2008年12月2日火曜日

夜空のスマイリー・フェイス

12月1日、金星・木星・月の3天体が空の一角に集まり、スマイリー・フェイス(笑顔)のように見える現象が世界各地で見られました。あたかも夜空が地上に向かってほほえみかけているような風情です。 世界各地の新聞がこの「笑顔」の写真を掲載しています。その中からいくつかを紹介します:


向かって左側の目が金星(宵の明星)、右側の目が木星、そして口が三日月です。金星はマイナス4.1等級で輝いており、今後さらに明るくなっていきます。木星はマイナス2.0等級、月はマイナス7等級(12月1日現在)です。

「笑顔」の傾き: 南半球のオーストラリアと北半球の日本では、「笑顔」の傾き方が異なっています。これは地球儀をイメージすると理解できます。地球儀の上で日本とオーストラリアの上に小さな人形を立てたところを想像してください。それぞれの人形にとっての地平線が大きく異なっていることが理解できると思います。このために、同じ星座や今回のような惑星と月の組み合わせを見ても、地平線との角度が違って観測されるわけです。

「笑顔」の長さ: オーストラリアで撮影された「顔」と日本で撮影された「顔」を比較すると、日本の方が面長になっています。これは撮影時刻が異なるためです。月は相対的に移動の速度が速いため、一晩のうちに恒星や惑星との位置関係が変化します。月は金星の方に向かって移動しているので、上記の写真が撮られた翌日の12月2日には、金星と月が 0°48′まで接近します。(もちろん、これは地球から見た場合の見かけ上の接近です。実際に金星と月の距離が大きく短縮するわけではありません。)

地球照: 上にあげた写真の中には、三日月の影の部分がうっすらと写っているものがあります(特にアデレードの写真に顕著です)。これは地球照と呼ばれる現象です。これについては「世界大百科事典」(平凡社)から引用します:
ちきゅうしょう  地球照 earthshine 新月前後の数日間、月の細く光った部分以外の暗い面が、淡いながらかなりはっきりと見える。これは地球に反射された太陽光が月面を照らしているもので、地球照という。新月のころは、地球の太陽に照らされた面が、ほぼ月のほうに向いている。地球のアルベドや大きさは月より大きいので、このとき地球は、満月の約90倍の明るさで月面を照らしている。半月に近くなると地球照は見えなくなる。
つまり、新月の前後は、月から見ると地球は満月ならぬ「満地球」になっており、月の夜の部分(地球から見れば暗い部分)は地球からの光でこうこうと照らされているわけです。

天王星・海王星: なお、肉眼では見えませんが、金星や木星が見えている宵の西ないし南西の空には、天王星と海王星も光っています。