2010年4月2日金曜日

エイプリル・フール

このブログの昨日の記事 “「はヤぶさ」に知能?”で紹介したのは、天文関係のサイト『AstroArts』が掲載したエイプリル・フール向けの記事だったわけですが、小惑星探査機「はやぶさ」の名前を「はぶさ」、小惑星の名前「イトカワ」を「イトワ」、宇宙航空研究開発機構「JAXA」を「JyAXA」とするなど、明らかにウソ記事とわかる書き方でした。後々、各方面から苦情や叱責を受けることがないように用心して、恐る恐るやっている雰囲気を感じます。

日本では、エイプリル・フールの「おふざけ」に対して、不真面目だと本気で怒る人が少なくないので、やむを得ないのかも知れません。このような反応は、ポジティブに考えれば日本人の生真面目さ、ネガティブに考えれば日本人の「ゆとりのなさ」の現れでしょう。

欧米では、エイプリル・フールの冗談に対して目くじらを立てるのは、大人げなく恥ずかしいことと見なす雰囲気があります。そのため、毎年各メディアや企業が知恵を絞って自由闊達に「おふざけ」をやってくれます。今年の「おふざけ」からいくつか紹介します。欧米の中でもイギリスが本家ですが、アメリカも負けてはいません。

BBC(英国放送協会)はラジオ放送で、ウィリアム・シェイクスピアの母親 “Mary Arden” はフランス人の “Mary Ardennes” である証拠が見つかり、同国の誇る劇作家が実はフランス人であった可能性がある、と報じました:

『ガーディアン』紙は、与党・労働党が不人気のブラン首相をダーティー・ハリー化して選挙戦を戦うことにした、と伝えています:
ブラウン首相のポスターに書かれている決めぜりふ “STEP OUTSIDE POSH BOY” は、朝日新聞では「ちょっと外に出ろ、坊や」と訳されています。“POSH” は、軽蔑的なニュアンスで「お上品な」とか「上流の」という意味です。日本でも喧嘩を始めるときには「表に出ろ」というのが定番のセリフですが、それと似ています。

タブロイド紙の『ザ・サン』は、世界で初めて味の付いた新聞紙を開発したとして、紙面に四角形を描き、「ここを舐めてみてください」という注意書きを付けました。いったい、何人ぐらいがペロリとやったのでしょうか。

『テレグラフ』紙は、特殊な訓練を受けたフェレットが、ブロードバンド・ケーブルを地下に敷設する作業に使われていると伝えました。フェレットが身につけているジャケットにはマイクロチップが取り付けてあり、地下パイプの破れや漏れを検知できるのだそうです:

『インディペンデント』紙は、ロンドンの地下鉄環状線が次世代のハドロン加速器として使われることになると伝えています。本家の LHC(Large Hadron Collider、大型ハドロン衝突型加速器)では、衝突エネルギー 7兆電子ボルトの陽子衝突実験に初めて成功したばかりです(4月 1日付「7兆電子ボルト」を参照してください):

アメリカも負けてはいません。スターバックスは、顧客から寄せられた要望に応えるため、新しいサイズのカップ、Plenta(TM)(128 fl oz)と Micra(TM)(2 fl oz)、をこの秋から導入すると発表しました。掲載されている写真を見ると、前者は植木鉢ほどの大きさがあります:

中国の検索事業からの撤退を表明したばかりのグーグルは、社名をトピーカ(Topeka)に変える、と CEO の Eric Schmidt 氏が同社の公式ブログで発表しました。同時に、アメリカ国内で表示される検索画面のロゴも Topeka に変更されたようです(画面の写真):
社名の変更は、3月にカンザス州の州都トピーカ(地図)の市長(79歳)が、同市の非公式の名前をグーグルにすると発表したことに対抗する措置なのだそうです。以下の記事によると、この市長さんはどうも パソコンやインターネットのことがあまりわかっていないようで、メールや検索はすべてアシスタントにやらせているとのことです:

ハイチ地震のときにもその発言で物議を醸した Rush Limbaugh 氏も(1月25日付「ハイチに対する冷ややかな視線」を参照してください)、自分自身のウェブサイトにいささか刺激の強い「ニュース」を載せています。地球温暖化に警鐘を鳴らし続けている著名な活動家とジャーナリストが、南極で凍死したという皮肉な内容です。彼は地球温暖化防止の活動家たちが大嫌いなようで、「私は笑いをこらえるのに必死だ」と書いています:

他にもいろいろありますが、きりがないのでこのくらいにしておきます。

一年に一回ぐらいは、上のようなとんでもない話や嘘の話を大まじめに書いて盛り上がるのは悪くないことだと思います。私は大好きです。しかし、地震予知関係のブログや掲示板に見られるように、電卓にきわめてまれな表示が云々とか、「地電位放射」(笑)で鉄道が云々などなど、年がら年中トンデモ話を吹聴するのはどうでしょうか。世間では「馬鹿も休み休み言え」とか「寝言は寝て言え」などと言います。トンデモ話は「四月馬鹿」の日限定に願いたいものです。


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