2009年2月28日土曜日

深発地震のダブルヘッダー

南太平洋の島国トンガの近海では、太平洋プレートがオーストラリア・プレートの下に沈み込み、しばしば大きな地震が発生しています。以下の記事は少し古いものですが、この地域でおこる深発地震には興味深い特徴があり、深発地震の発生メカニズムを説明する上で重要な考慮点となることを伝えています:
以下は記事の概要です:
トンガ周辺の深発地震は、同じ場所で繰り返し発生する。同じ場所で発生する地震は、波形も酷似している。また、1度深発地震が発生すると、24時間以内に同じ場所で再び地震が発生することが多い(地震のダブルヘッダー)。これは、サンアンドレアス断層などでおきる浅い地震にはめったに見られない特徴である。このような深発地震特有の現象は、通常の断層がスリップすることによって地震が発生するというモデルでは説明できない。

約 80km より深いところで発生する地震の原因については、数十年来論争が続いている。深発地震の発生を説明する主要なモデルは 2つ ―― 「transformational faulting(相転移断層)」モデルと「ductile shear zone(塑性剪断帯)」モデル。

相転移断層モデルは、高圧の下で物質が相転移をおこすさいに岩石の弱い部分に変形が集中し、深発地震の原因となると考える。相転移とは、たとえば炭素がダイヤモンドに変化するような過程。いちど相転移がおきてしまえば、短時間のうちに同じ場所で再び相転移がおきるとは考えられず、このモデルでは深発地震が同じ場所で繰り返すことを説明できない。

塑性剪断帯モデルは、浅いところでは急激に動いて被害をもたらす断層運動も、地下深部ではよりゆっくりとした塑性剪断流動に漸移していくと考える。この塑性剪断流動では粘性によるエネルギーの消費が熱を生み出す。いちど地震が発生すると、そのとき発生した熱によって同じ場所で地震が起こりやすくなる。短時間で 2度目の地震が発生することを説明できる。

研究チームは、トンガとフィジーに 11か所の観測点を設置、6年間にわたって深発地震のデータを収集。震源位置の特定精度は誤差 1マイル未満。3群の深発地震を発見。各群は 10~30ほどの地震からなり、各群内の地震はすべて同一の場所で発生。
以下のリンクは、上の記事のもとになった研究チームの報告です(科学誌『サイエンス』所載)。掲載されている図によって、24時間以内に発生した 2つの深発地震の波形がどの程度類似しているか、確認できます:
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

インドも原子力潜水艦と航空母艦保有へ

中国が通常型航空母艦(以下空母)の建造に今年着手し、2015年までに 2隻を完成させる予定であることは日本でも大きく報道されました。この 2隻以外に、中国はすでにロシアから空母ワリャークを買収、訓練用の空母として就役させることにしています。さらに、2020年以降には、2隻の原子力空母を建造する計画だということです。

尖閣諸島の沖合に中国が空母を派遣したとしたら、警備している海上保安庁の艦船はしっぽを巻いて逃げ出さざるをえず、かりに自衛隊が出動したとしても遠巻きに見守る以外なすすべはないと思います。国連の安保理に訴えても、常任理事国である中国が拒否権を行使して日本の動きを封じることでしょう。頼みの米国も最近態度を変えて、尖閣諸島の領有権については中立を表明、日米安全保障条約の対象外としています。米国が昨年、北朝鮮のテロ国家指定を日本の頭越しに解除したことは、いざというとき米国は自国民の血を流してでも本当に日本に味方してくれるのだろうかという疑心の芽を日本国民の心に植え付けました。尖閣諸島についての中立・不関与の方針は、日本国民の疑心をさらに大きくすることになると思います。

一方、日本ではあまり報道されませんが、インドも核弾頭を搭載したミサイル原子力潜水艦と空母をもうじき保有することになります。以下の記事によれば、原子力潜水艦は 4月から試運転を開始、空母はロシアから買い取ったものを改修して就役させる予定だとのことです:
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年2月26日木曜日

スラッシュボール・アース

スノーボール・アース仮説(全地球凍結仮説)は、次第に定説の地位を得つつあるようです。今から数億年前の太古の時代に、地球が全面的に凍結、あるいはそれに近い状態に複数回陥ったことは、最近では事実として受け入れられるようになりました。正面からスノーボール・アースを否定する論文はほとんど出てこなくなり、かわって、完全に凍結していたのか、部分的には凍結を免れていた場所があったのか、という観点に議論が移っているように思います。下記の『ニューサイエンティスト』の記事が紹介している研究もその一つです:
アメリカの女性研究者が、ブラジルで採集された全地球凍結時代の岩石中に、光合成をする藻類や細菌の痕跡を見つけ、それにもとづいて、当時地球は完全には凍結していなかったとの論を展開しています。このような藻類や細菌が棲息できた環境は、地表が完全に露出していたか、地表まで光が透過する程度の薄い氷に覆われていたかのいずれかであって、分厚い氷に閉ざされていたとは考えられないとの主張です。

完全凍結を意味するスノーボール・アースに対して、少なくとも地球表面の一部は厚い氷には覆われていなかったとする考えをスラッシュボール・アースと呼んでいます。「スラッシュ」とは、解けかかった雪やぬかるみを意味する言葉です。

スノーボールであったか、スラッシュボールであったかはさておき、ここまで広く全地球凍結仮説が普及したのは、最初の提唱者で磁気に関する専門家であるジョー・カーシュビンク博士が示した古地磁気にもとづく強力な証拠を、いまだに誰も覆せないことが大きな理由であると思います。仮説が登場した初期には、太古の氷河の痕跡があるのは、当時その地方がたまたま極地にあったためで、赤道地方までが凍っていた証拠とはならないという初歩的な誤解にもとづく反論がありました。しかし、カーシュビンク博士の提示した証拠は、氷河の痕跡が古地磁気の記録から間違いなく赤道地帯で形成されたものであることを明確に示していたのでした。

その証拠とは、地磁気の伏角、すなわち地磁気の磁力線が水平に対して何度傾いているかです。この伏角は、北極や南極に近づくほど大きくなり、逆に赤道地帯に接近するほど水平に近づきます。カーシュビンク博士は、天才的ともいえる発想で、氷河の痕跡地層に含まれる岩石に残された古地磁気の伏角が水平かそれに近いことを証明してしまいました。その過程では、岩石中の古地磁気記録が後の時代に上書きされた可能性や、地殻変動による地層の変形の可能性などを、絶妙ともいえるアイディアで排除しています。詳しいことは、『スノーボール・アース』(ガブリエル・ウォーカー、早川書房)や『全地球凍結』(川上伸一、集英社新書)などの書物をお読みになるのが良いと思います。

地磁気の伏角と緯度の関係については以下ウィキペディアに解説があります:
地磁気のベクトルは、赤道付近を除けば、地面に対して平行ではなく、地面と斜めに交わるかたちになっている。ある地点において水平面と地磁気のベクトルとがなす角を伏角といい、(以下省略)
以下はスノーボール・アースについての総合サイトです。英語なのが残念ですが、スノーボール・アースについての豊富な情報が掲載されています。トップページの右側にある「For Students」にはわかりやすい解説があります:
スノーボール・アースに対してこれまで出された批判に対する反論もまとめられています:
同サイトが提供する以下のプレゼンテーションパッケージも、多数の写真や図を使い、体系立ててわかりやすくスノーボール・アースを説明しています:
同サイトでは、スノーボール・アースを証拠立てる岩石サンプルの貸し出しもおこなっています:

スマトラ沖の海底に奇妙なパターン

このブログの記事「アトランティスの遺跡発見!?」と「アトランティスの遺跡発見!? (続報)」の関連情報です。グーグル・マップやグーグル・オーシャンで、インドネシア・スマトラ島西方沖のオーストラリア・プレート上(北緯0度、東経94.75度)に奇妙なパターンが見えます。古代都市の遺跡ではなさそうですが、知的生物の存在をうかがわせます(笑)。

参照記事: Seabed images create waves 海底のイメージが波風をおこす

2009年2月25日水曜日

頭部が透明な魚

まず、下の写真を見てください。1939年に発見されたバレルアイ(barreleye、学名:Macropinna microstoma)と呼ばれる魚の写真です:
こんな奇妙な魚がいるとは、今まで知りませんでした。頭部が透明で、体の中が見えています。緑色をした2つのかたまりが眼です。バレルアイとは樽(バレル)のような形の眼(アイ)を意味しています。この写真では、体は水平ですが、眼は上を向いています。透明な頭部をとおして上方を見ています。とがった口の上に普通の眼のようなものがありますが、これは鼻に相当する器官です。
2枚目の写真では、体は下を向いていますが、眼は前方を見ています。

以下の記事の下部に、バレルアイが泳いでる姿の動画があります:
動画に撮影されたバレルアイは、カリフォルニア州沖の深さ 600~800m に棲んでいます。太陽の光がほとんど届かない暗黒の世界です。そのため、バレルアイは非常に高感度の眼を持っています。前方を見る以外に、透明な頭部をとおして上方を見ることができます。これは、自分より上方にいる獲物のシルエットを捕らえるための適応と考えられています。小魚やクラゲが主なエサです。ひとたび獲物を見つけると体を上方に向け急上昇、眼も体の前方に向いて獲物を捕捉します。

2009年2月23日月曜日

生命進化とプレートテクトニクス

複雑な生命形態が発生、進化、存続するには、プレートテクトニクスが必須の条件であるという認識が科学者の間に広まりつつあります。様々なニュースサイトが伝えていますが、以下に紹介する『Astrobiology Magazine』の記事もその一つです。内容は、ドイツ宇宙研究センター・惑星研究所の所長で、ESA(欧州宇宙機関)の科学諮問委員会の議長をつとめる Tilman Spohn 氏へのインタビューです:
以下は記事の概略です:
「ハビタブル・ゾーン」は時代遅れ

太陽系外で生命が存在する可能性のある惑星を探すには、まず恒星の周囲の棲息可能領域(ハビタブル・ゾーン、habitable zones)内にある惑星を目標とすべきだ、というのが従来の考え方だった。棲息可能領域とは、恒星から遠すぎて水が完全に凍りついてしまったり、逆に近すぎて水が沸騰したりせず、水が液体のまま存在できる領域。しかし、このアプローチは時代遅れになってしまった。

棲息可能領域の外側でも生物が生存できる環境がありうると考えられるようになってきた。たとえば、木星の衛星エウロパ(写真右上)は明らかに棲息可能領域の外側にあるが、凍結した表面の下に液体の海洋があり、生命を宿している可能性があると考えられている。一方、同じ木星の衛星でも、ガニメデ(写真左下)には可能性がない。なぜなら、液体の海洋が 2層の氷の間に閉じこめられているため、生命に必要な栄養源とエネルギーの持続的な補給がない。

まとめると、棲息可能領域の外側にある惑星や衛星でも、海洋のような環境があれば生命が存在する可能性があるが、その環境が隔絶されていないことが必要である。生命の主要な構成成分、たとえば水素・酸素・窒素・燐・硫黄などへのアクセスが可能で、基本的な化学反応をサポートする条件が維持されていることが必要だ。地球上でこの条件がみたされているのは、プレートテクトニクスがあるからに他ならない。

プレートテクトニクスは生命の環境を維持

プレートテクトニクスによって原始的生命が摂取する栄養素が補充されたという見方が、惑星科学者の間で広まっている。バクテリアのような生命が必要とする栄養素が、消費し尽くされてしまった惑星表面を想像してほしい。栄養素の補充が必要だが、それはプレートテクトニクスによっておこなわれる。

