期が周期的にやってくるという考えがいくつかあります。たとえば、生物の大量絶滅の周期性を説明するために提案されたネメシス仮説。これは、太陽の未発見の伴星(暗い褐色矮星または赤色矮星)がオールトの雲を 2700万年周期で撹乱して莫大な量の岩や氷を太陽系内部に送り込む(もちろん太陽系外にはじき飛ばされるものもある)という説です。未発見の小惑星(準惑星?)がカイパーベルトを刺激して、やはり大量の岩や氷を太陽系内に向かわせるという説もあるようです。また、銀河系内で太陽は銀河面を上下に振動しながら回っているため、オールトの雲に周期的に潮汐力が働き、大量の彗星が発生するとの考えもあります。

以上は数千万年という長い周期の話ですが、不定期にもっと短い間隔で天体衝突多発の時期が訪れるということがあるかも知れません。たとえば、太陽系内のどこかで人類が気づかないうちに小天体の衝突や玉突きが発生して、複数の小天体の軌道が変わったり、衝突の結果生じた破片群が太陽系の内側に向かって広がったり、というシナリオです。今は木星付近をその前線が通過しており、破片の多くが木星の強大な重力に捉えられて発光現象を起こしているが、前線は徐々に火星や地球などの内惑星に近づきつつある ……。話がだいぶ SF的な方向にそれてしまいました。

今回木星面で発見されたような衝突が地球で起きたとしたら、人類絶滅までは行かないまでも大惨事になることは確実です。木星の大気圏は分厚く密度も高いのに対して、地球のそれは薄く密度も低い ―― 木星が爆発物処理班が着用するボム・スーツ(耐爆スーツ)をまとっているとすれば、地球は薄いネグリジェをはおっているにすぎないのです。

おりしも、地球に衝突する可能性のある小惑星や彗星を早期に発見するためのシステム ATLAS (Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System = 小惑星の地球衝突に対する最終警報システム)が科学者のグループによって提案されています:

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2010年8月23日月曜日

駐車場に噴気孔 ― イエローストーン

まず以下の写真をご覧ください:

この写真は、イエローストーン・カルデラ内にある駐車場で撮影されたものです。駐車場の舗装を突き破って高温のガスが噴出した跡だそうです。

このようなことは珍しいことではないらしく、私の知る限りではまったく報道されませんでした。日本の場合、火山周辺でこのようなことが起きたら、かなりセンセーショナルに報道されるのではないかと思います。

上記の写真は、地質学者 Chris Rowan 氏のブログ記事(以下)に掲載されていたものです:

このブログ記事には以下のような興味深い図も掲載されています:

この図は、イエローストーン・カルデラが 1650万年前から東に向かって移動を続け、約 200万年前に現在の位置に到達するまでの軌跡を示したものです。イエローストーン・ホットスポットの上を、北米大陸が西に向かって移動したためにこのような軌跡が残されました。ハワイのホットスポットの上を太平洋プレートが移動することによってハワイ諸島やそれに連なる天皇海山列が形成されたのと同じメカニズムです。


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2010年8月21日土曜日

草津温泉に変化? ― 群馬県草津町

草津温泉に変化が起きているのでしょうか?:

記事の主題は、高温の湯がたまった『鬼の茶釜』に観光客が転落して火傷を負ったことに対して、町長が自らに減給処分を科したという内容です。

私が気になったのは、火傷事故の後、安全対策として『鬼の茶釜』に温度の低い別の源泉を引く検討をしていたところ、「先月ごろからぬるい湯が自然にわき出し始めた」 とある部分です。地下で何らかの変化が起きているのかも知れません。


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2010年8月20日金曜日

オレンジ色に染まる空 ― 福岡県久留米市

8月 18日の夕方、久留米市の上空がオレンジ色に染まり、市民を驚かせたとのことです:

記事に書かれているように単なる気象現象だと思います。

ところで、記事のタイトルにある「何ショット?」は何なのでしょうか。おそらく、「何しよると?(何をしているのか?)」という福岡の方言を別の言葉にかけて洒落たつもりなのでしょうが、意味不明です。


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2010年8月19日木曜日

サモア津波は複数の巨大地震が原因 (その 1)

昨年 9月末にサモア諸島に津波をもたらし 200人近い死者を出した M8.1 の大地震(USGS資料)は、トンガ・ケルマディック海溝から西に向かってオーストラリア・プレートの下に沈みんでいる太平洋プレートの内部で起きた正断層型の地震とされてきました。このブログの当時の記事 「サモア諸島南方で M8.3」 にも以下のように書いてあります:
USGS が発表している震源位置が正しいとすると、今回の大地震は、トンガ・ケルマディック海溝の屈曲部で発生しました。同海溝は、ニュージーランドの東海岸から北北東に向かって直線的に伸びていますが、サモア諸島の南方に達したところで大きく西方向に曲がっています。この屈曲部の東側で、太平洋プレートに生じた正断層が今回の地震の原因と考えられます。

