2010年7月22日木曜日

パキスタンで火山噴火? (続報 4)

続報 3」で書いた 2007年と 2008年のインドの事例については、「西多摩の鶯」さんが運営する 『宏観休憩室 地震前兆研究村』という掲示板に当時投稿したものの控えがありますので、以下に転載します。

まず 2007年 8月の件:
No.4782(No.4546への返信) インドで「火山」噴火 投稿者:Nemo 投稿日:2007/08/28(火) 18:30

まだ、一紙(それもベータ版のニュース・サイト)が伝えているだけですが、事実なら希有の出来事です ―― インド最東部のアルナチャル・パラデシュ州で、火山ではなく普通の丘の中腹から噴煙や火山弾が放出され、さらに溶岩が流出するという現象が起きています。

現象が最初に報告されたのは今月21日ですが、初めは丘の中腹で山火事が起きているという認識だったようです。高熱の火山弾によって、付近にある送電線の鉄塔が融け停電が発生したとのことです。現在は小康状態になっているようですが、ガスや噴煙の放出は続いており、周辺の地温が非常に高くなっているとのことです。

今回の噴火現場から 15km の地点に、数百万年前に火山があったことが地質学的な証拠から明らかになっていますが、それ以外、死火山・休火山も含めいかなる火山の痕跡もないと、GSI(インド地質調査所)の科学者は述べています。

先の戦争中、ごく普通の麦畑の真ん中から突如噴煙が立ち上り、短期間のうちに成長して昭和新山と名付けられた事例が思い起こされます。

アルナチャル・パラデシュ州はインド最東部にある行政区画で、北は中国、西はブータン、東はミャンマー(旧ビルマ)に接しています。

2004年末にインド洋大津波を引き起こしたスマトラ島沖地震(Mw9.1~9.3)以降、インド・オーストラリア・プレート北縁沿いの大地震の震源は大勢として徐々に東進しているように見えましたが、今年4月のソロモン諸島大地震でその東端に達したのではないでしょうか。ひるがえって反対の西・北方向では、2005年にアンダマン海にあるインド領の島で泥火山の活動が活発化したという報道がありましたが、あまり大きな地震は起きていません。しかし、今年になってインドシナ半島西縁、インド東部、中国南西部で強めの地震の報道が増えているように思います。

2005年10月にはヒマラヤ山脈西部でカシミール大地震が発生しています。その当時から、次はヒマラヤ山脈東部が危ないという話が出ていました。インド・オーストラリア・プレート北縁沿いの震源東漸がソロモン諸島大地震によって一区切りつき、今後は逆方向のインドシナ半島西縁からインド東部・ヒマラヤ山脈東部にかけての地域の活動が活発化するかもしれません。今回の「火山」噴火は、ヒマラヤ東部大地震の先駆けなのでしょうか。

おりしも、ヒマラヤ山脈東部に位置するネパールでは、今年に入ってから何人かの「予言者」や星占い師が大地震や首都カトマンズ壊滅を予告する事態となっていて、政府はそれらの人物を逮捕するなど国民の不安を沈静化しようと躍起になっていると報じられています。

次は 2008年4月の件:
No.5618(No.5567への返信) インドの工場地帯で「火山」噴火 投稿者:Nemo 投稿日:2008/04/24(木) 18:20

4月15日、インド中央部マドヤ・パラデシュ州のセンドワという地域で、工場地帯の空き地から突然「溶岩」が噴き上がり住民を驚かせています:

現場付近に火山はありませんが、マドヤ・パラデシュ州はデカン高原のまっただ中に位置しています。デカン高原は、中生代白亜紀以降に大量の玄武岩質溶岩が流出して形成された地形ですので、火山活動とまったく無縁というわけではありません。目撃者の証言では、一時は人の背丈ほどの高さまで溶岩が噴き上がったとのことです。噴出場所の形状は、記事によって「クレーター」であったり「裂け目」であったりしてはっきりしませんが、あまり大きなものではないようです。また、噴出した溶岩の量もそれほど多くはなく、現時点では冷えて固まり、黒い小山のような状態になっているとのことです。政府機関の派遣した専門家が噴出物を採取して分析中で、今のところ公式の説明はありません。

記事には原因についての様々な推測が書かれています:
  • 近くでおこなわれている巨大ダム(Sardar Sarovar ダム)の建設のため地震が増加したことが原因。 
  • 溶岩噴出現場は 11000 ボルトの高圧送電線に隣接しており、ある専門家は、このような現象は高圧の電流が頭上を流れることによって起こりうる、と語っている。 
  • ボパール大学とインドール大学の地質学科では、専門家が調査するまで確かなことは言えないとしている。 
  • 現場一帯は断層地帯で、Sardar Sarovar ダムは、断層の3重会合点近くに建設されている。ダムによって地震活動が活発になった、と地元の活動家は話している。彼によれば、1997年5月に 50人の死者を出す地震が発生しているが、これは自然からの警告である。6か月前には、爆弾が爆発するような原因不明の音が何回も聞こえた。 
  • ボパールにある MVM 大学の地質学者は、当該地域は中央インドの中でも断層の活動がかなり活発な場所で、デカン・トラップ(*)地帯でもあるので、地下の活動によって今回のような現象が発生しても不思議ではない、と語っている。 
  • マドヤ・パラデシュ州科学技術審議会(MAPCOST)の前会長で、著名な地質学者でもある Janardan Negi 氏は、噴出した流体の化学的分析が終わらないと、いったい何が起きたのか正確なことはわからない、と語っている。

なお、インドでは昨年夏にも、火山ではない場所から噴火が起こったという報道がありました。場所は、インド最東部でミャンマーに接するアルナチャル・パラデシュ州です。これについては、下記に投稿してあります:
  • No.4782 インドで「火山」噴火 2007/08/28(火) 18:30

(*)中生代白亜紀末にインド亜大陸に大量の玄武岩質溶岩が噴出した痕跡


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