Spohn 氏は、この問題を掘り下げて研究すればするほど、生命にとってプレートテクトニクスがますます必要なものだということがわかってきた。たとえば、生命が海洋から強固で安定した陸地に進出する場合、その陸地はプレートテクトニクスの産物である。プレートテクトニクスは、地球の部分的に溶融した核の対流によっておこる地磁気の発生とも関連している。この磁場が太陽風をそらすことによって地球上の生命を保護している。もし、地球磁場が存在せず、太陽風が直接大気圏に到達したとしたら、それは惑星の大気を徐々に減少させるだけでなく、高エネルギーの粒子によって生物の DNA を傷つけてしまう。

プレートテクトニクスと炭素リサイクル

もう一つの要素は、地球の温度を安定させるために必要な「炭素のリサイクル」。これもプレートテクトニクスの存在によって成り立っている。大気中の炭素は、(生物の遺骸などを通じて)地中のバクテリアに摂取され、さらに惑星内部に移行し、火山活動によって再び大気中に放出される。この循環をプレートテクトニクスが支えている。プレートテクトニクスのない惑星では、これらの個々の過程は存在するとしても、それらを連携させてリサイクルを完結させる原動力が存在しない。

プレートテクトニクスと水

このような証拠が積み上げられ、多くの生命形態はプレートテクトニクスが働いている世界でしか存続できないという説得力のある説が作り上げられた。

宇宙生物学者にとっては、この説にはもう一つの興味深い要素がある ―― 惑星科学分野の多くの科学者たちは、プレートテクトニクスが機能するためには、惑星表面近くの岩石が脆弱になっていなければならないと考えている。そして、これを最も効果的に成し遂げる分子は H2O、すなわち水である。したがって、プレートテクトニクスが機能している世界では、水が存在している公算が高い。つまり、生命にとって理論的に必要な 2つの要素 ―― プレートテクトニクスと水 ―― には、一方があれば他方も同時にあるという共存関係がある。

生命の指標としてプレートテクトニクスを探す

太陽系外の惑星に生命を探そうとするとき、プレートテクトニクスの有無が指標となりうる。Spohn 氏はこれが可能性の段階ではあるが、妥当な考えであるとみなしている。興味深いアイデアだが、現時点では思弁にすぎないとも彼は説明する。遠方の惑星のプレートテクトニクスは、現在の技術水準では検出するのが困難である。

われわれの住む地球ですら、衛星軌道上からプレートテクトニクスを検出するのは困難がともなう。大陸の形状のジグソーパズルと造山帯があれば、プレートテクトニクスの間接的な証拠にはなる。海洋中の中央海嶺が見つかればさらに説得力が増すが、中央海嶺は水に覆われており、宇宙からは見えない。太陽系外惑星の外観を観察するには、その惑星の軌道上に探査機を送り込む必要があるが、これは現在の人類の技術的能力を超えている。もしこれが達成できたとしても、得られる証拠は依然として間接的なものである。現在のところ、惑星のテクトニックな活動を離れたところから判断する確実な方法はない。

したがって、プレートテクトニクスを異世界の生命の指標として用いるのは時期尚早である。しかし、われわれの技術がもっと高度になれば、将来は可能になると思われる。想像して見てほしい。大気と水と有機物質を持った地球サイズの惑星を発見する場面を。それが、宇宙の中で生命を見つけ出す期待を高めることには、疑問の余地がない。
最近読み終えた本に『火星の生命と大地 46億年』(丸山茂徳、ビック・べーカー、ジェームス・ドーム、講談社)があります。詳しい内容は後日ご紹介しようと思っていますが、この本の著者たちも、プレートテクトニクスが存在しないと複雑な生命形態は進化しないという立場をとっています。そして、現在の火星ではプレートテクトニクスは機能していないが、火星が誕生してから数億年間はプレートテクトニクスがはたらいていた形跡があり、生命も進化し得たと考えています。また、現在の火星のいろいろな地形も、太古のプレートテクトニクスの痕跡として解釈可能であるということをわかりやすく解説しています。そして、地球のプレートテクトニクスも遠い将来には止まってしまうが、そうなったときの地球の姿を現在の火星は見せてくれていると述べています。

写真は木星の 4大衛星(ガリレオ衛星):イオ(左上)、エウロパ(右上)、ガニメデ(左下)、カリスト(右下) Image Courtesy: NASA/JPL-Caltech

自然界の七不思議

下記のページは、珍しい自然現象や自然の景観の写真を集めています。日本だったら地震の前兆という濡れ衣を着せられてしまいそうな現象も含まれています(笑)。 Enjoy!:

2009年2月22日日曜日

アトランティスの遺跡発見!? (続報)

このブログの一昨日の記事「アトランティスの遺跡発見!?」のフォロー・アップです。グーグル社の広報担当者が、都市の遺跡との見方を否定する発表をおこなっています。下記は、そのことを伝える『インフォメーション・ウィーク』誌の記事です:
グーグル社の発表をまとめると次のようになります:
グーグル・アースの海底地形データは、人工衛星からのデータと海上の船舶が計測した音響測深データを合成して作っている。都市の遺構のように見えるパターンは、音響測深をおこなった船舶の航跡が残ってしまったものである。同様の現象は、ハワイ周辺でも見られる。
たしかに、ハワイ諸島北方の海底には南北にそろった平行線のパターンが見られます:
私も似たようなパターンを見つけました。アイルランドの西方、ロッコール海台周辺の海底です。東西方向にのびるテレビの走査線のようなパターンが見られます:
今回のグーグル社による否定を、例によって隠蔽とか陰謀という観点で捉えているブログも見受けられます。自分の期待する結果が得られないと、すぐに政府による隠蔽工作だ、秘密結社による陰謀だと言い出す人がいるのはいつものことです。

ということで、残念ながらアトランティス発見の夢は遠のきました。

神奈川県立公立高校入試問題から

先日おこなわれた神奈川県立高校入試の共通問題から、地学系の問題を 2つ紹介します。高校入試の問題ですから、中学生レベルでわかるはずの問題です。皆さんは即答できるでしょうか。

問4(ア) 日本における太陽の南中高度や日の出、日の入りの方角や時刻は、1年を通じて変化している。このことを説明したものとして誤っているものを、次の 1~4の中から一つ選び、その番号を書きなさい。
  1. 太陽の南中高度は、夏至の日に最も高くなり、冬至の日に最も低くなる。
  2. 日の出の位置が 1年の中で最も北寄りになるのは、冬至の日である。
  3. 昼の長さは、夏至の日に最も長くなり、冬至の日に最も短くなる。
  4. 季節によって気温が変化するのは、太陽の南中高度や昼の長さが関係している。
問4(ウ) 右の図は、ある地点について、震源から 100km 離れた A地点と 200km 離れた B地点で観測した地震計のデータを模式的に示したものである。この地震の震源から 150km 離れた C地点における初期微動継続時間として最も適するものを、次の 1~4 の中から一つ選び、その番号を書きなさい。
  1. 14秒
  2. 16秒
  3. 18秒
  4. 20秒
(本来は地震波形のグラフを読み取る能力も必要な問題ですが、いま図を入力するスキャナーが手元にないので、「右の図」を言葉で説明します ―― 図の縦軸は「震源からの距離(km)」、横軸は「P波・S波が届くまでの時間(秒)」。原点は 0。震源からの距離 100km の横線上に A地点の地震波形、200km の横線上に B地点の地震波形。A地点の波形では、P波は地震発生 16秒後に、S波は28秒後に始まる。B地点の波形では、P波は32秒後、S波は56秒後に始まる。)

問4(ア)の問題は、うっかり勘違いをしそうな選択肢が入っています。しかし、ふだんから自然の変化に気を配っている人であれば、学校で教えられなくても容易に答えられる問題です。(ウ)の問題は、グラフさえ正しく読み取れれば、あとの計算は簡単です。2問とも、中学生でも正答率はかなり高いのではないかと思います。正解は後日、この記事に追記します。

引用元: 2009年2月20日 朝日新聞(朝刊)

ストリートビューに写ったもの

グーグル・マップの一機能であるストリートビューについて、特に日本では、プライバシー侵害だの、犯罪を誘発するだのといった批判が出ています。しかし、私に言わせれば、それらはテクノロジーの進歩についていけない人たちの抱く漠然とした不安のなせるわざで、自分が理解できないものに対する否定的感情の吐露にすぎません。言いがかり・いちゃもん・因縁・難癖・屁理屈のようなものです。文明開化の明治時代初期、電信柱が各地に立つようになると、それらを倒そうとする暴動が起きたり、電話が普及し始めると電話線を通じてコレラが伝染するとおそれたり、自動車は女性の体に良くないとして自動車に乗る女性を排斥しようとしたり …… 新しいもの、見慣れないものに対して非合理な反応を示す人たちがいつの世にもいるものです。

そのストリートビューには、しばしば、おどろくようなものが写り込んでいます。下記のページには、ストリートビュー撮影用の車が子鹿をはねてしまった場面の写真が掲載されています:
以下は、子鹿をはねてしまったことに対するグーグルの釈明です。子鹿は自力で事故現場を立ち去ったとのことです:
以下では、大きな銃を携帯した男が公然と道を歩いている姿が写っています。どうやら、銃器店から出てきたところのようですが……:
一方、グーグル・アースにもいろいろなものが写っています。下記はパキスタンのニュースサイトに掲載された記事です。パキスタン国内の基地に、米軍の無人偵察機「グローバル・ホーク」が複数駐機している様子がグーグル・アースで表示されると伝えています:
上記記事には写真が掲載されていませんので下記をご覧ください。駐機しているのは、パキスタンの記事が言うような偵察用の「グローバル・ホーク RQ-4」ではなく、形状から判断して、ミサイルによる対地攻撃が可能な「プレデター RQ-1」だとのことです:

2009年2月21日土曜日

ガレラス山とイワシ

南米・コロンビアのガレラス山(海抜 4276メートル)が噴火し、当局は危険地帯の住民(約 7000人)に避難を促しています。ガレラス山は、先週 14日(土)に噴火、警戒レベルが最高度の「レッド」に引き上げられていましたが、2日後に沈静化、当局は警戒レベルを「オレンジ」に引き下げていました。しかし、ここに来て地震や地鳴りが発生するようになったため、再び警戒態勢をとっています:
ガレラス山はコロンビアの西部、太平洋に近い場所にありますが、コロンビアの北部、カリブ海に面したマグダレナ州では、イワシの死骸が大量に漂着しています:
Image Credit: U.S. Geological Survey

衝突した衛星の破片が落下(続報)

このブログに 15日に投稿(16日に追記)した「衝突した衛星の破片が落下」のフォロー・アップです。ケンタッキー州やテキサス州で目撃された「火球」は、衝突したアメリカとロシアの人工衛星の破片ではなく、自然の流星あるいは隕石であるとのことです:
上の記事によると、イタリアでも同様の現象が目撃されていたようです。発生順序は、アメリカ時間の 13日(金)にイタリア、その数時間後にケンタッキー州、15日(日)にテキサス州となります。

ケンタッキー州での目撃後、FAA(連邦航空局)は航空機のパイロットに対して注意喚起の通知を出していたのですが、衛星の破片ではないとの「軍」からのアドバイスによってただちに通知を取り下げたとのことです。一方、テキサス州での目撃に対しては、16日、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)の広報担当者が以下のような発表をおこなっています:
われわれは、(テキサス州で落下が目撃された)物体が宇宙ゴミではなく、流星群であると考えている。NORAD は、自然に発生する物体を対象とはせず、人工の物体だけを追跡記録している。NORAD が宇宙空間で把握しているあらゆる物体と、ピーターソン空軍基地が担当しているミサイルの分野の情報にもとづき、(テキサス州で落下が目撃された)物体は人工のものとは考えられない。
結局、「衝突した衛星の破片が落下」の追記で紹介した天文学者の判断(下記)が正しかったことになります:
ある天文学者はこのビデオを見て、写っているのは自然の火球であって、衛星の破片ではないと推定しています。衛星の破片にしては落下速度が大きすぎることが、その理由です。人工衛星の速度は、基本的に第2宇宙速度(約 11.2km/秒)未満です。この速度以上だと、地球の衛星軌道を逸脱してしまいます。
ちなみに、第1宇宙速度(約 7.9km/秒)は地球の衛星となるための最低速度、第2宇宙速度(約 11.2km/秒)は、地球の重力を振り切って太陽の周りを人工衛星として回るための最低速度、第3宇宙速度(約 16.7km/秒)は、太陽の重力を振り切って恒星間空間に出るための最低速度です。

テキサス州では落下した隕石が発見されました。隕石は少なくとも数百個の破片に分裂しているとみられていますが、今のところ発見されたのは 2個です。多数の「隕石ハンター」が各地から集まってきているとのことです:

2009年2月20日金曜日

アトランティスの遺跡発見 !?