しかし、サモアなどを襲った津波のパターンがこの地震ではうまく説明できないことなどから、さまざまな研究グループが解明に取り組んできました。このほど、2つの研究チームが異なるデータと異なる解析手法を使って得た研究成果がイギリスの科学誌『Nature』 の最新号に掲載されることになりました。2つのチームの結論は大筋で一致するものです:

記事をまとめると次のようになります:
カリフォルニア大のソーン・レイ教授やカリフォルニア工科大の金森博雄名誉教授らの研究チームは、地震波を詳細に解析。最初の M8.1 の地震は正断層型で、太平洋プレート内部が裂けるように発生。その後約 3分半以内に近くのプレート境界(オーストラリア・プレートと太平洋プレートの境界)が滑る形で M7.8 の逆断層型地震が 2回起きたと推定。

ニュージーランドを中心とする研究チームは、GPS(衛星利用測位システム)付きブイによる海面水位の測定値と計算モデルを比較。プレート境界でゆっくりとした逆断層型の地震(M8.0)が先に発生し、数分後に太平洋プレート内地震(M7.9)が起きたと推測。

以下は、カリフォルニア大学のチームによる説明図と地図です:

以下は、ニュージーランドを中心とするチームによる説明図+地図です:

(続く)


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2010年8月18日水曜日

カトラ山で地震 ― アイスランド (続報 19)

(グラフはクリックすると拡大します)

カトラ山の地震数は少ない状態で推移しています。ほとんどの地震はカルデラの西から北西にかけての領域(エイヤフィヤトラヨークトル氷河に近い側)で発生しています。

一方、エイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)では、地震がほとんど発生しなくなりました。噴火は終息したとの見方がでていますが、アイスランドの当局はまだ公式の終息宣言を出していません:

以下は、8月 9日以降にカトラ山で発生した地震のリストです:
  • 8月09日 03:12:49 深さ 5.6 km M1.6
  • 8月09日 03:14:52 深さ 4.7 km M0.5
  • 8月09日 03:25:03 深さ 5.7 km M1.6 (カルデラ内)
  • 8月09日 08:01:33 深さ 2.5 km M0.4
  • 8月09日 10:24:54 深さ 0.1 km M0.6
  • 8月09日 13:03:06 深さ 1.0 km M1.4
  • 8月09日 17:48:23 深さ 1.0 km M0.8
  • 8月10日 08:24:56 深さ 1.0 km M0.3
  • 8月11日 00:09:50 深さ 0.1 km M1.4
  • 8月12日 07:16:10 深さ 11.0 km M0.5
  • 8月12日 16:01:23 深さ 0.1 km M1.1
  • 8月13日 02:01:29 深さ 0.1 km M2.3
  • 8月16日 05:58:14 深さ 1.1 km M0.9
  • 8月16日 17:07:02 深さ 1.0 km M0.9
  • 8月16日 17:10:09 深さ 1.0 km M1.1
  • 8月16日 17:27:55 深さ 1.0 km M1.0
  • 8月17日 09:59:17 深さ 1.0 km M1.4
  • 8月17日 12:26:52 深さ 1.0 km M0.3

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2010年8月17日火曜日

液化エタンの湖 ― タイタン

土星探査機カッシーニの観測データによって、土星の衛星タイタンの表面には液体のエタンをたたえた湖があることが確認されています。以下は、最新のデータにもとづいて描かれたタイタンの湖の想像図です:

図でわかるようにタイタンには大気があり、いつもオレンジ色の靄のようなものがかかっています。そのため、可視光線では地表の様子が見えません。カッシーニ探査機はレーダーを使って地表の様子を調査しています。

エタンは、都市ガスに含まれるメタン、都市ガスが利用できないところで使われるプロパン、ガスライターに使われるブタンなどと同じグループに属する有機化合物です。

地球以外で、表面に大量の液体が存在することがわかっているのはタイタンだけです。残念ながら、エタンの湖の中で生命が進化する可能性はないと言われています。

この湖の畔に人類が立つ日がいつかきてほしいものです。


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2010年8月15日日曜日

災害、災害、災害、……

このブログでこれまで何度も紹介している『ボストン・グローブ』紙の “The Big Picture” から、最近の自然災害の写真特集を集めました:

ロシアの山林火災

パキスタンの豪雨洪水

中国の土石流

パキスタンで火山噴火? (続報 5)

間があいてしまったので、まず 7月 21日付「パキスタンで火山噴火? (続報 2)」の一部を再掲します:
1月 27日、バローチスターン州ジアーラト渓谷にある山岳地帯に近いサリ(Sari near a mountain in Ziarat Valley, Balochistan、注)で地震にともなって裂け目から溶岩、水蒸気、火花が噴出した。地震のマグニチュードは 3.9、震源の深さは 60km であった。

(中略)

溶岩の流出は小規模で、裂け目の周囲にとどまっている。溶岩は、小さなスコリア丘と 4つの裂け目から噴出していた。4つの裂け目はジアーラト近くのサリにある Tor Zawar山にあった。

