2010年7月7日水曜日

「はやぶさ」の地球帰還 (続報)

小惑星探査機「はやぶさ」の「サンプルキャッチャ」と呼ばれる採取容器内に微粒子が入っていました。まだ小惑星イトカワのものだと確認されたわけではありませんけれど:

イトカワの表面に「はやぶさ」が着地したときの衝撃でどの程度の塵や埃が舞い上がり、採取容器に入るか。3つの要素――重力、大気、帯電――が影響すると思います。

イトカワの重力がきわめて弱いことは有利に働きます。舞い上がった塵が落下しにくいですから。

しかし、イトカワの表面に大気がないことは不利です。真空の中で「はやぶさ」が舞い降りても風が起こらず、ほとんど塵は舞い上がらないのではないでしょうか。

もう一つ考慮すべき要素は「はやぶさ」の帯電です。イオン・エンジンの使用や太陽風に叩かれることによって、「はやぶさ」は帯電していたかも知れません。これが塵や埃の採集にとって有利に働くか、障害となるか。イトカワの表面に直接接触する採集装置の開口部から採取容器までの経路が帯電していたとすると、塵や埃が舞い上がったとしても途中経路の内壁に吸着されてしまい、採集容器にはほとんど到達しないということも考えられます。

上記の要素を勘案して、私はイトカワの物質が採取容器内に入っている確率は 10% 未満ではないかと思っています。

そうは言うものの、どうか「こちら」ではなく「こちら」でありますように。

上の 2つの「こちら」のリンク先にある絵は、「はやぶさ」を傷だらけの少女にたとえています。以下の漫画も同じです。私は何度見ても涙がこみ上げてきます。「思いだし笑い」ならぬ「思い出し泣き」もしてしまいました。ぜひご覧ください:

上の漫画で、地上からの最後の指令 「最後の “おつかい„ だ そのまま後を振りかえりなさい」 とあるのは、以下の記事にあるように最後に地球の姿を撮影するためでした。姿勢制御用のロケットはすべて故障していたため、生き残っていたイオン・エンジンを使っての反転でした。JAXA は、地球の姿とともに、切り離されて先行するカプセルも写っていることを期待したようです:

「はやぶさ」が最後に送ってきた地球の写真の拡大版です。送信が途中で途絶したため見づらくなっています:

同じ写真に画像処理をおこなって見やすくした写真です。アフリカ大陸北東部、アラビア半島、イランなどが写っていることがわかります:

アメリカの「惑星協会」(The Planetary Society)のブログが、「はやぶさ」の帰還についてまとめた記事を掲載しています。多くの写真や動画が集められています。「はやぶさ」の大気圏突入のようすを捉えた動画では、NASA が飛行機から撮影したものと、NHK が地上から撮影したものが掲載されています。NHK のものが私の見た範囲ではいちばん見事だと思います:

過去の関連記事