イギリスの大衆紙『サン』が伝えています。西アフリカの海岸から約 1000キロメートル西方、深さ約 5600メートルの海底に、都市の遺構のように見える格子状のパターンが見つかったとのことです。「Google Earth」の拡張版である「Google Ocean」を見ていた人が発見したものです:
「Google Earth」をインストールしていない人でも、「Google Map」(下記)で見ることができます。たしかに平城京か平安京の道路のようなパターンが見えます。これまでにもアトランティスの候補地はいくつも取りざたされましたが、位置的には、今回見つかったものがプラトンが書き残したアトランティスの位置に最も近いと思います。ただし、都市にしては外郭の一辺の長さが 100キロメートルを超えており大きすぎる点、短時間で海面下に沈んだとされるわりには「遺構」があまりにも整然としすぎている点など、疑問な点もいろいろ出てきます。


大きな地図で見る

2009年2月19日木曜日

ニュージャージー州の地震と謎の発光体

昨年来、アメリカ東部ニュージャージー州モリス郡周辺で地震が続いています。2月に入ってからも 3回の有感地震が発生しています。規模は小さいですが、震源が浅いため有感となったようです:
  • 2月2日 午後10時34分 M3.0 5km
  • 2月14日 午後5時22分 M2.3 2km
  • 2月18日 午前1時42分 M2.3 5km
USGS(米国地質調査所)のリストによると、この 3件以外にも小規模の地震が 10件ほど、同州や隣接するニューヨーク州で同じ時期に発生しています。

以下は地元紙の記事です:
記事からの抜粋です:
米国北東部にあるニュージャージー州(ニューヨーク州の南隣)モリス郡で、規模の小さい地震が 15日の間に 3回発生している。この規模の地震は米国北東部ではさほど珍しくないが、今回の震源に最も近い断層は数百マイル離れた大西洋の海底にあるため、地質学者は首をひねっている。

「今回の一連の地震はたいへん不思議だ。プレートテクトニクスについて地質学者の抱くイメージにまったくそぐわない」と、マディソン郡にある ドリュー大学で教鞭を執る地質学者 Catherine Riihimaki 氏は語る。

モリス郡に最も近いところにある活発な断層線といえば、数百マイル離れたところにある大西洋中央海嶺だ。Lamont-Doherty 地球観測所の地震学者 Won-Young Kim 氏によれば、大西洋中央海嶺が北アメリカ・プレートを押すことによって生じる東西方向の圧縮力が、(モリス郡周辺の地殻に)不安定さをもたらしている可能性がある。

Riihimaki 氏によれば、たとえばアパラチア山脈に沿った古い断層帯が(地殻の)潜在的な脆弱領域になっていると見なす説もあるが、今のところ(今回の一連の地震の原因は)謎のままとのことである。
おそらく隠れた未発見の断層があるのだと思います。地震がおきて初めてわかる断層も多いですから。

ところで、ニュージャージー州モリス郡では、今年に入ってからすでに 3回、正体不明の発光体が上空に出現、多くの人びとが目撃しています。発光体が現れたのは、1月7日、1月30日、2月17日です。

以下は、そのことを伝える地元紙の記事です:
目撃者によると、2月17日の発光体は、午後8時45分ごろから9時ごろにかけて出現。赤色で、8個から 10個。風と同じ方向に移動していったということです。発光体の正体ははっきりしていませんが、ミシガン州に本拠を置く業者が、自社の製造した製品ではないか、と申し出ているそうです。その製品というのは、祝い事などのときに空に放たれるもので、ロウをしみ込ませた布と風船がセットになっているとのことです。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年2月18日水曜日

古代文明とプレート境界

USGS(米国地質調査所)に長年務め、現在はアリゾナ大学で研究を続ける地質学者の Eric Force 氏が面白い研究結果を 『Geoarchaeology』(地質考古学)誌に発表しています。ひとことで言うと、「地質学的に不活発な地域よりも、プレート境界の地震多発地帯に偉大な古代文明は誕生しやすい」という内容です:
以下は、記事の要旨です:
  • プレート境界と古代文明の相関は、地震などの破壊的と見なされる自然の力が、実は人類の歴史で建設的な役割を果たしてきたことを示している。
  • 15の古代文明のうち 13はプレート境界にある。地震、津波、火山噴火などの脅威があるにもかかわらず、そのほとんどはプレート境界から 75km以内。プレート境界に位置する文明の例は、ローマ、コリント、ミケーネ、エルサレム、ウル(イラク)、ハスティナプラ(インド)など。例外はメンフィス(エジプト)と鄭州(チョンチョウ、中国・河南省の省都。黄河文明発祥地域内の交通の要衝)。
  • プレート境界から離れているほど、文明は長期間継続する傾向がある。これは、直面する自然災害が少ないためと考えられる。
  • プレート境界が初期の文明の成長を促進したこと説明する理論はいろいろ考えられる。たとえば、プレート境界は十分な水を得やすい、火山は肥沃な土壌の形成を助ける、などなど。
  • Force 氏自身は、心理学的な説明を好む ―― 年長者は子供たちに対して(プレート境界がもたらす)多くのリスクや変化に備えるよう言い聞かせる。次の世代は前の世代よりさらに優れた耐震性をもった建築物を造り、より良い食糧の貯蔵法を編み出す。
  • イギリス・ヨーク大学の考古学者 Geoff Bailey 氏 も賛意。あるレベルの地質学的不安定さは、そのような地域に存在する社会に組織だった対策を否応なく要求する。社会発展についての「challenge-and-response」理論の一種。
  • アフリカにおける初期人類の進化も、気候変動のような要因だけではなく、同様のテクトニックな挑戦によって促進されたと考えられる。
15の古代文明あるいは都市をどのような基準で選んだのか、いま一つはっきりしていません。選択基準によっては、違った結論となったかもしれないと思います。

(写真はマヤ文明のピラミッドです。記事とは直接関係ありません。)

北朝鮮の月の暈

「冬将軍」に続いて「将軍」関連ニュースをもう一つ。下記はロイター通信社が配信した記事です:
上記記事は、北朝鮮の通信社 KCNA の報道を引用して次のように伝えています:
(金総書記の誕生日の)数日前、ジョン・イル山の上空に今までに例がないほどの月暈現象が現れた。山の周囲は昼間のように明るくなり、白頭山の秘密野営地にあった金正日総書記誕生の地の上空を煌々と輝かせた。
実際は月の方が暈よりも明るいはずですが、政治的なプロパガンダで、月よりも暈の明るさが強調されているのだと思います。同じような明るさの月暈が日本の上空に出現したとしたら、おそらく地震の前兆にされてしまうことでしょう。暈さんもいろいろご苦労なことです。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

ジャック・フロストの顔

下記は、昨年末にアメリカ北西部ワシントン州で撮影された写真です。家の軒先にできた氷柱(つらら)に人の横顔が現れています:
あまりにも人の顔に似ているので、写真か氷柱そのものに何らかの加工が施されているのではないかと疑いました。しかし、各ニュースサイトの記事を斜め読みしてもそのような疑いを差し挟んでいるものはありませんでした。記事のタイトルにある「ジャック・フロスト」とは霜(しも)を擬人化した人物で、「冬将軍」の訳語として載せている和英辞書もあります。

2009年2月17日火曜日

ミネソタ上空の異常に赤い輝き

下記の写真は、2002年9月23日の夕方に撮影されたものです。飛行機がミネソタ州ミネアポリスの空港に着陸するため高度を下げ、雲の下に出たとたん、異常に赤い輝きに遭遇。それに気づいた乗客が窓越しに撮影したものです(写真はクリックすると拡大します)。
この赤い輝きの正体ははっきりしていません。現在、下記の掲示板で議論がおこなわれています:

人災地震

人間の活動が地震を引き起こしてしまった事例集を、『ナショナル・ジオグラフィック』誌のサイトが掲載しています:
記事は全部で 5ページあります。以下はその要旨です:

ダム建設 ― 中国・四川大地震
4年前に建設された Zipingpu ダム。その水量の変動が、地震発生の触媒となった可能性がある。同ダムは、断層から約 500メートルのところに建設され、水の荷重によって地中の応力分布を変化させた。地震発生を加速し、さらに規模を大きくする要因になったと疑われる。
石油/天然ガスの採掘 ― ウズベキスタン
ウズベキスタンでは、1976年から1984年にかけて M6.8 以上の地震が 3回おきている。同国の Gazli 天然ガス田でのガス採掘が原因と見られている。1976年以前には Gazli 地域ではほとんど地震が発生していなかったが、急に大きな地震が 3回続けて発生した。天然ガスの採掘によって、地中の流体の圧力が変化したことが原因。

天然ガス田ではこのような圧力の変化が、ガスを取り出すことによる圧力低下以外に、ガスの生産量を増やすために地中に水やガスを注入することによってもおきる(この場合は圧力上昇)。
石炭の採掘 ― ニューカッスル地震
オーストラリア史上もっとも大きな被害が出たニューカッスル地震(1989年、M5.6)は、200年間にわたって続いていた石炭採掘が原因。炭坑から大量の水をくみ出したことによって断層が不安定になった。石炭 1トン当たり 4.3トンの水が排出されていた。
地熱発電 ― バーゼルの群発地震
60回以上の群発地震(最大規模 M3.4)がスイス・バーゼル市周辺で発生。2007年1月、その原因が地熱発電所であることが判明して住民の怒りが爆発。地熱発電が地震の原因となるメカニズムは 2つ。第1は、高温の蒸気を発生させるために、地下の高温岩体の周囲に水を注入すること。これによって、断層周囲の応力が高まる。第2は、高温の水を汲み上げることによって、断層の潤滑が低下、歪みがたまりやすくなる。

2009年2月16日月曜日

281年後の余震

このブログに書きそびれていたのですが、昨年末、12月21日にアメリカ・マサチューセッツ州で M1.8(深さ 10km)の有感地震がありました。この地震は、なんと 281年前におきた大地震の余震であるとのことです。281年前(1727年)というと、アメリカ合衆国建国の約 50年前で、日本は第八代将軍徳川吉宗の治世です:
こんなに長く余震が続くのは珍しいと思います。でも、ひょっとすると、一般の地震の中にも過去の大地震の余震が含まれているのに、余震だとは認識されていないだけかもしれません。アメリカ東部のように地震の少ない地域だからこそ、余震の識別が可能であったとも考えられます。上記記事によると 1727年の大地震以降、同じ地域で余震が続いており、最近は数年に一度のペースで発生、前回の余震は、2007年10月で規模は M1.3 であったとのことです。