溶岩は上部マントルから上昇してきたか、地殻内部に以前からあった火山岩がリサイクルされたものと考えられるが、地球化学的なデータからは後者であることが示された。

上記の現象が火山活動の範疇に入るのか否か、議論があると思います。仮にこれが火山活動だとしたら、これまで言われている火山のタイプのどれに属するのでしょうか。火山のタイプとは以下の 4つです:
  1. 島弧型火山 ― プレートの沈み込み帯の陸側にできる火山 (富士山、阿蘇山、桜島、セントヘレンズ山、タール山、エトナ山、チャイテン山など)
  2. 海嶺型火山 ― プレートが形成される中央海嶺などにある火山 (東太平洋中央海膨、大西洋中央海嶺、東アフリカ大地溝帯、アイスランドの火山など)
  3. ホットスポット型火山 ― マントル深部に生じる高温のマントル上昇流がマグマを形成してできる火山 (ハワイ諸島、天皇海山列、イエローストーンなど); なお、これまで不動と考えられていたホットスポットも移動することについては、このブログの 6月 7日付記事「連続噴火 10000日 ― ハワイ・キラウエア山 (その 2)」を参照してください。
  4. プチスポット型火山 ― 海洋プレートの沈み込み部分でプレートが曲げられる時、プレート内部に割れ目ができ、その割れ目を通ってプレート直下に存在するマグマが海底に染み出すことによってできる火山 (北西太平洋(三陸沖・鹿島沖)、日本海溝)

4つのタイプのうち、プチスポット型火山は 2006年に日本人研究者によって報告されたもので、まだ知名度が高くありません。詳しくは以下を参照してください:

1~3 のタイプの火山では、マグマの起源はマントル内部とされています。4 のタイプでは、「プレート下に広がるアセノスフェアから少量のマグマが噴出したもの」、「太平洋プレートの下のマントルから少量のマグマが浸み出すことにより噴火したもの」とされています。

一方、パキスタン地質調査所は、噴出した溶岩について「地殻内部に以前からあった火山岩がリサイクルされた」と結論づけています。これは、1~4 のタイプとは異なるメカニズムで溶岩が吹き出したということです。また、溶岩の噴出があった場所も 1~4 の類型には当てはまりません。したがって、第 5 のタイプの火山と言ってもよいのかも知れません。

なお上にリンクを張った 「太平洋プレートの屈曲に伴う新しいタイプの火山の発見」 には以下のような興味深い記述があります:
プレートテクトニクス説ではアセノスフェアは海洋プレートの下に地球的規模で広がる部分融解帯とされて来ましたが、最近の学説ではアセノスフェアが部分融解状態にあることが疑問視されています。既知の3つのタイプの火山のうち、今回発見された火山と同様にプレート内の火山活動であるホットスポットでは、マントルが地球深部からの上昇に伴い減圧されることによってマントル物質が融解しマグマを発生すると考えられ、1ヶ所に大規模な火山が形成されます。しかし、今回発見された火山では、太平洋プレートの屈曲部の幅400kmにわたり小規模な火山群が形成されています。これは、ホットスポットとは異なり、マントル上昇流は伴わず太平洋プレートが屈曲することによってできた亀裂に沿って、アセノスフェアから少量のマグマが浸み出すことにより形成された新しいタイプの火山であると考えられます。これは、アセノスフェアが部分融解していることを示すものとして極めて注目されます。

アセノスフェアの部分融解については、このブログの 「プレートの『底』確認」(09年5月1日)という記事を参照してください。


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2010年8月14日土曜日

「神奇的地震直線」 ― 中国

過去に中国で発生した大地震の震央が直線上に並んでいるということが話題になっています。この直線は中国のネットユーザーが見いだしたもので、「神奇的地震直線」 と呼ばれています:

上の記事に載っている地図は拡大しても見づらいので、別のソースを以下にリンクします:

専門家は、「中国大陸には確かに地殻変動による地震帯が存在するものの、指摘されている直線には科学的根拠がない」と語っています。つまり、偶然の所産ということです。

「神奇的地震直線」の中央部 3分の 1 ほどは、揚子江プレートとユーラシア・プレートの境界と並走しています。地図の投影法が違っているので精確とは言えませんが、以下のプレート図に 「神奇的地震直線」 を黒色で描き込んでみました:

Original Tectonic Plate Map Credit: Eric Gaba -- Wikimedia Commons user: Sting

このブログの 8月 13日付記事「大地震の連続発生 ― 太平洋南西部」でも、7月に起きた 9つの大地震の震央がほぼ直線状に並んでいることを紹介しました。こういうことは探せば割とあることなのかも知れません。


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♪ 新座は今日も雨だった

東京アメッシュ」 について私も同じ疑問を持っていたのですが、実際に現地に行って調べた方がおられました:

「グラウンドクラッタ」と呼ばれる現象が原因とのことです。


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2010年8月13日金曜日

大地震の連続発生 ― 太平洋南西部

7月 18日から 24日にかけて、太平洋南西部で 9つの大きな地震が相次いで発生しました。そのうちの 4つはマグニチュード 7クラスでした。この連続地震について、ある地質学者がブログに解説記事を載せているので紹介します:

地図 1 (上)は、9つの大地震が発生した地域のプレート境界を示したものです。マイクロプレートが複雑に分布し、相互に作用し合っています。黒い矢印はプレートの移動方向で、それにつけられた数字は 1年あたりの移動量をミリメートル単位で現したものです。

地図 2 (下)は、相次いで発生した 9つの大地震の震央を示しています。東はバヌアツから西はフィリピンのモロ湾まで、震央がほぼ直線状に並んでいることに驚かされます。図中の番号 (1~9) は地震の発生順序を示すとともに、以下の説明に出てくる震源球の番号とも一致しています。

地図 3 は、最初に 3つの大地震が発生したニューブリテン島の拡大図です。

震源球 1震源球 2震源球 3 はニューブリテン島で発生した 3つの大地震の発震メカニズムを示しています。

上記 3つの震源球についての解説を以下にテキトー訳します:
震源が非常に接近していることを考慮すると、これら 3つの地震は前震-本震-余震の関係にあるのかも知れない(その他にも多くの小さな余震が発生している)。2番目と 3番目の震源球は、沈み込み帯あるいはその近傍で圧縮する力が働いたためにこれらの地震が発生したとする見方と一致する。一方、1番目の震源球は、これらとは直交する方向の圧縮力が働いたことを示している。これはいささか奇妙である。この地震の原因となった岩盤の破断が、沈み込んでいるプレートの十分に深いところで発生し、横方向の圧縮力が作用したためかも知れない。インドネシアで発生した類似の地震についての昨年 9月のブログ記事を参照すれば、これはさほど奇妙なことではないとも考えられる。

この 3つの大地震の後、今度はインドネシアとバヌアツで大きな地震が発生します。これについては以下のように書かれています:
ニューブリテン島から東と西にそれぞれ数百キロ離れた場所で 2つの大きな地震が発生した。これらの地震についてはいつもの断り書きを記しておく ―― すでに破断の瀬戸際にある断層に対して近くで発生した大地震が影響を与える可能性はあるが、地震相互間のそのような直接的な関連を証明することはきわめて困難である。

震源球 4 はインドネシア・ハルマヘラ島の北方で発生した地震の発震メカニズムを示しています。これについてブログには次のように書かれています:
東西方向の圧縮力が働いているが、横ずれ成分も大きい。この横ずれ成分は、この地震が発生した沈み込み帯 (フィリピン海プレートが西に向かってスンダ・プレートの下に沈み込んでいる) のすぐ南でトランスフォーム断層が分岐していることに由来しているのだろう。

震源球 5 はバヌアツで発生した地震の発震メカニズムを示しています。ブログには 「東西方向の圧縮力が働いたことが示されており、(バヌアツを含む)島弧の下でオーストラリア・プレートが東向きに沈み込んでいることとの関連は明らかだ」 と書かれています。

地図 4 は、7月 23日から 24日にかけて、フィリピンのモロ湾で発生したマグニチュード 7 クラス 3つを含む 4つの深発大地震の震央を示しています。

震源球 6震源球 7震源球 8震源球 9 は、上記 4つの深発大地震の発震メカニズムを示しています。ブログには以下のように書かれています:
4つの発震メカニズムはすべて、北西-南東方向の伸張応力が働いたことを示している。ハルマヘラ島の地震(震源球 4)と同じく、これら一連の地震はフィリピン海プレートが西向きにスンダ・プレートの下に沈み込んでいることと関係しており、沈み込んだフィリピン海プレートのスラブの深いところで発生した。伸張応力は、スラブがマントルの中に沈み込んでいくことにともなう下向きの張力の結果だろう。最初の地震(震源球 6)が、それよりも浅いところと深いところで後続の地震を誘発したことは明らかだ。

以上が 「Friday(ish) Focal Mechanisms」 というブログ記事の概略です。

上記 9つの地震とはしばらく間が開きましたが、8月 10日(火)にバヌアツで M7.3 の大地震が起こり、若干の津波が発生しました。上記の震源球 5 の地震から少し南にずれた場所が震源です。深さは 35kmで、震源球 5 の地震とほぼ同じです。以下は USGS の資料です:

まだまだ「東はバヌアツから西はフィリピンのモロ湾まで」の直線状の地域から目が離せません。


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グーグル・ストリートビューに少女の死体?

イギリスのウースター(Worcester、地図)の街をグーグル・ストリートビューで散策すると、道ばたに少女の死体が …… の真相が判明しました。写っていたのは 10歳の女の子でした:

ストリートビューの撮影をしていたグーグルのスタッフは、仕事に集中していたために気づかずそのまま通り過ぎた …… らしいです。

少女の母親のコメントがおもしろいです。“I just wish” 以下は仮定法過去の例文として受験生にお薦めです:
I understand how some people might have thought the picture looked like a dead body - I just wish she was that quiet all the time.

