2010年7月21日水曜日

パキスタンで火山噴火? (続報 2)

今年 2月初めの当ブログの記事 「パキスタンで火山噴火?」 と 「パキスタンで火山噴火? (続報)」 で紹介した現象について、新たな情報です。山火事の誤認ではないかとか、泥火山の噴出ではないかといった推測がなされていましたが、このほどパキスタン地質調査所(GSP)の調査結果が報道され、溶岩の流出が実際に起きていたことが確認されました:

英語として不自然な文があるので判然としない点もいくつかありますが、以下に記事の概要をまとめます:
1月 27日、バローチスターン州ジアーラト渓谷にある山岳地帯に近いサリ(Sari near a mountain in Ziarat Valley, Balochistan、注)で地震にともなって裂け目から溶岩、水蒸気、火花が噴出した。地震のマグニチュードは 3.9、震源の深さは 60km であった。

パキスタン地質調査所から 2名の地質学者が現地に派遣された。2人は、2008年に起きた地震の後にも同地を調査している。

溶岩の流出は小規模で、裂け目の周囲にとどまっている。溶岩は、小さなスコリア丘と 4つの裂け目から噴出していた。4つの裂け目はジアーラト近くのサリにある Tor Zawar山にあった。

溶岩は上部マントルから上昇してきたか、地殻内部に以前からあった火山岩がリサイクルされたものと考えられるが、地球化学的なデータからは後者であることが示された。

この溶岩噴出があった地域には Bibai 構造体と呼ばれる地質が 1200km にわたって露出している。この構造体は、今から 7200万年前、プレートの移動にともなって北上中のインド亜大陸がまだ赤道の南側にあったころに海底に流出した溶岩によって形成された。

今回噴出した溶岩は、この Bibai 構造体に含まれる火山岩が地下の高温・高圧の条件下で再融解(リサイクル)されたものである。温度上昇には、断層帯の運動による熱も関与している。

2008年に Gogai Wam 断層で地震が発生した際にマグマ溜まりが形成され、その後、マグマが地殻の弱い部分を伝って地上に噴出した可能性がある。また、地震によって新たな亀裂が形成されたり、拡大したりしたことが考えられる。

注: サリ(Sari)の位置は不明です。ジアーラト(Ziarat)という地名はバローチスターン州に複数あります。記事では特に説明をつけずに使っているので、この記事のジアーラトはもっとも有名なジアーラトだと思われます。以下のグーグルマップにこのジアーラトの位置をマークしました:
地図を見ると、ジアーラト周辺の地域が激しく褶曲している様子がうかがえます。インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突していることが原因と考えられます。おそらく無数の断層も形成されていることでしょう。


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