1727年の大地震は、ニューベリーポート大地震とも呼ばれており、規模は M5.6 です。大した地震のようには思えませんが、震源が浅かったためか、当時アメリカ東海岸に建設されていた 13の植民地のほぼ全域にわたって、すさまじい被害が出たようです。以下は、USGS(米国地質調査所)のサイトに掲載されている当時の記録です:
当時の記録には大地震発生にいたるまでの気象や宏観前兆と思われる現象なども記載されています。少し抜粋して紹介します:
大地震は 1727年10月29日におこった。(現在の暦では 11月10日になります。当時はユリウス暦が使われていましたが、後にグレゴリオ暦が採用され現在に至っています。)

6月中旬から9月中旬にかけて干ばつが続いた。7月から 8月第1週までは異常に暑かった。5月に 2回にわか雨が降った以外は、4月の第1週以降まったく雨が降らなかった。大地は深部まで乾燥し、これまで枯れたことのなかった井戸や泉が干上がった。

雨がほとんど降らないにもかかわらず、稲妻や雷が非常に多かった。蒸し暑かった 8月1日の夜、数時間にわたって非常に激しい稲光と雷鳴があった。稲光があまりにも頻繁に発生するため、「空が火事になった」と書き記した者もいる。

干ばつは、9月16日の非常に強い嵐によって終わった。この嵐で高潮がおき、多くの船が流されるなどの被害があった。

10月24日は非常に寒かった。3日後には雪が降り、28日はこの季節としては異常に気温が低かった。

10月29日(日)は、晴れて気持ちの良い日だった。夜には月が明るく輝き、風もなく静かであった。多くの人びとが寝入った午後 10時40分ごろ、恐ろしい騒音に続いて轟音と衝撃が襲ってきた。

多くの人びとが地震の直前に閃光が走ったと語っている。また、地表に炎が走ったとも。轟音と震動は北西の方角からやって来て、南東の方角に去っていった。2分間以内ですべてが終わった。

午後11時に大きな余震がおこった。その後も余震が続いた。

いくつかの高台が湿地となり、これまで沼地であった場所が隆起した。ある牧場では泉が新たにわき出した。発見されてから 80年間にわたって熱い水が湧きだし凍ることのなかった泉が枯渇し、後には普通の天候でも凍結するようになった。いくつかの井戸では水質が良くなったが、水質が悪化したり、干上がったり、水温が大きく変化したりした井戸もあった。

ある井戸は、深さ 10~20メートルあったが、いつも甘みのあるきれいな水をたたえていた。地震の 3日前、その水が悪臭を放つようになった。水を室内に持ち込むと、数分で耐えられなくなるほどの悪臭だった。井戸に何かの死体が投げ込まれたのかも知れないということで調べたが、水が白く濁っていること以外、何も見つからなかった。この状態が地震の 7日後まで続いたが、その後、水質は改善し始め、さらに 3日後には完全にもとの状態にもどった。

レーザー・プリンターから危険な微粒子

一般のオフィスや家庭で使われるレーザー・プリンターから、健康に害をおよぼすおそれのある極微粒子が放出されている、との研究成果をオーストラリアのクイーンズランド工科大学の研究者が発表しています:
要旨は以下のとおりです:
問題の微粒子は、文字やイメージを紙面に定着させるためにトナーを加熱する際に発生。このとき、熱によって蒸発したトナーと紙の有機物質が空気中で冷えて凝結し、非常に細かい粒子となる。サイズが非常に小さいので、呼吸器の深部にまで到達する。このような微粒子の放出が多いのは、トナーを加熱する温度がもともと高いプリンターと、通常は省エネのために電力をセーブし、印刷時に急激に温度を上げるタイプのプリンター。
オフィスで使う複写機も、レーザー・プリンターと同じ原理を使っているものが多いと思います。

今回発表された研究とは無関係の話ですが ―― 昔、複写機で使うトナーを誤って床にこぼしてしまったことがありました。このとき、舞い上がったトナーを大量に吸い込むと、神経系がおかされて「鶏口突進症」という病気になるという話を先輩から聞きました。この病気にかかると、一度始めた動作を自分の意志では止められなくなるそうです。言葉を口にしようとすると止められなくなり、「コッコッコッコッ…」とまるで鶏の鳴き声のようになり、歩いたり走ったりすると物にぶつかるまで止まれないことから、「鶏口突進症」という名前がついたのだということでした。

四川大地震被災地の奇妙なイメージ

中国のニュースサイトが掲載している写真です。昨年 5月12日におきた四川大地震による土砂崩れで、山肌に奇妙な模様が現れています。ロールシャッハ・テストのようなものですが、1枚目は「風にそよぐ葦」、2枚目は「時を告げる雄鶏」、3枚目は「バイオリンを弾く少女」です:
記事では、新たな観光資源として地元の経済復興に役立つと評価しています。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年2月15日日曜日

衝突した衛星の破片が落下

【2月16日追記】その後、テキサス州、ニューメキシコ州など、アメリカ各地から轟音や火球の目撃報告が伝えられています。FAA(連邦航空局)は、航空機のパイロットに宇宙からの落下物への注意を喚起し、目撃した場合は報告するように求めています。下記は、白昼に撮影された火球のビデオです(冒頭にコマーシャルが入ります)。衝突衛星の破片が落下したものと見られています。白昼にこれだけ明るく見えているので、もし夜間に落下していたら、周辺一帯が昼間のように明るくなったものと思われます:
ある天文学者はこのビデオを見て、写っているのは自然の火球であって、衛星の破片ではないと推定しています。衛星の破片にしては落下速度が大きすぎることが、その理由です。人工衛星の速度は、基本的に第2宇宙速度(約 11.2km/秒)未満です。この速度以上だと、地球の衛星軌道を逸脱してしまいます。

日本でも、いずれ同様の現象が報告されることになるかも知れません。万が一、落下物を発見した場合は、安易に近寄ったり手で触れたりしないことが肝要です。旧ソビエト連邦のコスモス衛星には、有毒な化学物質や放射性物質が搭載されていた可能性があります。過去に、同様の衛星がカナダに落下した際には、放射性物質がまき散らされ、国際問題になりました。


日本時間の 11日(水)にアメリカとロシアの人工衛星が衝突しましたが、その衝突で発生した破片の一部が落下したもようです。インディアナ州のテレビ局が伝えています。まだ、他のメディアは報道していません:
以下は記事概略です:
ケンタッキー州レキシントンの都市部全域で、上空に複数の光跡が目撃され、地震に似た振動が感じられたとの通報が National Weather Service(NWS:日本の気象庁に相当)に寄せられたが、NASA によるとこの現象は、10日(火、アメリカ時間)に衝突した 2機の人工衛星から発生した破片の可能性が高い、とのことである。地震に似た振動は、宇宙から落下する破片によって発生した衝撃波によるものである。
ケンタッキー州は、アメリカ合衆国中央東部の州で、州都はフランクフォートです。上記記事を掲載したテレビ局のあるインディアナ州は、ケンタッキー州の北隣です。

関連記事として、このブログの「シンクロニシティ?」と「衛星衝突」も参照してください。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年2月14日土曜日

中国・湖南省で地震パニック

中国中央部にある湖南(Hunan)省の都市、衡陽(Hengyang)・株洲(Zhuzhou)・林州(Chenzhou、正しくは「林」の右に「おおざと」)などで、大地震への恐怖から住民が屋外で夜を過ごすなどの地震パニックがおき、当局が地震のうわさを打ち消すことに躍起になっています:
ことのおこりは 11日(水)にあった空軍の演習で、轟音(おそらく超音速飛行にともなう衝撃波)がとどろき建物が振動するなどしたため、10万人にのぼる住民が屋外に飛び出す騒ぎになりました。この轟音や振動が大地震の前兆ではないかとの憶測を呼び、それがインターネットや携帯電話であっという間に広がったと考えられています。中国の地震観測ネットワークによれば、湖南省やその周辺で対応する自然地震が発生した形跡はないとのことです。

昨年 5月の四川省大地震以降、中国国民は地震に非常に敏感になっていると記事は伝えています。

平時はともかく、多くの人びとが不安に駆られている状況では、ちょっとしたきっかけで流言が広まり、パニックの原因となります。日本でも、大きな地震があった後にネット上の掲示板やブログで、専門家でもない人が専門家ぶって、さらに大きな地震が発生する可能性に言及したり、次は○日頃が危ないなどと無責任な発言をするのをしばしば見かけます。自重してほしいものです。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

バレンタイン・デー

バレンタイン・デーにちなんだスライド・ショーを、科学誌『サイエンティフィック・アメリカン』のサイトが掲載しています。全部で 9枚のスライドから構成されています。5枚目と6枚目も捨てがたいのですが、わたしのお気に入りは 9枚目の下にある指輪の影の写真です。なかなか良い着眼だと思います。大切な人に指輪を渡すとき、こういう演出を考えてはいかがでしょうか:

八つ子誕生

先月 26日にアメリカ・カリフォルニア州で、世界で 2例目といわれる八つ子が誕生しましたが、その後、いろいろな批判が出ているようです:
その母親の出産 8日前の写真が以下に掲載されています。はち切れんばかりに膨らんだ母親のおなか。人体の柔軟さに驚かされます:

2009年2月13日金曜日

衛星衝突

昨日の投稿「シンクロニシティ?」で触れた米・露の人工衛星衝突ですが、様々な反応が出てきています。まず、アメリカ側の衛星を所有しているイリジウム社が出したプレス・リリースですが、アメリカの企業にしては Web での反応がずいぶん遅いという印象です:
上記のリリースを要約すると次のとおりです:
  • 運用中のイリジウム衛星群 66機のうち、1機が失われた。衛星やデブリを追跡している米国政府機関(複数)から得た情報によると、衛星の損失は、すでに使われなくなっていたロシアの衛星との衝突の結果発生したと考えられる。
  • 今回の出来事は、イリジウムのサービスには最小限の影響しか及ぼさないが、イリジウム社は衛星損失による影響に対処する作業にただちに取りかかっている。
  • イリジウムの衛星群は健全な状態を保っており、今回の出来事はイリジウム社側の怠慢やそのテクノロジーの不具合によって生じたものではない。
  • 今回の衝突は、非常にまれで極めて低確率の出来事ではあるが、イリジウムの衛星群はこのような出来事に対応できるように設計されている。イリジウム社は、すでに軌道上にある予備の衛星(複数)のうちの 1機を、失われた衛星の替わりにするための作業に着手している。
  • イリジウム社は、66機の衛星プラス複数の予備衛星からなる世界最大の商用衛星群を運用している。今回の衛星損失によるイリジウム社のお客様への影響としては、短時間の通信中断という非常に限定的なサービス障害がおこる可能性がある。イリジウム社としては、2月13日までにはネットワーク上の解決策を実施できると考えている。さらに、予備待機中の衛星を移動させて、今後 30日以内に失われた衛星の恒久的代替とすることを目指している。
イリジウム社側に瑕疵はないと言っています。

一方、ロシア側の反応も徐々に出てきています。昨日、私もこのブログに書いたように、イリジウム側に衝突を回避する機会があったのではないか、との疑問が出ています:
以下に代表的な反応を紹介します。

ロシアの著名な宇宙専門家 Igor Lisov 氏:
なぜ、デブリ(破片、残骸、宇宙ゴミ)を追跡している NASA の専門家やイリジウム社が衝突を回避することができなかったのか、理解に苦しむ。イリジウムの衛星は稼働中で、軌道を調整することができたはずだ。コンピューター(プログラム)の不具合か、人為的なミスが原因かも知れない。あるいは、小さなデブリにばかり注意を払っていて、(大きな)機能停止状態の衛星には気づかなかったのかも知れない。