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2010年8月12日木曜日

中国・福建省で大地震のうわさ

8月 13日(金)に中国・福建省の廈門(アモイ、シアムン、Xiamen、地図)、泉州(チュワンチョウ、Quanzhou、地図)、章州(「章」は「さんずい」に 「章」、チャンチョウ、Zhangzhou、地図)などで壊滅的な大地震が発生するとのうわさが流れています。改革開放の進んだ都市部ということで、まともに信じている人は少ないようですが、出稼ぎ労働者の中にはリスクを避けるために出身地に帰る動きもあるとのことです:

当然のことですが、廈門地震局は声明を発表して大地震のうわさを否定しています。


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台風と関東大震災

現在、台風 4号が能登半島付近を東進中ですが、この台風の進路図を見て思い出したのが以下の天気図です:

この天気図は、鹿島建設株式会社のサイトにある 「特集:関東大震災を知る study1 史上ワースト1の自然災害」 のページに載っているものです。以下に一部引用します:
東京中心部が揺れはじめたのは11時58分44秒ごろ。昼食時の火の使用と重なって,倒れた家屋から各地で出火し,東京と横浜は大火災に見舞われることになる。

大火災の拡大は,当日の気象状況にも原因があった。図1に示すように,能登半島近くに弱い台風があり,地震発生時刻には関東地方でも相当の強風が吹いていたのである。

台風と大地震のダブル・パンチに襲われる確率は低いのでしょうが、最近の自然災害の激化と多発傾向を見ていると、今後はそんなことも言ってられないのではないかと、少し不安になります。


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2010年8月10日火曜日

カトラ山で地震 ― アイスランド (続報 18)

number of earthquakes under Katla volcano(グラフはクリックすると拡大します)

その後の地震数の推移です。8月 4日(現地時間)に 14回の地震を記録しました。これは 7月 11日に記録したこれまでの最大値と同じ回数です。

以下は、「続報 17」以降にカトラ山で発生した地震のリストです:
  • 8月02日 14:00:59 深さ 1.0 km M0.4
  • 8月02日 18:16:49 深さ 1.7 km M0.9
  • 8月03日 08:58:30 深さ 1.0 km M1.0 (カルデラ内)
  • 8月03日 13:58:24 深さ 1.0 km M1.0 (カルデラ内)
  • 8月03日 15:41:37 深さ 2.3 km M0.8
  • 8月04日 02:55:40 深さ 1.6 km M0.7
  • 8月04日 04:43:22 深さ 1.5 km M0.3
  • 8月04日 12:02:08 深さ 1.8 km M0.6
  • 8月04日 16:03:56 深さ 7.8 km M0.8
  • 8月04日 16:03:57 深さ 8.5 km M0.9
  • 8月04日 16:06:57 深さ 8.1 km M0.8
  • 8月04日 16:07:27 深さ 10.0 km M1.5
  • 8月04日 16:10:19 深さ 6.9 km M1.3
  • 8月04日 16:10:20 深さ 9.5 km M0.8
  • 8月04日 16:11:13 深さ 0.3 km M0.3
  • 8月04日 16:24:06 深さ 7.8 km M0.6
  • 8月04日 18:28:57 深さ 1.1 km M2.0
  • 8月04日 18:28:59 深さ 1.1 km M0.5
  • 8月04日 23:55:04 深さ 2.8 km M0.7 (カルデラ内)
  • 8月05日 00:30:18 深さ 10.3 km M0.9
  • 8月05日 04:49:48 深さ 1.0 km M1.4
  • 8月05日 04:50:23 深さ 1.0 km M1.3
  • 8月05日 06:13:39 深さ 6.0 km M0.3
  • 8月06日 15:01:05 深さ 7.0 km M0.4
  • 8月07日 07:16:31 深さ 2.1 km M0.7
  • 8月07日 07:17:32 深さ 1.3 km M-0.1?
  • 8月07日 08:25:35 深さ 1.9 km M0.5 (カルデラ内)
  • 8月07日 12:31:08 深さ 4.9 km M1.1
  • 8月08日 03:11:55 深さ 1.0 km M1.3
  • 8月08日 03:54:56 深さ 0.1 km M1.0
  • 8月08日 05:01:12 深さ 1.9 km M0.4
  • 8月08日 15:16:15 深さ 0.1 km M0.6
  • 8月08日 16:09:25 深さ 1.0 km M0.3
  • 8月08日 17:31:11 深さ 1.0 km M0.5
  • 8月08日 22:20:12 深さ 4.6 km M0.2
  • 8月09日 03:12:49 深さ 5.6 km M1.7
  • 8月09日 03:14:52 深さ 4.7 km M0.5
  • 8月09日 03:25:03 深さ 5.7 km M1.6 (カルデラ内)
  • 8月09日 08:01:33 深さ 2.5 km M1.1
  • 8月09日 13:03:06 深さ 1.0 km M1.4