今回の衝突で新たに発生したデブリは、類似の軌道を回っている地球観測衛星や気象衛星の多くに危険を及ぼす。近い軌道には非常に多くの衛星が存在している。残った 65機のイリジウム衛星も類似の軌道をとっており、非常に深刻な危険に直面する。衝突によって発生した破片は、さらなる衝突を引き起こし、衝突の連鎖反応が起こりかねない。

より高い軌道には、旧ソビエト連邦が打ち上げた原子力をエネルギー源とした衛星(複数)が、長期間使われないまま地球を回っている。それらの衛星は衝突に対して脆弱である。今回の衝突で発生したデブリがそれらの一つに衝突したとしたら、放射性降下物が地球に危険をもたらすことはないが、飛び散った破片がさらに多くの衛星に害を及ぼす。
ロシア国防省広報官 Yuri Ivanov 氏:
高度約 800kmの軌道は「ジャンク・オービット」(廃品軌道)と呼ばれ、さまざまな国の機能停止した衛星が集まっている。今回の事件は、アメリカの衛星がこのジャンク・オービットに誤って突入したことによっておこったと推定している。
まるで「廃車置き場に突っ込んできて衝突したあげくに、車が壊れたと文句を言われてもねェ」と言っているようです。

以下のページに、今回の衝突と、その後の破片拡散の様子を示す動画があります(動画の冒頭にコマーシャルが入ることがあります)。2つの衛星の軌道がほぼ直交していることがわかります。互いに相手の側面に突っ込む形の衝突だったようです:

13日の金曜日

今年は 13日の金曜日が 3回ありますが、このようなことは 11年に 1回しかおきないそうです。それにちなんで、『LiveScience』のサイトが「13日の金曜日にまつわる 13の事実」という記事を掲載しています:
上記記事から、いくつか紹介します:
(1)イギリス海軍の「13日の金曜日」号と名付けられた船は、13日の金曜日に進水し処女航海に旅立ったが、そのまま連絡を絶った。

(2)アポロ 13号は、アメリカ中部標準時 1970年4月11日13時13分に打ち上げられた。日付のアメリカ表記「4/11/70」を足し合わせると 13になる( 4 + 1 + 1 + 7 + 0 = 13)。月へ向かって飛行中のアポロ 13号で爆発事故が起きたのは 4月13日だった(ただし金曜日ではなかった)。

(10)マーク・トウェイン(作家)は、あるディナー・パーティーに 13人目の客として招かれたことがあった。友人は、(悪いことがおきるから)出席しない方がいいと忠告した。後日、トウェインはその友人に次のように語った ―― 「たしかに悪いことがおきたよ。12人分しか料理が用意されていなかったんだよ」。

(13)1ドル紙幣の裏側に印刷されているのは、13段のピラミッド、鷲の頭上の 13個の星、その鷲のかぎ爪がつかんでいるのは 13本の矢と 13枚の葉がついたオリーブの枝 。
いま手元にある 1ドル札で数えてみたら、たしかにそのとおりでした。アメリカ合衆国建国時の 13州を象徴しているのだと思います。日本では、「13」を「とみ(富)」と読んで、お金が貯まる縁起の良い数字と喜ぶ向きもあるようです。その観点からすると、紙幣に「13」がたくさん描かれているのは好都合といえます。

「13恐怖症」(“triskaidekaphobia”)や「13日の金曜日恐怖症」(“paraskavedekatriaphobia”、“friggatriskaidekaphobia”)という単語があることには少し驚きました。どれも舌を噛みそうになる長い綴りですが、これらの長さが 13文字だったらもっと驚いたことでしょう。私が知っている最も長い綴りは、ディズニーのミュージカル映画『メリーポピンズ』に出てくるおまじないの言葉「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」(“supercalifragilisticexpialidocious”)です。

ちなみに、どの単語も「-phobia」で終わっています。これは「恐怖症」を示す接尾辞で、ギリシャ神話に登場する神、フォボス(Phobos = 恐怖)に由来しています。フォボスとデイモス(Deimos = 恐慌/パニック)は、ともに戦の神アレス(ローマ神話ではマルス = 火星)と、美と愛の神アフロディテ(ローマ神話ではビーナス = 金星)の間に生まれた子で、いつも父アレスに付き従っていたとされています。戦には恐怖と恐慌がつきものというわけです。フォボスとデイモスは、火星の 2つの衛星の名前にもなっています。

2009年2月12日木曜日

シンクロニシティ?

朝日新聞に「私の視点」という欄(というよりは 1面すべてを使って識者からの投稿を掲載する「オピニオン」面)があります。一般読者からの投稿を掲載する「声」欄とは違って、1件当たり約 1400字(400字詰め原稿用紙3枚半)という比較的長文の意見が載せられています。今日の朝刊の同欄には 3件の投稿が掲載されていますが、その中に「宇宙ゴミ 国際的な監視で衝突防げ」と題する柳澤正久氏(電気通信大菅平宇宙電波観測所所長)の投稿があります。

この投稿は、学生や町工場が作った小型衛星が次々に軌道にのったこと、宇宙ゴミの数が今後ますます増えること、衛星は機能停止後も時速2万5000キロもの猛スピードで地球を回り続けること、重さが3キロの衛星の衝突でも30キロ分の火薬に相当する爆発が起きること、「北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)」傘下で米国とカナダが共同運営する「宇宙監視センター(SCC)」の役割などに言及し、次のように結んでいます:
世界各国が小型衛星を次々に打ち上げる時代になれば、追跡・監視はますます重要になる。今後は、関係各国が協力し、より開かれた国際的な監視体制を築いていく必要がある。
まるで今朝報道された米・露の人工衛星衝突を予期していたかのような、実にタイムリーな内容です。偶然の一致にしてはできすぎているように思います。投稿した本人が一番驚いているのかも知れません。

アメリカとロシアの人工衛星が衝突したのは 2月11日の午前2時ごろ(日本時間、以下同じ)、私の知る限り最も早く衛星の衝突を報じたのはアメリカの CBS 放送で 翌 12日の午前 5時前後、日本の TV が伝えたのが同じく 12日の午前 8時前後です。一方、上記の投稿が掲載された朝日新聞が拙宅に配達されたのは 12日の午前4時ごろですから、人工衛星の衝突を報道で知ってから、執筆者が投稿を準備した可能性はありません。

ひょっとしたらと私が思うのは、JAXA(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)や上記 NORAD、SCC などの関係者から、2つの衛星が近々衝突しそうだとの情報を執筆者が事前に得ていたのではないか、という可能性です。NORAD や SCC は、長期間にわたって各衛星の軌道を追跡していますから、衝突の可能性があることはかなり前からわかっていたはずです。

しかしこの場合、一つの疑問が残ります。事前に衝突の可能性が高いことがわかっていたのなら、アメリカ側の衛星の所有者であるイリジウム社にはその情報が伝えられなかったのだろうか、という点です。何年も前に機能停止したロシア側の衛星とは違って、イリジウム社の衛星には軌道を変える能力が残っていたはずです。連絡があれば、高価な衛星を失うよりは貴重な燃料を消費してでも軌道を変更したであろうことは十分に考えられます。NORAD や SCC には、民間企業に警告を出すミッションはないということなのでしょうか。

ところで、上記の投稿に「使い終わった衛星は片づけるのが一番良いのだが、その実用的な方法は見つかっていない」と書かれています。ここで私が想起するのは、今からちょうど 10年前の 1999年2月7日に打ち上げられた NASA のスターダスト探査機です。同探査機は、ビルト第 2彗星に 240kmまで接近して彗星のチリを採取、その後地球に近づいた際に採取したチリを入れたカプセルを地球に投下、カプセルは地表で無事に回収されました。このとき、高速で飛来する彗星のチリを採集するのに使った技術が、宇宙のゴミを回収するのに使えないだろうか、と思うのです。

同探査機に搭載されていた彗星のチリを採集する装置は、金属製でテニス・ラケットのような形をしていました。テニス・ラケットのネットに相当する部分が格子状に加工されていて、各格子の中にエアロジェルと呼ばれる寒天状の物質がつめられていました。彗星に接近した際にこのラケットを探査機の外にだして、彗星から飛来するチリをエアロジェルで受け止めたわけです。以下のページに 3葉の写真が掲載されています。一番下の写真がラケットの格子を写したものです。一番上の写真は、エアロジェルに捕獲された彗星のチリです。高速で飛来したチリをエアロジェルが減速させた様子がよくわかります。エアロジェルは耐熱性で、チリが減速するときに発する高熱に耐えることができました。(写真はクリックすると拡大します):
この装置を大型化して軌道を周回させれば、地上のレーダーでは追跡できない 10cm 以下の小さなデブリ(宇宙ゴミ)を回収することができるのではないか、と素人考えしたわけです。エアロジェルを保持する格子は金属製ではなく、もう少し柔軟性のある素材にする必要があるかも知れません。イメージとしては、巨大な漁網にエアロジェルを塗ったような感じです。もちろん、装置自体の回収方法、他の衛星へ危険を及ぼさないような方策等々、克服しなければならない技術的な課題が山積するであろうことはわかりますが。

Image: スターダスト探査機; Credit: NASA/JPL

2009年2月11日水曜日

タイタンのセンキョ?

まず下記の地図を見てください。土星の衛星タイタンの地図で、今年 1月に更新されたものです。現在も土星を周回中の探査機カッシーニが撮影した映像をもとに作られています:
タイタンには地球の 1.6倍もの表面気圧を持つ厚い大気があるため、地表の模様は今ひとつ鮮明ではありません。そのタイタンの赤道上に「SENKYO」という地名があるのに気づかれると思います。日本語的な響きがします。でも、「センキョ」って何でしょうか。まさか「選挙」じゃないでしょう。ATOK の変換候補で他に出てくるのは「船渠」や「占拠」ですが、どれも地名にふさわしいとは思えません。

で、調べてみると「センキョ」ではなく「センキョー」と読むのが正しいようです。そして漢字では「仙境」あるいは「仙郷」。パラダイスとかユートピアに相当する言葉を世界各国の言語から集めて、命名しているようです。同じ範疇に属する「シャングリラ」や「ザナドゥ」という名前も、同じく赤道地帯の地名として採用されています。

以下にタイタンの地名リストがあります。「Senkyo」以外に「Hotei」(布袋)と「Shikoku」(四国)が日本語から採用されています:
「Hotei Arcus」の「Arcus」は弧状の地形、「Shikoku Facula」の「Facula」は白い斑点を意味しています。

日本語から選ばれた言葉に一貫性がない感じがします。「仙郷」なんていう言葉は今時の日本人はあまり口にしないでしょう。「日本の神様の名前」のトップバッターがなぜ「布袋」なのか、島の名前を挙げるにしてもなぜいきなり「四国」なのか、理解に苦しみます。地名の選定に日本人が参加していないか、参加していたとしてもあまり日本の文化や言葉に詳しくない日系人で、言われるがままに日本語を選んだのではないか、という印象です。

Image: Cassini's View of Titan; Credit: NASA

人類最古の毛髪

人類最古の毛髪が、南アフリカ共和国内の洞窟で見つかったとのことです。『ナショナル・ジオグラフィック』誌のサイトが記事を掲載しています:
発見された毛髪は、洞窟内で化石化していたハイエナの糞石の中に含まれていました。堆積層の年代から、19万5000年から25万7000年前のものと推定されています。これまで見つかっていた最も古い人類の毛髪は、チリで発見された約9000年前のミイラのものですから、今回の毛髪は大幅に記録を塗り替えたことになります。

毛髪がどのような人類のものかは明らかになっていませんが、年代的には現生人類(ホモ・サピエンス)が出現する直前、ホモ・ハイデルベルゲンシスの存在時期と重なるとのことです。

ハイエナがこの毛髪の持ち主を襲ったのではなく、別の原因ですでに死んでいた持ち主にハイエナが群がったと考えるのが妥当とのことです。いずれにせよ、当時の人類は自然界でぬきんでた存在ではなく、単なる一要素であって、食物連鎖の下の方に位置していたことをあらためて想起させる、と古人類学者の一人は語っています。

今回発見された毛髪からは DNA は採取できなかったとのことです。しかし、これまで見過ごされてきた動物の糞石を採取して精査すれば、いずれは太古の人類の遺伝子を分析できることになるだろうと研究者は語っています。

地震警報システムの限界

地震の初期の震動を捉えて地震の規模を推定し警報を出すシステムには、大地震の規模を過小評価してしまう原理的な限界があるという論文が、アメリカ地震学会の会報に掲載されています:
地震の早期警報システムは、地震の初期の震動から地震全体の規模が推定できるという前提にもとづいています。しかし、この前提が怪しいとしたら、警報システムの信頼性が揺らぎます。今回発表された研究では、小規模の地震の場合には地震計に届く初期の震動と地震全体の規模にはよい相関があるが、地震の規模が M6.5 を上回るとその相関がくずれ、地震全体の規模を過小評価してしまうことになる、とのことです。

日本の気象庁がおこなっている緊急地震速報にもこの論文の結果が当てはまるのか否か。私には判断がつきませんが、すこし心配です。

Credit: Courtesy National Park Service; Image source: Earth Science World Image Bank

2009年2月10日火曜日

フィリピンでイルカの大群が座礁

10日(火)、フィリピンの首都マニラの西方にあるバターン半島の海岸で、約 200 頭のイルカが座礁したり浅瀬で群れたりしているのが見つかり、地元民や専門家による救助活動がおこなわれました。数頭が死亡したものの、他は無事に海にもどりつつあるようです。フィリピンの漁業・水産資源局の責任者によると、10頭から 20頭程度の群が座礁することは同国ではさほど珍しくないが、今回のように大きな群が座礁することは非常に珍しい、原因としては最近の熱波の影響や、海底地震によって聴覚器官が損傷を受け方向を見失ったことが考えられる、とのことです。
イルカなど鯨類の集団座礁事件は世界中で比較的頻繁におこりますが、地震と関係があるのか、あるとすれば地震の前兆なのか、あるいは地震の結果なのか等々、よくわかっていません。昨年 12月 8日付のこのブログの記事「地震からクジラ類の座礁を予測」も参照してください。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年2月9日月曜日

万有引力の進化論的解釈

2月12日(木)で、チャールズ・ダーウィン生誕から 200年になります。世界中で様々な記念行事が行われます:
で、話が飛躍しますが、私のお気に入りの一コマ漫画を紹介します。題して「万有引力の進化論的解釈」あるいは「生物学者のための物理学」:

大昔、リンゴの樹は熟した実をあらゆる方向に向かって飛ばしていました。その中で、地面に向かって飛ばされた実だけが、(根をはり芽を出して)子孫を残すことができました。それから何百万年間も自然選択と進化が続き、(人間という生き物が進化して)ついに万有引力が発見されました、とさ。
つまり、実を地面に向かって飛ばす性質をもったリンゴの樹だけが効率的に子孫を残すことができ、自然選択による進化の結果、現在ではリンゴの実は地面に向かって「落ちる」ことになったということです。絵の中で地面に寝ているのは、多分、ニュートンだと思います。

2009年2月7日土曜日

半影月食

あさって 2月9日(月)、半影月食がおこります。月が地球の本影に完全に入る場合を皆既月食、一部分が本影に入る場合を部分月食と呼ぶのに対して、月が本影にはまったく入らず、半影部分だけを通過する場合を半影月食と言います。

『天文年鑑』(誠文堂新光社)によると、今回の半影月食は 21時37分に始まり、日付がかわった 1時40分に終わります。23時38分に食が最大となり、地球から見た月面の約 92%が地球の半影に入ります。

半影月食は気づかない人がほとんどだと思います。いつもの満月より全体的に少し暗い感じがするか、多少赤みを感じるかも知れません。また、本影の方向に近い部分がやや暗くなっているように見えるかも知れません。いずれにせよ、地震の前兆とは無関係の現象ですので、前兆関係の掲示板などで騒いでいる人を見かけても取り合わないようにしてください。

以下に、今回の半影月食の図があります:

2009年2月6日金曜日

月と地震の関係がついに明らかに

ついに月と地震の関係が明らかになった、とイギリスの科学誌『ニュー・サイエンティスト』が伝えています。

月と地震の関係については、これまで 1世紀以上にわたって専門家の間で論争があり、様々な研究論文が発表されてきました。アマチュアが思いつきで月と地震の関係についてあれこれ言うのは簡単ですが、専門家が科学的な事実としてそのことを示すには大変な作業が必要となります。今回の研究では、従来の研究で対象とされた地震の約10倍の数(約44万件)の地震を分析したとのことです。そして、得られた結果は、アマチュア地震研究者が期待するようなものではありませんでした。『ニュー・サイエンティスト』の記事から結論の部分を英文のまま引用します:
They found that about 1 per cent of earthquakes do coincide with Earth tides.
以下は、『ニュー・サイエンティスト』の記事です:
もう少し詳しい記述(といっても論文のアブストラクトです)が以下にあります:
上記をまとめると次のようになります:
  • 地球潮汐(earth tides)が地震を引き起こすことを示す明確な証拠は、過去1世紀以上にわたって曖昧なままであった。地震について地球全域をカバーする最大のカタログ(NEIC カタログ、44万2412件の地震を記載)を使って分析した結果、固体地球潮汐の位相と地震発生のタイミングに明らかな相関(信頼度 ~99%)を見いだした。
  • 地球潮汐によって大地が持ち上げられるとき(つまりリソスフィア内に通常かかっている応力が軽減されるとき)に、地震の発生頻度はごくわずかだが上昇する。
  • この地球潮汐の位相にともなう地震発生頻度の分布異常は、小規模かつ震源の浅い地震でより大きい。
  • 逆断層が卓越する地域よりは、正断層や横ずれ断層が支配的な地域の地震の方が潮汐の影響を受けやすいと考えられるが、地球潮汐による地震発生が地震発生機構に依存するという統計的に有意な証拠見つからなかった。
  • 海洋や大気の潮汐による負荷よりも、地球の固体部分におこる潮汐によって地震が引き起こされている可能性が非常に高い。海洋の潮汐による負荷が副次的に作用している可能性はあるが、使用した地震データベースが十分に完全でも均一でもない(海域で発生する地震についてさらに小規模の地震まで収録することが必要)ため、そのことを見いだすことはできなかった。
  • 潮汐による変位が最大になったとき、とくに小規模で震源の浅い地震で、発生確率がわずかに(おおよそ 0.5% から 1.0%)上昇する。
つまり、大地震には潮汐の影響は見いだされなかった、浅い小規模の地震でごくわずかに潮汐の影響が認められた、ということです。

折りしも、今月8日(日)午前5時8分に月が地球に最接近します。そして、翌9日(月)は満月大潮。さらにこのとき、太陽―地球―月が直線上に並び半影月食が全国で見られます。太陽や月が地球に及ぼす潮汐力がふだんよりも大きくなることは言うまでもありません。

Image Credit: NASA

地震の直後に UFO 出現

クロアチアのニュースサイトが掲載している記事によると、4日(水)の夜、ボスニア・ヘルツェゴビナで地震がありましたが、その数分後、同国中央部の Novi Travnik という町(村?)の上空に UFO が出現したとのことです。目撃者によれば、UFO は大きさ、形、色を変化させながら 5~6分にわたって町の上空を飛行したとのことです:
なお、記事に掲載されている写真は、記事が伝える UFO 目撃とは直接関係がない資料映像だと思われます。

記事が言及している地震については、European-Mediterranean Seismological Centre のリストに記載されている以下の地震が該当するのではないかと思います。記事では規模を M3.3 としているのに対して、リストでは M3.8 となっていますが、それ以外の情報は記事と合致しています。ここに記載されている Travnik という地名と、記事の中で UFO の目撃場所とされている Novi Travnik が同じ場所だとすると、UFO は震央から 19km の地点に出現したことになります:

Magnitude ML 3.8
Region BOSNIA AND HERZEGOVINA
Central Bosnia
Date time 2009-02-04 at 19:01:37.8 UTC
2009-02-04 at 20:01 (local time)
Location 44.38 N ; 17.79 E
Depth 10 km
Distances 22 km NW Zenica
19 km NE Travnik
9 km S Blatnica

UFO は、地震の直後に震央からさほど遠くないところで目撃され、大きさ・形・色を変化させていたということですから、ひょっとすると地震に伴って発生した何らかの気体の燃焼、あるいは球電などの電磁気的な現象だったのかも知れません。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

金星が明るい

夕方の南西の空に宵の明星・金星が非常に明るく輝いています。日没時の地平線からの高度は約40度もあります。今後さらに明るさを増して、2月20日1時に最大光度(-4.6等)に達します。現在でもそれに近い明るさがあり、位置を知っていれば、日中でも金星を見ることができます(ただし、太陽を直接見ないように注意が必要です)。また、月の出ていない夜、金星が最大光度かそれに近い明るさで輝いているときには、金星からの光だけで人や木立の影が壁や地面にできるそうです。

以下は、日中に撮影された三日月状の金星と三日月です。言うまでもないと思いますが、小さくくっきりと写っている方が金星、その右側に非常に淡く、しかし大きく写っているのが月です。なお、金星の満ち欠けは双眼鏡でも見ることができます:
金星は、2月20日に最大の明るさになった後、徐々に明るさを減らしながら地球に近づいてきます。3月下旬に地球に最も近づきますが、そのときの地球との距離は約4200万 km、月までの距離の約110倍です。その後は再び明るさを増して、5月2日に最大光度(-4.5等)に達しますが、このころには、夜明け前の東の空に明けの明星として輝いています。

地球に最も近づいたときに最大の明るさにならないのは、金星が内惑星(軌道が地球の軌道よりも内側にある惑星)であるからです。内惑星の金星が地球に最も接近するのは、太陽―金星―地球の順番に並んだときです。このとき地球から見えるのは、金星の太陽に面していない側、つまり夜の側ですので、距離が近くても明るさはそれほどではないわけです。

金星はよく UFO と誤認されます。とくに最近のように、最大光度に達する前後の時期にはその傾向があります。薄い雲が金星の周辺にかかっているような場合には、雲の動きによって相対的に金星の方が動いているように見え、ますます誤認の可能性が高まります。また、日没から時間が経過して、金星が西の地平線に近づくと、大気のゆらぎの影響を大きく受けるようになり、金星が脈動しているかのように見える場合もあります。ネット上の掲示板にも、すでに金星を誤認したと考えられる投稿が現れていますので、注意しましょう。