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2010年8月9日月曜日

河口にエイの大群 ― 和歌山県串本町

前の投稿 「エイが川を遡上 ― 徳島県鳴門市」 に関連して、少し古い記事(『紀伊民報』 7月 18日付)ですがもう一つエイの話題を紹介します:

前の記事は徳島県ですが、こちらは紀伊水道を挟んで対岸(と言ってもかなり南ですが)の和歌山県串本町(地図)です。7月上旬から同町を流れる古座川の河口に 100匹以上のエイが集まっているとのことです。こちらもアカエイのようです。記事には、繁殖行動ではないかとの専門家の意見が付されています。

串本町は南海トラフを眼前に望む位置にあります。


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エイが川を遡上 ― 徳島県鳴門市

8月 6日、徳島県鳴門市(地図)の中心部を流れる撫養川でアカエイとみられるエイが泳いでいるのが見つかりました:

鳴門市は東西に走る中央構造線沿いの都市です。

記事には 「アカエイは徳島市の新町川にも群れで姿を見せることがある」 とも書かれており、それほど珍しい現象ではないのかも知れません。

2010年8月8日日曜日

大地震の前に「涙」を流した木

インドの 『デカン・クロニクル』 紙のサイトに掲載されている記事です:

記事の主旨は、自然がわれわれの前に絶えず示してくれている兆しやアドバイスを受け入れ、理解するように努めようと読者にうったえるものです。そのために宗教的なものも含めてさまざまな事例が紹介されているのですが、その中に執筆者自身がグジャラート大地震(注)の前に見聞きした現象があります。以下にその部分をテキトー訳します:
2001年、私たちはデリーに住んでいた。わが家から通りを一つ隔てた所に生えていたインドセンダンの木(neem tree)がおびただしい量の「涙」を流し始めた。この「涙」というのは甘いミルクのような乳白色の樹液で、幹が二股に分かれたところから涌きだしていた。木のまわりには人だかりができ、その液体を瓶などに受けて持ち帰った。これから何か良くないことが起こることを知らせようとして、木は涙を流しているのだと人びとはうわさし合った。何人もの植物学者が説明を試みたが、何が起きているのかはっきりしたことは誰にもわからなかった。警察官が一人、木を保護するために配置された。その数日後、グジャラート州で発生した巨大地震にインドは揺さぶられた。数千人が命を失った。インドセンダンの木は泣くのをやめた。

(注) 2001年 1月 26日発生。マグニチュード 7.6。震源はインド西部のグジャラート州(地図)。インド西部大地震とも呼ばれる。米国地質調査所(USGS)の資料によれば、死者少なくとも 20,085人、負傷者 166,836人、約 339,000棟の建物が倒壊、約 783,000棟の建物に被害。揺れは、インド北部、パキスタンのほぼ全域、バングラデシュ、ネパール西部に及んだ。

寒桜が開花、トウモロコシに異変 ― 埼玉県

冬桜ともよばれ、冬の季語にもなっている寒桜が、この猛暑の中、埼玉県さいたま市で咲いているとのことです:

記事に掲載されている写真を見る限りでは寒桜とは花の色や形状が違うように思います。しかし、そうだとしても、「毎年、11月ごろから咲き始め、4月には見ごろを終える」という花がこの時期に咲くのは異常です。

同じ埼玉県の川越市では、トウモロコシの一つの節に複数の実が付くという現象が起きています:

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東海3県で謎の「爆発音」

8月 7日午後 5時過ぎ、東海地方で原因不明の「爆発音」 が聞こえ、警察や消防への通報が相次ぎました:

日本火球ネットワークの掲示板には、ほぼ同じ時刻に火球を目撃したとの報告が多数寄せられています:

上記報告のすべてが同一の火球とは断定できませんが、目撃された場所は、長野県、富山県、三重県、滋賀県、京都府、奈良県、大阪府、鳥取県など広範囲にわたっています。長野県茅野市からは、火球が飛行経路の途中で爆発を起こしたとの報告が寄せられています。飛行機雲状の流星痕(隕石雲)も目撃されています。中には小惑星探査機「はやぶさ」の落下のようだったと形容する報告もあります。

8月 13日に出現の極大を迎えるペルセウス座γ流星群は光度の明るい有痕流星が多く、また火球の出現頻度も比較的高いので、初めはこの群に属する火球かと思いましたが、飛行方向がおおむね南から北ということで、違うようです。

謎の「爆発音」の原因がこの火球とは限りませんが、可能性はかなりあると思います。


【 追記 2010-08-10 】
『朝日新聞』のニュースサイトが 8月 9日 23時 01分付で以下のような記事を掲載しています:
国立天文台は、流星の起こしたソニックブーム、あるいは流星そのものの爆発との見方を強めている、また、草の根の日本流星研究会も同様に流星が原因である可能性が高いとみている、とのことです。
【 追記 終わり 】