2009年2月5日木曜日

六種震動

最近知ったのですが、仏教用語に「六種震動」(「六種動」、「六震」)という言葉があります。『広辞苑』(岩波書店)には次のように書かれています:
世に瑞祥(ずいしよう)がある時、大地が震動する六つの相。すなわち、動・起・涌・覚(または撃)・震・吼。六種動。
摩訶般若波羅蜜経』には、次のような文言があります:
そのとき世尊は、もとよりその師子座に坐ったままに師子遊戯三昧に入った。すると神通力によって三千大千国土は感動し、六種に震動した。
東に涌き西に没み、
西に涌き東に没み、
南に涌き北に没み、
北に涌き南に没み、
辺に涌き中に没み、
中に涌き辺に没み、
大地はみな柔軟に動き、衆生を和やかに悦ばせた。
大地の震動を非常にポジティブなものとして記述しています。なぜ、大地の震動、すなわち地震が瑞祥と結びつくのか不思議です。同じ疑問を抱く人はいるようで、次の記事の執筆者もその一人です:
阿含経の一部に地震被害の記述があるものの、仏典のほとんどで地震は瑞兆として扱われているとのことです。釈迦が布教活動をおこなった地域は、大きな地震がほとんどおきない地域だったという意味のことが書かれています。しかし、釈迦の生きた時代と今日で、インドの地震発生パターンに大きな違いがないとするならば、釈迦が強い有感地震をまったく経験したことがなかった、というのは大いに疑問です。

六種震動は実際の地震とは無関係で、釈迦の言動に不動の大地ですら感動して震えるという擬人化が発端となり、それが肥大して各種の教典に組み込まれてしまった、とでも理解するしかないのでしょうか。

「六」という数字には、現代の地震計が 3軸 6方向(東・西・南・北・上・下)のゆれを記録するように設置されることに通ずるものがあります。

フィリピンでエボラ・ウィルスの感染者

昨年末、フィリピンでエボラ・ウィルスに感染した豚が見つかったとの報道がありました。これは、エボラ・ウィルスが、霊長類以外に感染していることがわかった最初の事例でした。今度は人への感染事例が報告されています。以下は、イギリスの科学誌『ネイチャー』のサイトに掲載された記事です:
以下は記事の抜粋です:
  • フィリピンで新たに 4人の養豚業者がエボラ・ウィルス・レストン株に感染していたことがわかり、2週間前に見つかった 1人と合わせて感染者は 5人になった。5人は、血液中にエボラ・ウィルスの抗体があることが確認されているが、病気の豚の世話をしたことがあり、おそらく 6か月以上前に感染したものとみられている。
  • エボラ・ウィルスのレストン株は、昨年、フィリピン最大の島であるルソン島の豚から見つかった。このウィルスは、今のところ人体にはなんの症状も引き起こさないが、豚やそのほかの動物の体内で突然変異して、感染力や毒性の強い悪性のものに変化する可能性がある。
  • 現在、保健機関が感染者 5人の家族や知人について、人から人への感染がなかったか調べている。
エボラ・ウィルスの引き起こすエボラ出血熱については、下記に解説があります。「『エボラ・レストン株』は、空気感染の可能性を濃厚に具現するもの」という記述があります:
Image: Electron micrograph of Ebola virus. Credit: U.S. Centers for Disease Control and Prevention

2009年2月4日水曜日

イランの人工衛星打ち上げ

2月2日(月)夜、イランが初の国産人工衛星「Omid」(希望)を国産ロケット「Safir-2」(使者-2)で打ち上げました。イランでは 1979年にイスラム革命がおこり、パーレビー朝のシャー(王)による支配を打倒し、シャーを支援していたアメリカの影響力を排除することに成功しました。今回の衛星打ち上げは、その革命から 30周年になるのを記念した祝賀行事にタイミングを合わせたものです。

イランは、これまでにも他の国と共同で人工衛星を打ち上げてきた実績があります。しかし、人工衛星本体と打ち上げロケットがともに国産であるのは、今回が初めてです。

アフマディネジャド大統領は、今回の人工衛星は世界に「平和と兄弟愛」を運ぶものであるとし、イランの宇宙開発には軍事目的があるのではないかとの見方を「世界はそんな与太話を受け入れないだろう」と一蹴しています。同国の外務大臣は、人工衛星によってイランは「環境についてのデータ」(環境にも色々あります)を得ることができる、「イランの人工衛星開発は純粋に平和目的であり、イランの軍事能力は防衛を目的とするものだ」と語っています。

今回人工衛星の打ち上げに使われたロケット「Safir-2」は、長さ 22m、直径 1.25m、重さ 26トンです。一方、イランが保有するもっとも強力な軍用ロケット「Shahab-3」は、長さ 17m、直径 1.30m、射程 2000km で、イスラエルと、中東地域に展開する米軍を射程におさめています。

ロイターは、イランの宇宙開発小史を掲載しています:
以下は、記事の抜粋です:
  • 2005年10月27日 ―― ロシアと共同で人工衛星「Sina-1」を打ち上げ。打ち上げ地はロシア、ロケットはロシア製コスモス 3M。西側メディアはスパイ衛星の可能性を取りざたしたが、専門家は偵察に使うにはカメラの性能が低すぎると指摘。
  • 2008年2月4日 ―― 人工衛星開発計画の一環として国産ロケットを打ち上げ。同様のテストをさらに 2回おこなった後、純国産研究用人工衛星「Omid」(希望)を、2009年3月までに打ち上げると発表。
  • 2008年8月17日 ―― 人工衛星打ち上げ用国産ロケット「Safir」にダミーの衛星を搭載して打ち上げ。米国政府当局者は、打ち上げは失敗したと発表。
  • 2008年8月20日 ―― イランが、10年以内に有人宇宙飛行をする計画を持っていることが判明。人工衛星の打ち上げに使われる長距離弾道(ミサイル)技術は、兵器を打ち上げるためにも使用可能だが、イランはそのような意図は持っていない、と否定。イランの宇宙航空開発のトップ Reza Taghipour は、イスラム諸国と共同で Besharat(吉報、朗報)という名の衛星を開発する、また、ロシアやアジア諸国と共同で別の衛星を打ち上げる、と語ったと伝えられた。
  • 2008年9月7日 ―― イラン・中国・タイの3ヵ国が共同で、中国のロケットを使用して、地震などの災害時の連携を促進する研究用人工衛星を打ち上げ。イランの電気通信担当大臣 Mohammad Soleimani は、衛星にはカメラが搭載されていると語った。
  • 2009年2月3日 ―― 「Omid」(希望)という名の人工衛星を打ち上げたと発表。衛星の目的は情報の収集と機器のテスト。24時間で地球を14周する。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年2月3日火曜日

リダウト山に噴火の兆候(続報)

1月30日付で書いた「リダウト山に噴火の兆候」という記事の続報です。日本の気象庁は、浅間山の警戒レベルを上げた後、短時間で実際の噴火が始まり、内心ほっとしているのではないでしょうか。一方、AVO(アラスカ火山観測所)は、リダウト山の警戒レベルを上げてから 1週間が経過しても、火山に大きな動きがなく、困難に直面しています。

以下は、『アンカレジ・デイリー・ニュース』紙の記事です:
以下は記事からの抜粋です:
  • リダウト山の不穏な動きが2週間目に入り、「いつ噴火するのか」という問い合わせが AVO に殺到。(1日あたり)数百人の人びとが内部情報を求めてAVO に電話、さらに数千人の人びとが AVO のウェブサイトにアクセス。金曜日、トラフィックの極度の集中によって AVO のサイトはクラッシュした。
  • 問い合わせの中には「ハワイ行きの飛行機の切符を持っているんだけれど、火山の噴火は飛行に影響しないですよね」と確認を求めるものや、「8時になるまでは噴火しないように全力を尽くして」というものもある。
  • 普通は噴火した後に問い合わせの電話が増えるものだが、今回はまだ噴火していないのに人びとの関心が非常に高い。リダウト山についてこれほど関心が高いのは、1989年の噴火のさい、231人の乗客を乗せてアンカレジに向かっていた KLM オランダ航空のジャンボジェット機がリダウト山の噴煙に突入し、Talkeetna Mountains に衝突する寸前までいったことが影響しているのだろう。
  • FAA(連邦航空局)は、リダウト山から 10マイル(約16km)以内の領域では、高度 6万フィート(約1万8000メートル)以下の飛行を禁止している。
  • リダウト山の活動は強まったり弱まったりしている。ここ数日から数週間のうちに噴火する可能性の方が、噴火しない可能性より高い。しかし、噴火することなく活動がおさまってしまう可能性もある。リダウト山について唯一詳細なデータが残っている 1989年の噴火では、地震動が始まってから 24時間たたないうちに噴火がおこった。
  • アラスカの火山は、そのマグマの粘性が高いため、爆発的な噴火をおこす傾向がある。
  • 現在、リダウト山の7合目から8合目にかけて、新しい火口が 2つできている。山頂にたまった雪氷には、地熱によって崩壊したための孔が開き、2筋の泥流が山腹に流れ出している。
アメリカ空軍は、火山からの降灰を避けるため、アラスカに配備している軍用機を南のワシントン州に避難させ始めています:
日本の浅間山とアラスカ・リダウト山を対照して伝える記事も出ています:
なお、AVO のウェブサイトは、日本時間 1月30日(金)夜からつながりにくかったり、つながっても最小限の情報しか表示されない状態が続いていましたが、今夜18:00現在では正常に戻っています。以前より応答時間が短縮されているように感じます。おそらく、ウェブサーバーの処理能力を増強したものと思われます。数分ごとに更新される「24時間リアルタイム連続波形」は必見です。リダウト山の脈動が手に取るようにわかります。詳しくは、1月30日付の記事「リダウト山に噴火の兆候」をご覧ください。

Photo: The Redoubt Volcano part of the Aleutian Range in Alaska's Lake Clark National Park; Credit: Copyright © Bruce Molnia, Terra Photographics; Image source: Earth Science World Image Bank

2009年2月2日月曜日

正嘉元年の大地震と青い炎

鎌倉幕府が編纂した歴史書『吾妻鏡』(注)には、非常に多くの地震が記録されています。その中で、とくに印象深いのが正嘉元年8月23日(1257年10月9日)におきた大地震です。『理科年表』所載の被害地震年代表によれば、マグニチュードは 7.0~7.5、震央は相模湾内部、江ノ島の南約 10km です。この推定が正しいとすると、鎌倉の目と鼻の先で大地震が発生していたことになります。

当日の『吾妻鏡』の記載は次のとおりです:
8月23日 乙巳 晴
戌の刻大地震。音有り。神社仏閣一宇として全きこと無し。山岳頽崩し、人屋顛倒す。築地皆悉く破損し、所々の地裂け水湧き出る。中下馬橋の辺地裂け破れ、その中より火炎燃え出る。色青しと。今日大慈寺供養御布施の事沙汰を致すべきの由、御教書を御家人等に下さるるなり。
現代語に直すと次のようになります:
午後8時頃(午後7時から9時までの間)、大地震があった。音をともなっていた。神社仏閣で無事なものは一つもなかった。山は崩れ、人びとの住まいは転倒した。土塀もすべて壊れ、所々で地面が裂け、水がわき出した。中下馬橋のあたりでは、地割れから炎が燃え上がった。色は青かったという。(以下略)
「地裂け水湧き出る」とあるのは、地盤の液状化現象や噴砂現象が起きたものと考えられます。

「地裂け破れ、その中より火炎燃え出る」とあるのは何でしょうか。現代であれば、都市ガスの配管が破損してガスが噴き出し、それに何らかの火が引火したと考えるところでしょう。もちろん、鎌倉時代にそのようなものはありません。地震の揺れによって可燃性のガスが地下から上昇して地表に噴き出し、それに何かの火が移ったと考えるのが妥当でしょう。液状化現象の気体版といってよいと思います。地震が発生したのは夜ですから、淡い炎の色もよく見えたと思います。

ガスの正体はなんでしょうか。ここでヒントとなるのは「中下馬橋」という地名です。現在、鎌倉のメイン・ストリート若宮大路を由比ヶ浜から鶴岡八幡宮に向かって進むと、横須賀線との立体交差の手前に「下馬」という交差点があります。この近くでは、滑川が蛇行して若宮大路に近づくような地形になっています。この近辺にあった橋が「中下馬橋」ではないでしょうか。若宮大路は 1182年(地震の75年前)に源頼朝によって造られたとされています。その築造工事の前は、「下馬」のあたりは、滑川の河原か氾濫原で、湿地あるいは沼沢地であったと想像されます。そこには、川によって運ばれてきた植物などの有機物が堆積していたのではないでしょうか。それを埋め立てて若宮大路などの都市基盤を造ったとしたら、地下で細菌などによって有機物が分解され、沼気(メタンガスが主成分)が溜まっていたと考えることができます。この気体が地震をきっかけに噴き出し、炎となった可能性が高いと思います。

(注) あづまかがみ  東鑑とも書く。鎌倉幕府が編纂した幕府の歴史書。巻数未詳。後世52巻と訛伝。編年体で、各将軍ごとにまとめられる。13世紀末~14世紀初頭の編纂。ただし完成したかどうか不明。1180年(治承4)以仁王・源頼政の挙兵に起筆し、1266年(文永3)6代将軍宗尊親王送還までを扱う。(平凡社『世界大百科事典』より抜粋)

上記『吾妻鏡』の本文は、『東鑑目録』所載の読み下し文を参照させていただきました。

F22 ラプターと日本

1月30日、31日と2夜連続で NHK のニュースが、アメリカの最新鋭戦闘機 F22 ラプター(raptor 猛禽)に関する報道をしていました。今年に入ってから私が目にした F22 と日本の関係についての主要な報道を、時系列を遡ってリストアップしてみます:

1月31日夜の NHK報道は、F22 の生産終了方針に関して、米国議会上院・下院の議員あわせて238名が連名で、生産継続を求める書簡をオバマ大統領に送っていたことが判明した、という内容です。そして、F22 は日本政府が自衛隊の次期主力戦闘機の有力候補としているが、アメリカ議会が軍事機密の保護を理由に輸出を禁止していることと、F22 に生産打ち切りの可能性があることが障害になっている、と伝えています。

1月30日夜の NHK報道は、F22 が沖縄の嘉手納空軍基地に一時配備(約3ヶ月間)されているという内容です。F22 の一時配備は 2007年2月以来 2度目です。戦闘機とパイロットだけでなく、整備員や戦闘支援要員など約250人も派遣されています。

1月12日には、『レコードチャイナ』が次のような記事を配信しています:
1月7日には、『ジェーン海軍年鑑』で有名な Jane's のサイトが次のような記事を掲載しています。日本が F22 を次期主力戦闘機の候補とすることを断念したとの一部報道を、防衛省がただちに否定したという内容です。F22 を評価するための基本的な技術情報すら米国から提供されていないという厳しい現状が背景にあります。記事では、F22 以外に候補となっているのは、ダッソー・ラファール、ユーロファイター・タイフーン、ボーイング F/A-18E/F、同 F15FX、ロッキード・マーチン F35 ジョイント・ストライク・ファイターであると伝えています:
自衛隊が F22 を次期主力戦闘機にしたい理由は明らかです。現時点で最も強力な戦闘機であり、現時点で実戦配備されている唯一の第5世代戦闘機だからです。F22 は、「先制発見・先制攻撃・先制撃破」(first-look, first-shot, first-kill)という戦術運用コンセプトをとっており、模擬空中戦で敵機 242機を撃墜、味方の損失はわずかに 2機という驚異的な撃墜率を記録しています。米軍では F22 を、制空戦闘機(Air Superiority Fighter)とは呼ばず、地上も含めた彼我の空間全体の絶対的支配を意図する航空支配戦闘機(Air Dominance Fighter)と位置づけています。さらに、F22 はメンテナンス性も良く、高い稼働率を誇っています。最大の難点は、値段が非常に高いこと(現在の円高でも 1機あたり 100億円超)で、米軍自身がこれに悩まされています。

日本の報道では、F22 のステルス性能ばかりが取り上げられるきらいがあります。しかし、私は F22 の持つ「スーパークルーズ」と呼ばれる超音速巡航能力に、もう少し注目しても良いのではないかと思っています。主要国の保有する主力戦闘機は、みな超音速飛行能力を持っていますが、超音速を出すためにはアフターバーナーと呼ばれる燃料噴射装置を使います。これは、エンジン後部に燃料を噴射してエンジンの出力を高めるものです。当然のことながら燃料の消費が大幅に増えますし、エンジンの温度も上昇するため、使用時間に制限があります。たとえば、米軍の FA18 ホーネットの場合、アフターバーナーの連続使用可能時間は 15分程度です。これに対して、F22 はアフターバーナーなしで、長時間超音速で飛行することができます。もともと大きな推力のエンジンを搭載していることに加えて、ステルス性を高めるためにミサイルなどの搭載兵器を機体内部に格納するので空気抵抗が減少していることから可能になったと言えます。この超音速巡航能力は、あらゆる局面で有利にはたらきます。

日本が F22 を次期主力戦闘機として調達できる可能性はあるのでしょうか。最大の障害は、なんと言っても米国議会が高度技術の流出を危惧して、F22 の輸出を禁止していることです。機密保持に関しては諸外国からまったく信用されていない自衛隊の現状も、足を引っ張ります。さらに、中国や韓国が反対し、米国議会に対して猛烈なロビー活動を展開することが予想されます。中国重視が本音といわれる民主党政権が、中国の反発を無視してまで禁輸解除を積極的に進めるとも思えません。

中国軍部は、台湾のみならず長期的には日本を海上封鎖する能力を保有することを目指しているふしがあり、その戦略の観点からも、日本が F22 を保有することは受け入れがたいことでしょう。ソ連によるベルリン封鎖や、キューバ危機に際してアメリカがおこなった島国キューバの海上封鎖を想起すれば、封鎖が島国日本にとって強力な圧力となることは明らかです。ベルリン封鎖の場合は、近隣諸国からの大規模な空輸作戦によって食料などの必要物資を運ぶことができました。しかし、中国が日本を海上封鎖できるような国際環境にあっては、かりに航空路が確保できたとしても、近隣アジア諸国で空輸に協力する国はほとんどないでしょう。あったとしても、ベルリンのときに比べれば距離も遠く、また、ベルリンという都市と日本の人口を比べれば、必要とする物資の量は桁違いで、とても空輸でまかなえるものではありません。結局、日本はエネルギー不足や飢餓に陥り、屈服せざるをえないでしょう。最終的には、中華人民共和国の倭族自治区か、東海省になってしまうのかもしれません。

日本が F22 を次期主力戦闘機として調達できる方向にプラスにはたらく要因としては、上に紹介した 「F-22戦闘機を対日輸出せよ!中国の軍事大国化に備え提言―米保守派」といった声や、F22 の生産継続を求める議員の動きがあります。経済危機で苦境に陥った軍需産業を救済する必要から、今後このような動きが強まる可能性があります。さらに、国防総省や米軍内部にも、F22 を海外輸出することによって F22 の生産台数を増やし、1機当たりのコストを低下させたいと考える人たちがいます。当初、アメリカ空軍は 750機の F22 を配備する計画でした。それが、国際情勢の変化や国防予算の削減などで年々減らされ、現在では 183機の配備が認められているにすぎません。これでは実戦的な運用が不可能であるとして、空軍は追加配備を求めている状況です。

可能性は低いですが、かりに米国議会が F22 の輸出を認めたとしても、日本に輸出されるのはフルスペックの F22 ではなく、レーダーなど電子装備の性能を落とした「機能限定版」になると思います。また、従来認められていた日本でのライセンス生産は、まず間違いなく認められないでしょう。

Image Credit: U.S. Air Force photo by TSgt Ben Bloker

2009年2月1日日曜日

太平洋プレートとダイヤモンド

アメリカ地質学会の論文誌『GEOLOGY』1月号に、オーストラリアを中心とした研究チームによる以下の論文が掲載されています。この論文によると、現在、南アフリカなどで産出されるダイヤモンドは、ゴンドワナ超大陸南部に沈み込んでいたプロト太平洋プレート(古太平洋プレート)の先端が、下部マントルまで到達した結果生成されたものであるとのことです:
論文の要旨をさらに簡略にまとめると次のようになります:
南オーストラリアの Eurelia で産出するジュラ紀のキンバーライトから得られるダイヤモンドは、ともに産出する鉱物によって 670km よりも深い下部マントルが起源であると証明される。Eurelia 産のダイヤモンドを構成する炭素にはいくつかの源があるが、その一つがプレートとともに沈み込んだ炭酸塩であることが、同位体の構成比率からわかる。沈み込み帯に面するゴンドワナ超大陸の縁にキンバーライトの産出地が並んでいることと、リソスフィアよりも深いところで形成されたダイヤモンドに含まれる地殻の痕跡の存在は、下部マントルまで沈み込んだプロト太平洋プレートの残滓がダイヤモンドの究極の起源であることを証明している。ゴンドワナ超大陸南部におけるキンバーライトにともなう火成活動と、ジュラ紀から白亜紀前期にかけての広範囲の火成岩分布は、ともにこの沈み込みプロセスに起因するものである。
当時のゴンドワナ超大陸南部とプロト太平洋プレートの沈み込み帯を描いた図が以下にあります。Eurelia の位置も印されています。南アメリカ、アフリカ、南極、オーストラリアの各大陸にあるダイヤモンド産出地が、当時のプロト太平洋プレートの沈み込み帯の陸側に位置していたことがわかります:
キンバーライトについては、『世界大百科事典』(平凡社)に次のように説明されています:
kimberlite 揮発成分とカリウムに富む不等粒組織の超塩基性火山岩であって、斑晶は主として地下深部で結晶したカンラン石、そのほか少量の金雲母,輝石,ザクロ石やチタン鉄鉱を含む。石基はカンラン石、輝石、金雲母、スピネル、方解石などから成る。一般に著しい蛇紋石化作用を受けている。ダイヤモンドの唯一の源岩(含有量は1000万分の1以下)であって、安定大陸地域にのみ、まれに小さな貫入岩体として産出する。マグマのうちでは最も深いところ(150~250km)で生成され、上部マントルと地殻を通過する時速は 30~60km と見積もられている。爆発的に上昇する時、地球深部を構成しているカンラン岩やエクロジャイトを取り込んでくることがある。ダイヤモンドを含む斑晶鉱物やこれらの捕獲岩類は、地球内部のことを直接知る手がかりとなっている。
上の説明では「爆発的に上昇する」と書かれていますが、キンバーライトのもととなるマグマが、マントルから地表までごく短時間のうちに上昇してきたことはたしかです。そうでないと、中に含まれるダイヤモンドが結晶状態を保てないからです。上昇速度や上昇の原動力については諸説あるようです。下記のサイトでは、上昇速度を時速 300km 以上としています。また、上昇の原動力については、マグマに含まれる大量の水分をあげています:
ゴンドワナ大陸について、同じく『世界大百科事典』(平凡社)から引用します:
Gondwanaland 約3億年前の古生代後期から約1億年前の中生代半ばころまで、南半球を中心に存在したと推定される超大陸をいう。この大陸はその後分離移動して現在のアフリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極大陸、マダガスカル、インドなどを形成したものとほぼ確定的に考えられている。ゴンドワナ大陸の北側には、テチス海(古地中海)をへだててローラシア大陸 Laurasia があった。古生代前半や先カンブリア時代にゴンドワナ大陸とローラシア大陸とは一連の陸地を形成していたと推定されており、この超大陸をパンゲアと呼んでいる。ゴンドワナ大陸の名前は、インドの中央部東寄りの地域に昔ゴンド族がつくっていた王国に由来する。(以下略)
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