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2010年8月7日土曜日

吾妻山で火山性微動

気象庁が 8月 6日に発表した 「平成22年 No.32 週間火山概況」 によると、吾妻山(地図)で 8月 1日に火山性微動が観測されたとのことです。以下にその部分を引用します:
1日 15時 43分から約4分間にわたって火山性微動を観測した(火山性微動を観測したのは5月 27日以来)。火山性微動の発生に際し、地震回数に変化はなく、噴気は雲のため確認できなかった。

噴気活動はやや高まった状態が続いている。

ただちに火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められないが、火口内では噴気、火山ガスの噴出等がみられるので警戒が必要である。

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火山噴火で 4人死亡 ― インドネシア

8月 6日(金)から7日(土)にかけての真夜中、スラウェシ島(セレベス島)の北にあるシアウ島のカランゲタン火山(Karangetang、地図)が噴火し、少なくとも 4人の死者と数名の重傷者が出ています:

記事によると、火山で突然爆発が起き、溶岩流や熱雲(火砕流)が山腹を流れ下ったため、住民は避難する余裕がなかった、また、当時降っていた豪雨の影響で山頂部の溶岩ドームが崩壊し、摂氏 600度の高温ガスの雲が発生したとのことです。

記事では、カランゲタン山が最後に噴火したのは 2006年 7月となっていますが、同山はそれ以後も VEI=1 あるいは 2 程度の小噴火を繰り返していました。


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2010年8月6日金曜日

スピリット応答せず

2004年 1月に火星に着陸して以来、設計寿命の 90日を大幅に超えてさまざまな科学的成果をあげてきた双子の火星探査車スピリットとオポチュニティですが、スピリットが厳しい状況に陥っています:

上記 NASA のプレス・リリースによると、3月 22日以来スピリットと地球との交信が途絶しているとのことです。

スピリットは、昨年 5月に「トロイ」と名付けられた軟弱な砂地に車輪がスタックして動けなくなりました。そして、そのままの状態でスピリットにとって 4度目の火星の冬を迎えています。この冬は 5月から 11月まで続きます。

冬の間は太陽の高度が低く、スピリットの車体に水平に取り付けられた太陽電池パネルに太陽光が十分にあたりません。スピリットには太陽電池パネルの角度を変える機能がないので、太陽電池パネルを高度の低い冬の太陽に向けるには、スピリットの車体を太陽に向けて傾ける必要があります。これまでの 3度の冬では、スピリットは丘陵地の斜面に移動して車体を傾け、太陽電池パネルが太陽に向き十分な発電が行えるようにしてきました。このようにして確保した電力を使ってヒーターを稼働させ、内部の電子回路や装置を冬の寒さから守ってきたのです。

しかし、今度の冬は状況が違います。平地にある「トロイ」という砂地から動けないため、車体を太陽に向かって傾けることができません。スピリットは電力不足に陥り「冬眠」状態になっているとみられています。ヒーターが使えないため、スピリットの内部温度は -55℃ まで低下していると見積もられています。この低温によって内部の電子回路や装置がダメージを受ける懸念があります。

スピリットには電力が回復したときに「冬眠」状態から復帰する機能が組み込まれているとのことです。NASA ではスピリットの電力が回復するのは太陽の高度が徐々に高くなってくる 9月末から 10月半ばごろではないかと考えています。さらに火星の夏至は来年 3月であるので、それまでにスピリットが目を覚まさないようであればスピリットとの交信回復は絶望的だ、と NASA の責任者は語っています。


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2010年8月5日木曜日

64年後の蘇生 ― バミューダ海域

とても信じられない話ですが、場所が場所だけに「もしや」と思わせられます:

"1945-1998"

1945年 7月 16日のトリニティ実験(人類最初の核爆発)、8月 6日の広島、8月 9日の長崎、…… それ以降 1998年までの核爆発を時間を追って地図上にプロットしていく動画です。全体で 14分 24秒ほどあります。12分過ぎあたりから国別の核爆発再現になります。旧ソビエト連邦が自国のいたる所で核実験を行っていた様には驚かされます:

1998年までですので、北朝鮮の核実験は入っていません。また、南アフリカ共和国やイスラエルの核実験かも知れないと疑われた爆発も含まれていません。

タール山の噴火警戒レベル引き下げ ― フィリピン

Phivolcs(フィリピン火山学・地震学研究所; 火山噴火や地震について日本の気象庁のような役割を担っている)が 8月 2日付でタール山(地図)の噴火警戒レベルを「2」 から 「1」 に引き下げました:

警戒レベルを下げるにあたって、Phivolcs は 4つの理由を挙げています:
  1. 1日あたりの火山性地震の数が減少し、7月の第 2週以降は通常レベルにもどっている。過去 2週間は 1日あたり 0 ~ 5回の地震が発生しているが、7月 2日以降は有感地震が発生していない。
  2. 中央火口の北側および北東側と Daang Kastila での熱水や水蒸気の活動は弱まっている。中央火口にある火口湖の水温の上昇が止まり、6月 8日以降、33℃から 34℃の範囲に落ち着いている。
  3. Daang Kastila と中央火口で連続観測している地温と全磁力の観測では、大きな変化が起きていない。
  4. 北東、南東、南西の山麓で7月 13日から 21日にかけて実施した精密水準測量では、ごくわずかな山体の膨張しか検出されなかった。これは、深部からの新しいマグマの供給がないことを示している。

タール山の警戒レベルが 「2」 に引き上げられたのは 6月 8日のことです。そのときは、Phivolcs の所長も自信満々で、すぐにでもタール山が噴火しそうな雰囲気があったのですが、すぐに「失速」状態となっていました。これまで何度か、Phivolcs が警戒レベルの引き下げを検討しているという報道が流れましたが、けっきょく 8月に入ってからの引き下げとなりました。なんだか、梅雨明け宣言を出し損ねたときの気象庁のようです。

ところで、上記理由の 「3」 で「全磁力の観測」という文言が出てきましたが、誤解されている向きもあるので補足します。火山噴火が迫り地下深くから新しいマグマが上昇してくると、火山がそれまで持っていた磁場が弱まります。マグマの熱によって火山の山体を構成する岩石が磁力を失うからです。これは「熱消磁」という現象で、クリップなどを吸い付けた棒磁石や馬蹄形磁石をアルコール・ランプなどで加熱すると、クリップが落下するという小・中学校の理科の実験を記憶している方もおられるのではないでしょうか。

このようにして山体内部の磁力が熱消磁によって弱まることによって、火山全体がもつ磁力の分布が変化します。火山の磁力と地磁気との「打ち消し合い」や「強め合い」によって、北半球にある火山では火口の南側で磁力が弱まり、北側では相対的に強まります。

全磁力の観測については以下にわかりやすい解説があります:

火山学者は全磁力観測によって、火山内部の温度分布を推定し、ひいてはマグマがどのあたりに上昇してきているかを判断します。以下はその実例です。特に「図 3」に注目してください。マグマの南側で地磁気が弱まり、北側で相対的に地磁気が強まっている様子がわかります:

火山に関する電磁気現象全般については、以下に包括的な解説があります:

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オーロラ出現

8月 1日に起きた太陽面爆発で噴出した粒子群が 4日に地球に到達しました。その影響で、アメリカ合衆国北部(ミネソタ州やウィスコンシン州など)、カナダ、ヨーロッパ北部などでオーロラが観測されました:

5日の夜空にもオーロラが現れる見込みとのことです。

日本でオーロラが見えた可能性は低いようです。オーロラが見えたウィスコンシン州やミネソタ州は北緯 45度以北です。日本でこの条件を満たすのは北海道の宗谷岬だけです:

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2010年8月3日火曜日

カトラ山で地震 ― アイスランド (続報 17)

Number of Earthquakes under Katla Volcano(グラフはクリックすると拡大します)

その後の地震数の推移です。この 1週間ほどは、カルデラを中心にした北西-南東軸の上で分散して発生しているような印象です。また、これまでは深さ 1km 前後の浅い地震がほとんどだったのに比べると、深さ 10km 前後の地震の比率が高まったように思います。

以下は、「続報 16」以降にカトラ山で発生した地震のリストです:
  • 7月25日 20:52:53 深さ 1.0 km M-0.2?
  • 7月25日 21:12:23 深さ 5.0 km M1.0
  • 7月25日 22:23:40 深さ 5.0 km M1.3 (カルデラ内)
  • 7月27日 06:22:27 深さ 9.9 km M0.7
  • 7月28日 15:13:30 深さ 3.8 km M2.3 (カルデラ内)
  • 7月28日 20:01:47 深さ 0.9 km M0.4
  • 7月29日 10:34:45 深さ 9.8 km M0.9
  • 7月29日 17:10:03 深さ 4.6 km M1.8
  • 7月30日 06:31:55 深さ 1.0 km M0.3
  • 7月30日 11:40:41 深さ 4.9 km M0.8 (カルデラ内)
  • 7月30日 19:26:29 深さ 0.8 km M0.3
  • 7月30日 22:53:53 深さ 1.2 km M0.3
  • 7月31日 23:28:57 深さ 2.7 km M0.7
  • 8月01日 00:35:01 深さ 12.5 km M0.8 (カルデラ内)
  • 8月01日 03:52:16 深さ 1.9 km M0.5 (カルデラ内)
  • 8月01日 05:40:46 深さ 1.0 km M1.4
  • 8月01日 05:40:47 深さ 0.4 km M1.4
  • 8月01日 08:15:20 深さ 11.1 km M0.6
  • 8月01日 08:15:38 深さ 7.5 km M0.3
  • 8月01日 13:52:09 深さ 3.9 km M0.1 (カルデラ内)

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